就業規則にはほとんどの場合、「労働者は就業規則を守らなければならない」という趣旨の条文が定められています。
当たり前といえば当たり前のことなので、こうした条文を就業規則に設ける意味や、それが本当に必要なのかまで考えたことがある人は少ないかもしれませんね。
この記事では、この「規則の遵守義務」に関する規定について、少し深掘りし、規定作成時のポイントや規定例をみてみたいと思います。
就業規則の「規則の遵守義務」条文とは
労働基準法では、就業規則の遵守義務が定められている
労働基準法第2条2項には会社および労働者に対する就業規則の遵守義務が定められています。
(労働条件の決定)
第二条 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
② 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。
一方で、この「遵守義務」を就業規則に定めること自体は、法律上、就業規則の絶対的・相対的必要記載事項とはされていません。
よって、「法律上、会社にも労働者にも就業規則を順守する義務が定められているのだから、就業規則にわざわざ書かなくてもいい」と考えることもできなくはありません。
ただ、法律に書かれているからといって、無条件で労働者がそれを守ってくれるわけではないと考えると、労働者がいつでも見られる就業規則に定めておく意義は大きいといえます。
就業規則の周知の際に役に立つ
はっきり言ってしまうと、法律に書かれていることをそのまま書くだけになるので、あってもなくてもいい条文ではあります。
よって、あまり条文数を増やしたくない、できるだけシンプルな就業規則にしたいという場合は記載しないことも選択肢となります。
一方、就業規則の遵守義務に関する規定は、あって邪魔になるような(会社の負担が増えるような)ものではありません。
加えて、就業規則を「会社の労務マニュアル」のように活用している会社の場合、就業規則の周知の際にこうした規定があると、労働者に対し遵守遵守の念押しに使うこともできます。
「規則の遵守義務」条文作成のポイント
「規則を守る」の主語に「会社」は入れない方がいい
以下は、厚生労働省が公表しているモデル就業規則の「規則の遵守義務」の規定例です。
会社は、この規則に定める労働条件により、労働者に就業させる義務を負う。また、労働者は、この規則を遵守しなければならない。
出典:厚生労働省モデル就業規則
見てわかるとおり、労働者が就業規則を守ることだけでなく、会社側の義務についてもその記載があります。
ただ、就業規則はそもそも会社が作成し労働者が守るもの、という前提を踏まえれば、就業規則に会社の義務を記載するのはその趣旨がブレるので必要ない、という考え方が、専門家のあいだでは一般的です。
とはいえ、条文の必要性で見たように、法律上は労働者だけでなく会社にも就業規則を守る義務があるの明らかなので、それがあって何かマイナスがあるかというと別にない、というのが実際のところです。
就業規則「規則の遵守義務」の規定例
第○条(規則の遵守義務)
従業員は、この規則を遵守する義務を負い、その職務を誠実に遂行し、社業の発展に努めなければならない。
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