雇用保険制度

テーマは再就職手当、「早く決める方が有利(働く人を守る労働保険第10回:中日新聞連載)」

2016年6月9日

 

基本手当(失業保険)をもらうなら、全額もらってから次の就職先を探そうという人もいるでしょう。でも、そんな人ばかりでは、給付額が膨れ上がって制度が破綻しかねません。そこで、これまで説明したように、自己都合による退職には、三カ月の給付制限を設けています。

一方、失業者に早期の就職を促す「再就職手当」があります。早く就職先を見つけた人や起業した人に対し、早期就職でもらいきれなかった基本手当の一部を支給する仕組みです。

再就職手当は、もらいきれなかった基本手当のうちの五割、もしくは六割が支給されます。どちらになるかは、基本手当をもらえる「最大日数」と「残りの日数」によって変わります。再就職を決めた時点で、基本手当の「残りの日数」が「最大日数」の三分の二以上なら六割、三分の二未満なら五割です。つまり、就職が早いほど額は多くなります「残りの日数」が三分の一に満たない場合はもらえません。

具体例でみると。基本手当の日額が「五千円」、最大日数が「九十日」の人が、「六十日」分を残して再就職先を決めたとします。この場合「六十日×五千円=三十万円」がもらい切れなかった分。この六割の「十八万円」が再就職手当として支給されます。再就職先からの給与と合わせれば、ほとんどの場合、働かずに基本手当をもらい切るよりも、よいのではないでしょうか

最後に大事なポイント。実は再就職手当、給付制限中に再就職を決めてももらえます。給付制限を受けた場合、三カ月の給付制限が解除されるのを待つよりも、早く就職した方が時間もお金も無駄にならずにすむはずです。

中日新聞H28.6.9付「働く人を守る労働保険」より転載

 

今回は再就職手当の話ですが、基本手当をもらうより、早く就職決めて再就職手当もらったほうがいい、ということに焦点を絞ってまとめたので、もらうための詳しい条件とかは結構意識的に省いています。

これは、再就職手当という制度を知らない人も多いだろう、ということを踏まえて、こんな良い制度があるんだよ、と紹介することに焦点を当てたため。

実際にもらうには、以下のように結構いろんな条件をクリアしないといけないので、自分はもらえるのかな、と思った人はまずハローワークに聞いてみるのが良いでしょう。

  1. 受給手続き後、7日間の待期期間満了後に就職、又は事業を開始したこと。
  2. 就職日の前日までの失業の認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。
  3. 離職した前の事業所に再び就職したものでないこと。また、離職した前の事業所と資本・資金・人事・取引面で密接な関わり合いがない事業所に就職したこと。
  4. 受給資格に係る離職理由により給付制限(基本手当が支給されない期間)がある方は、求職申込みをしてから、待期期間満了後1か月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したものであること。
  5. 1年を超えて勤務することが確実であること。(生命保険会社の外務員や損害保険会社の代理店研修生のように、1年以下の雇用期間を定め雇用契約の更新にあたって一定の目標達成が条件付けられている場合、又は派遣就業で雇用期間が定められ、雇用契約の更新が見込まれない場合にはこの要件に該当しません。)
  6. 原則として、雇用保険の被保険者になっていること。
  7. 過去3年以内の就職について、再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと。(事業開始に係る再就職手当も含みます。)
  8. 受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと。
  9. 再就職手当の支給決定の日までに離職していないこと。

再就職手当のご案内(リンク先PDF 参照:就職促進給付)

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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