就業規則の「ストレスチェック」条文の作成のポイントと規定例

2024年3月8日

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就業規則の「ストレスチェック」条文の作成のポイントと規定例

 

人間が生活していく上では、身体的な健康だけでなく、精神的な健康も重要です。

精神の健康が害される最大の要因は「ストレス」。

それもあり、現在では、このストレスの程度をチェックする「ストレスチェック」の実施が企業に義務づけられています。

この記事では、ストレスチェックについて、法律上のポイントや就業規則への規定例について解説していきます。

 

1. 法令から見た「ストレスチェック」のポイント

1.1. ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、労働者本人が、自分が今どの程度のストレスを感じているかをチェックするものです。

メンタルヘルスに関連する労災等が増加を背景に平成27年12月1日に実施が義務化されました。

 

1.2. ストレスチェックを行う目的

ストレスチェックを行う目的は、以下の通りとされています。

  • 一次予防を主な目的とする(労働者のメンタルヘルス不調の未然防止)
  • 労働者自身のストレスへの気付きを促す
  • ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる

要するにストレスチェックを通じて、労働者が本人が自分のストレス状況知るとともに、会社はそうしたストレスの原因となるものを取り除き職場環境をより良くしましょう、というのがその目的です。

 

1.3. ストレスチェックの対象事業者

ストレスチェックは、常時雇用する労働者50人以上の事業場に実施義務があります。50人未満の事業場は当面の間、努力義務とされています(※)。

ここでポイントとなるのが、法人単位ではなく事業場単位で50人以上、というところ。

事業場単位という場合、同じ法人であっても、場所が違う場合は別事業場扱いとなるからです。

法人全体で50人以上の労働者がいる場合でも、工場や支店等(このおのおのの場所を、一つ一つの事業場と考えます)に労働者が散らばっていて、各々の事業場で50人に満たない場合は努力義務となります。

なお、この50人以上の労働者については、継続して雇用しているのであれば、週1日出勤や1日2時間労働など、所定労働時間の所定労働日数等が少ないパートタイマーや有期雇用労働者であっても、この中に含める必要があります。

※ ストレスチェック実施義務の人数要件については、令和7年の法改正で、改正法公布日から3年以内に撤廃されることが決定しました。

 

1.4. ストレスチェックの実施頻度

ストレスチェックは1年以内に1回、定期に行う必要があります。

定期の健康診断と同じ実施頻度ですので、定期の健康診断と同時期に行うのが効率よいでしょう。

 

1.5. ストレスチェックの対象となる労働者

ストレスチェックの対象となるのは常時使用する労働者です。

この常時使用する労働者の中には、いわゆる正社員の他、正社員と比較して所定労働時間が4分の3以上の労働者や、1年以上使用される予定のある契約社員も含まれます。

こちらも、定期健康診断と対象者の範囲は同じとなります。

 

1.6. ストレスチェックの実施者

ストレスチェックを実施する義務があるのは会社ですが、その実施は専門家に任せる必要があります。

というのも、ストレスチェックを実施できるのは医師と保健師、それに厚労省の研修を受けた看護師および精神保健福祉士、公認心理師(以下、実施者)のみだからです。

ただし、「実施事務従事者」として、上記の地位にない会社内のものが実施者のサポートすることは可能です。

なので、実施者として医師等の名前は借りるものの、実際にストレスチェックの実務は社内の実施事務従事者が行う、ということはできるわけです。

ただし、労働者に対して解雇や昇進といった人事権を持つ管理監督者の地位にあるものは、ストレスチェックに関連する事務に従事することもできません。

 

1.7. ストレスチェックの結果

ストレスチェックの結果はストレスチェックの実施者によって労働者に対して速やかに通知されます。一方、実施者は労働者の同意がない限り、個々の労働者の結果を会社に通知してはならないとされています。また、この同意についても実施者は、口頭ではなく、書面か電子的に残るもので得る必要があります。

義務が課されて費用負担も会社なのに、会社はその結果がわからないとは何事だと思われるかもしれません。しかし、ストレスチェックの結果は非常にセンシティブな個人情報なのでこれはし仕方のないことだとご理解ください。

代わりといってはなんですが、ストレスチェック全体の結果を集団分析することについては会社の努力義務とされています。そして、この情報は会社が実施者から得ることが可能となっているので、業務の改善にはこちらを利用しましょう。

 

1.8. 面接指導

結果に不安を持った労働者は直接医師の診断を受けることもできますが、事業者に対して相談することができます。その際、事業者は相談に来た労働者に対して不利益な扱いをしてはならないとされています。

この相談があった際、事業者はその労働者に面接指導してもらうよう、医師に依頼しなければなりません。このあたりのことは現行法の長時間労働に対する医師の面接指導と基本的に同じです。

要するに会社はストレスチェック後に、労働者が相談に来た場合に適切なアフターケアができるようにしておかないといけないわけです。

 

1.9. 結果を所轄労働基準監督署長への報告

健康診断同様、ストレスチェックを行った場合は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長にその報告書を提出する必要があります。

なお、こちらの様式ついては、こちらのサイトで作成が可能です。また、e-govアカウントをお持ちの場合はそのまま電子申請もできます。

労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス

 

 

2. 「ストレスチェック」条文の必要性

ストレスチェックは、就業規則の相対的必要記載事項である「安全衛生」に関する条文です。

ただし、実施義務があるのは、労働者の数が50人以上の事業場です。そのため、実施義務のある事業場については記載は必須、そうではない事業場については任意で実施する場合のみ記載が必要となります。

 

 

3. 「ストレスチェック」条文作成のポイント

3.1. 基本は法律どおりに

ストレスチェックについては法律どおりにこれを行い、監督官庁に報告等を行うことが重要な項目です。

そのため、基本的には法律の条文どおりに、就業規則の規定を作成することになります。

また、50人未満の事業場については、ストレスチェックの実施は努力義務です。そのため、実施する余裕がない場合はそもそも条文自体が不要となります。

 

 

4. 就業規則「ストレスチェック」の規定例

第○条(ストレスチェック)

  1. 会社は、従業員に対し、毎年1回定期に、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行う。
  2. 前項の結果、心理的な負担が高いとし、面接指導が必要であると医師、保健師等が認めた従業員に対しては、その者の申出により医師による面接指導を行う。
  3. 前項の面接指導の結果、必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を講ずることがある。

 

 

5. 規定の変更例

5.1. 50人未満の事業場で、ストレスチェックを行わない場合

(条文自体が不要なので削除)

 

 

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7. その他の就業規則作成のポイントと規定例

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社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。 「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。 就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

2024年3月8日