労務管理

高校生向け労働法授業「『はたらく』へのトビラ~ワークルール20のモデル授業案~」が公開

2017年4月26日

厚生労働省から「『はたらく』へのトビラ ~ワークルール 20のモデル授業案~」という冊子が作成・公開されています。

『はたらく』へのトビラ~ワークルール20のモデル授業案~」の電子ファイル

こちらは、高校生向けの労働に関する授業を行う上で、先生たちが資料として使用することを想定したものとなっています。

ブラック企業やブラックバイトが話題になって以降、厚生労働省は若者向けに労働条件等に関する周知に力を入れていて、『知って役立つ労働法』や『まんが知って役立つ労働法Q&A』などの資料の作成・配布を行っていますが、これらは興味のある人が読むタイプのもの。

しかし、今回の資料は高校生の授業向けなのですから、そこからさらに一歩踏み込んだ印象を受けます。

 

必ずしも会社を悪者にしてない点に好印象

この資料、100ページ以上もあるのでさすがに全てに目を通すのは大変ですが、パッと見た印象だと割と悪くない。

というのも、こういう労働者向けに労働法や労働条件とかをわかりやすく教える資料みたいなものって、会社側が悪者扱いされてることって少なくないんですよ。

割と常識的なことが書いてあるのに、行間の端々に、あなたはブラック企業に搾取されてるんだから私たちと一緒に戦いましょう、みたいな感じで。

ただ、この資料はそういう部分がほとんどなく、例えば、資料の中にあるこちらの例題。

 

参照:「最低限!働くときの条件 労働条件を確認しないとソンをする(リンク先PDF、参考URL:「『はたらく』へのトビラ~ワークルール20のモデル授業案~」の電子ファイル)

こういう例題って正直、会社を悪者にしようと思えばいくらでもできるんですが(例えば「面接の時は通勤費は払うと言った」とか付け加えて)、実際はかなり微妙な味付けになっています。

解説してしまうと、通勤手当については法律上支払う義務はなく、会社の規定からも廃止されている以上、会社は支払う義務はないので「もらえない」のが正解でしょう。

だから、勝手に(通勤費は出て当たり前と)思い込んだりせず、労働条件をきちんと確認しましょう、というのがこの例題の意図する部分だとは思います。

その一方で、社労士の立場として労使間での無用な争いを避ける観点から言えば、面接官も「通勤費はでない」ときちんと誤解が起きない形で伝えておくべきだったと考えさせてくれる内容になっています。

 

高校生に考えさせることに重点を置いた作り

また、「おおっ」と思ったのは最低賃金制度の授業案。

最低賃金制度に関しては、最低賃金その者を廃止すべきと言う意見と、最低賃金額は高ければ高いほど良いという、相反する意見が存在しています。

で、実は、この資料ではどちらが良いかについては触れていません。

その代わり、両論をきちんと併記した上で高校生にどう思うか考えさせる構成になっています。

こんなことに、どうして「おおっ」と思ったのかというと、こういう資料を民間が作ると、その組織の「思想」みたいなものが必ず含まれるので、こうした両論併記にはなりにくいんですね。

なので、どちらか一方しか含まれないことって多々あるんですが、この資料ではそうはなっていません。

さすがは厚生労働省といったところ、なのか、あるいは作成に関与されている大学教授やコンサルタント、社会保険労務士の先生たちの力なのかはわかりませんが、高校生を変なイデオロギーに染めないよう細心の注意が垣間見られます

 

若い人の方が労働法に詳しい時代が来る?

こうした労働の授業が普及していくと、会社よりも若い人の方が労働法についてよく知っている、ということが起こりえます。

会社の人よりも高校生たちの方が労働法に詳しい、となると、会社からすると、ときに生意気に見えてしまうこともあるかもしれませんが、そうした知識を持っている若い人たちが、労働法を守っていない会社に長く勤めてくれるとは考えにくい上、若い人が取れない時代ですから、労働法のリテラシーが低いとさらに取れないサイクルに陥る可能性もあります。

もちろん、高校の授業のカリキュラムには「労働」はないので、「『はたらく』へのトビラ ~ワークルール 20のモデル授業案~」を使って授業を行うかどうかは、学校や先生の判断次第となります。

なので、こうした資料が作成されたことそのものよりも、こうした授業が今後どれだけ普及していくかについて注目すべきでしょう。

 

今日のあとがき

amazonのマーケットプレイスで一大中華詐欺が横行しているようで、最新のゲームソフトなんかがあり得ない値段で売ってたりするので、注意が必要です。

【緊急警報】Amazonで世界規模の大中華詐欺が勃発中!! 被害者にならないために

例えば、スイッチのゼルダは新品の最安値が600円になっていたりするが、買っても送られてくることはない上、個人情報を抜き取られる可能性もあるので、怪しそうなのは絶対に買わない方が良いです。

判断が付かない場合は「この商品は、Amazon.co.jp が販売、発送します。」とあるもの以外は買ってはダメ。

で、そんななか、わたくしごとですが、人生初のPC自作のためにamazonで大量&高額の買い物をしてしまいました。

買った直後くらいにこの件を知ったので、急いで買ったパーツを一つずつどこから買ったのか確認しましたが、さすがに怪しそうなのはなし。

というか、普段から基本マーケットプレイスを利用しない上、利用したとしても「プライム」の表示があるものを選ぶことを徹底しているため、どうあっても大丈夫なはず(これを書いてる時点ではまだ届いてないからほんの少しだけ不安だけど)。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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