雇用保険制度

雇用保険がいかにお得な制度か社労士が解説する記事

2016年2月24日

こういう仕事をしていると、たまに「雇用保険に入りたくない」という労働者の方がいらっしゃいます。まあ、雇用保険の方はたまにですが、社会保険の方は割と普通です(笑)。

もちろん、加入条件を満たしている限り、会社としては入れないわけにはいかないし、それでもどうしても、というのなら、加入しなくてもよくなるラインまで労働条件を下げるしかありません。それが、社会保険で言うところの通常労働者の労働時間4分の3未満であったり、雇用保険で言えば週の所定労働時間20時間未満な訳です。

ただ、社会保険は料率が高い上に、年金制度への不安もあるため、入りたくないという気持ちはわからないでもないですが(繰り返しになりますが、条件を満たす限り、それでも入らないとダメ)、労働者側から見て、雇用保険の方は基本的に入って損になることはないと思います。

 

今年の4月より雇用保険料は引き下げ予定

現在(平成28年2月)、雇用保険の保険料率は1%ですが、これが今年の4月より0.8%になる予定です。

この1%や0.8%という数字は、労働者と会社で折半するので、来年度以降で言うと、労働者の実質的な負担は0.4%ということになります。

ちなみに、会社の負担はこの0.4%にプラスして、二事業率というものがかかります。こちらの料率は現在は0.35%ですが、今年の4月より0.3%に下がる予定なので、今年の4月からの会社の負担は0.7%となる予定です。

 

雇用保険料は払いすぎる可能性ほぼなし

労働者の負担に話を戻しますが、上記の0.4%を賃金の総支給額にかけることで、雇用保険料率は求められます。

なので、例えば、毎月の賃金の総支給額が30万円の労働者がいた場合、30万円×0.4%で、月々の保険料は1200円年間の保険料は14400円となります。

一方、会社を辞めたりして失業した場合にもらえる基本手当、一般には失業保険と呼ばれるものですが、毎月の賃金の総支給額が30万円の労働者だと、1日約5700円ほどもらうことができます。

基本手当は通常90日分もらえるので、3日ももらえば、お釣りが来る計算です。

さらにさらに、この人が90日分丸々もらいきると、その額は約513000円。

これが、何ヶ月分の保険料に当たるかというと、513000÷1200円で、427ヶ月。

つまり、90日分の基本手当をもらいきると、35年分の保険料が返ってくる計算。

ちなみに、基本手当の日数は、雇用保険加入期間が10年以上20年未満になると120日分、20年以上になると150日分になるので、基本手当でもらえる額よりも、保険料を支払う額が上回ることはなかなか考えられないわけです。

 

基本手当の日額には上限(最大で7800円ほど)があるので、払い損になるとすれば、もらっていた給与が高額で、高い保険料を毎月納めている場合くらいです。

それだけの給与もらってるんなら、正直、雇用保険で保険料が払い損になるほどの給与もらっているなら、もう失業保険なんていいんじゃないの? と思わないでもないですが。

 

雇用保険には基本手当の他にも、育児や介護、高年齢者への給付金や、教育訓練のための給付金もありますが、当然、雇用保険に加入してないとこれらの給付は受けられないので、雇用保険に加入しないと保険料と給付の兼ね合い以上に損することになります。

労働者の中に雇用保険に入りたくないという方がいらしたら、企業の経営者や人事・労務担当者の方は、いかに雇用保険はお得な制度かご説明いただくと良いでしょう。そもそも、社会保険と勘違いしている可能性もありますし。

もちろん、雇用保険料惜しさに、会社の都合で雇用保険に入れないのは×、アウトですよ。

雇用保険のしおり

愛知労働局が毎年無料で発行している雇用保険のしおり。とてもわかりやすく、役立つ内容となっていて、うちの事務所でも1人1冊体制で愛用させていただいております

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雇用保険のしおり(平成27年10月)(リンク先PDF)

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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