年次有給休暇は、一定の勤続年数を満たせば当然に付与されるもの、と思われがちです。
しかし実際には、勤続年数に加えて「出勤率」という条件を満たしているかどうかも、年次有給休暇の付与において重要な判断要素となります。
本記事では、この年次有給休暇の出勤率について、制度の基本から算定方法、実務上注意すべきポイントまでを整理して解説します。
- 年次有給休暇における「出勤率」とは何か
- 出勤率8割要件の基本的な考え方
- 出勤率の具体的な算定方法
- 出勤したとみなす期間、所定労働日から除外する期間の整理
- 斉一的付与を行う場合の出勤率算定上の注意点
年次有給休暇の出勤率とは
会社は、一定の勤続年数を超えた労働者に対し、法律で定められた日数以上の年次有給休暇を付与する義務があります。
ただし、付与日の直前1年間(初回の付与については6か月間)の出勤率が8割未満の者には、年次有給休暇を付与する義務はありません。
つまり、年次有給休暇の出勤率とは、勤続年数と並ぶ、年次有給休暇の付与の条件なのです。
ただし、通常は出勤率が8割を切るようなことはほとんどなく、そこまで勤怠の成績が悪い人については、休職等の措置が取られることが多いため、実務上、出勤率が問題になることはあまりありません。
年次有給休暇の出勤率の法制度上のポイント
出勤率の算定方法
出勤率は、年次有給休暇の付与日の直前1年間(初回の付与については6か月間)の所定労働日の出勤率でみます。
なので、例えば、4月1日入社の場合、10月1日が初回の付与日となるので(斉一的付与等をしていない場合)、4月1日から9月30日までの6か月間で、出勤率を算定します。
所定労働日の出勤率なので、休日出勤により所定労働日以外の日に出勤したとしても、出勤率の計算には影響はありません。
年次有給休暇の出勤率の算定上、「出勤したとみなす」期間
法律上、以下の期間については、出勤率の算定の際に、出勤したとみなして計算する必要があります。
① 業務上の傷病による休業期間
② 産前産後休業の取得期間
③ 育児休業、介護休業の取得期間
④ 年次有給休暇の取得期間
なので、例えば、育児休業により1年間まったく出勤がなかったとしても、その期間は全て出勤したと考えて、年次有給休暇の出勤率を算定する必要があります。
年次有給休暇の出勤率の算定上、「所定労働日から除外する」期間
次の期間については、所定労働日から除外して出勤率を計算する必要があります。所定労働日から除外して計算する、というのは要するに、出勤率を計算する際の分母にも分子にも、以下の期間は含めないということです。
① 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
② 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務の提供がまったくなされなかった日
③ 休日労働させた日
④ 法定外の休日等で就業規則等で休日とされている日等であって労働させた日
出勤率に関する運用上の注意点
斉一的付与を行う場合
年次有給休暇の付与に関する運用を簡便化するため、斉一的付与(会社全体で年次有給休暇の付与日を統一)を行っている会社もあると思います。
この斉一的付与を行う場合、初回の付与日は原則の付与日よりも早くなります。
このように、付与の間隔が短縮された場合の出勤率の計算に関しては、必ず短縮された期間はすべて出勤したものとみなす必要があります。
例えば、10月1日が全体の付与日、という会社に、6月1日付けで入社した社員がいた場合、入社前の4月と5月の期間は出勤率の算定ですべて出勤したものとみなします。
就業規則への記載方法
年次有給休暇の出勤率の規定例については、以下の記事を参考にしていたければと思います。

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