ほぼすべての就業規則の最初の条文は、この就業規則は何のために作成されたのか、その目的を定めた「目的条文」となっています。
この目的条文については、その内容を深く考えたりせず、さらっと流してしまっている人も多いことでしょう。
実際、目的条文はその性質上、どこの会社の就業規則の目的条文も似たようなものになりがちですし、この条文の内容に不備があってトラブルとなる、といったこともまずありません。
とはいえ、重要な条文であることには変わりないのと、割と「余計なこと」を書いてしまっている目的条文も多いので、あまり脚光を浴びることのないこの目的条文について、この記事では少し深掘りしてみたいと思います。
- 就業規則における「目的」条文の役割と位置づけ
- 目的条文でアレンジしすぎない方がよい理由と注意点
- 目的条文の基本的な規定例と、理念・ビジョンを組み込む場合の考え方
就業規則の「目的」とは
何のために就業規則を定めるのか、その目的を明確にするための条文です。
絶対的・相対的必要記載事項ではないものの、就業規則の目的を明確にするためにも、条文の作成は必須といえます。
「目的」条文作成のポイント
アレンジの余地はあまりない
記事の最後で挙げている規定例の内容は、最低限のものとなります。
なので、規定例にさらにいろいろな文言を付け加えてアレンジする、ということも可能ですが、正直、そうした余地があまりない条文でもあります。
というのも、就業規則を作成する目的や役割というのは、会社ごとに大きく変わるわけではないからです。
就業規則の役割というのは、具体的にいうと、労働者の「服務規律」「労働条件」を定め、会社の「業務命令権」の確保することです。
これら3つのうち「服務規律」「労働条件」の2つについては、すでに規定例に含まれているので、アレンジのしようがあまりないわけです。
「労働基準法その他法令に定めるところによる」という定めは入れない方が吉
なお、厚生労働省のモデル就業規則を含む一部の規定例では、目的条文に「労働基準法その他法令に定めるところによる」といった法令の包括準用規定が定められているものがあります。
(目的)
第1条 この就業規則(以下「規則」という。)は、労働基準法(以下「労基法」という。)第89条に基づき、 ○○株式会社の労働者の就業に関する事項を定めるものである。
2 この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる。
しかし、基本的に、こうした内容はは定めない方が無難です。
なぜなら、法令には訓示的なものや努力義務のものなど、会社に余裕がない場合、無理に従ったり達成したりする必要のないものが多くあるからです。
にもかかわらず、こうした規定を定めてしまうと就業規則に規定のないものでも、法令に規定がある場合、それに従う必要が生まれ、会社の負担が増える可能性があります。
就業規則「目的」の規定例
第○条(目的)
この就業規則(以下「規則」という)は○○(以下「会社」という)に勤務する従業員の服務規律、労働条件その他の就業に関する事項を定めたものである。
規定の変更例
目的に会社の理念やビジョンを組み込む場合
第○条(目的)
この就業規則(以下「規則」という)は○○(以下「会社」という)の経営理念である「△△△△」を達成するため、○○に勤務する従業員の服務規律、労働条件その他の就業に関する事項を定めたものである。
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