妊娠中や出産後の女性労働者に対して、会社が配慮しなければならない制度の一つに「母性健康管理の措置」があります。
健康診査のための時間確保や、医師の指導に基づく勤務上の配慮などが内容ですが、労働基準法ではなく男女雇用機会均等法を根拠とする点もあり、制度の位置づけが分かりにくいと感じている方も多いかもしれません。
また、母性健康管理の措置を理由とした不利益取扱いは禁止されており、対応を誤ると法令違反となるリスクもあります。
本記事では、母性健康管理の措置の概要から、会社に求められる具体的な対応等について解説します。
- 母性健康管理の措置とはどのような制度か
- 制度の対象となる妊産婦とは
- 会社に義務づけられている具体的な措置内容
- 妊娠・出産を理由とする不利益取扱いが禁止されている範囲
「母性健康管理の措置」とは
制度の根拠は労働基準法ではなく男女雇用機会均等法
母性健康管理の措置とは、母子保健法に定められている、妊産婦の保健指導および健康診査を受けるのに必要な時間を確保するため、会社に実施することが義務づけられている措置です。
妊産婦の保健指導および健康診査自体は母子保健法にその定めがされていますが、事業主のその時間の確保を義務づけているのは男女雇用機会均等法です。
つまり、母性健康管理の措置は、就業規則に定める規程の中では珍しく、労働基準法を根拠としない規定なわけです。
妊産婦とは
母性健康管理の措置と対象となるのは妊産婦である女性労働者です。
妊産婦とは「妊娠中」および「出産後1年以内」の女性を指します。
法令から見た「母性健康管理の措置」のポイント
男女雇用機会均等法にて、会社に義務づけられている母性健康管理の措置は以下の通りです。
保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保
会社は、妊産婦である女性労働者の状況に応じて以下の回数、保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保できるようにしておく必要があります。
| 妊娠中 | 妊娠23週まで:4週間に1回 妊娠24週から35週まで:2週間に1回 妊娠36週以後出産まで:1週間に1回 |
| 産後(出産後1年以内) | 医師等の指示に従って必要な時間を確保する必要あり |
なお、妊娠中の健康診査等の回数について、医師又は助産師(以下「医師等」)が上記と異なる指示をしたときは、その指示により、必要な時間を確保することができるようにする必要があります。
また、産後1年間については育児休業をしていることが多いので、あまり気にする必要はありませんが、もし産後1年以内に業務を行う女性労働者がいる場合は注意が必要です。
指導事項を守ることができるようにするための措置
妊産婦の女性労働者が健康診査等を受けた際、場合によっては医師等から何らかの指導を受けることがあります。
こうした場合、会社はその女性労働者が受けた指導を守ることができるようにするため、以下のような措置を講じる必要があります。
| ⑴ 妊娠中の通勤緩和 | 医師等から通勤緩和の指導を受けた旨の女性労働者の申出があった場合 →指導に従い、時差通勤、勤務時間の短縮等の措置を講ずるものとする医師等から指導がない場合においても、申出があった場合 →担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等適切な対応を図る必要がある |
| ⑵ 妊娠中の休憩に関する措置 | 医師等から休憩に関する措置について指導を受けた旨の女性労働者の申出があった場合 →指導に従い、休憩時間の延長、休憩の回数の増加等の必要な措置を講ずるものとする医師等から指導がない場合においても、申出があった場合 →担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等適切な対応を図る必要がある |
| ⑶ 妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置 | 医師等により症状等に関する指導を受けた旨の女性労働者の申出があった場合 →指導に基づき、作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の必要な措置を講ずるものとする医師等による指導に基づく必要な措置が不明確である場合 →担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等により必要な措置を講ずるものとする |
出典:妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置Q&A(厚生労働省 リンク先PDF)
よって、例えば、医者等から「女性労働者の体調が思わしくないので2週間の休業が必要」と指導があった場合、会社はこれに従い、女性労働者を2週間休業せる必要があります。
妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
母性健康管理の措置を受けたことを理由とする不利益取扱いは禁止されています。
例えば、上で挙げた健康診査等のために会社を休んだり、医師等の指導を守るための措置を受けたことを理由に解雇や降格を命じたり、人事考課を低く取り扱うなどがこれに当たります。
※ 不利益な取り扱いと考えられる例
- 解雇すること
- 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
- あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
- 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
- 降格させること
- 就業環境を害すること
- 不利益な自宅待機を命ずること
- 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
- 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
- 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと
就業規則への記載方法
母性健康管理の措置については、就業規則への記載がほぼ必須となっています。
母性健康管理の措置の規定例については、以下の記事を参考にしていたければと思います。

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