「社労士事務所の繁忙期」(社労士のすべてがわかる?四コマ 第七話)

「社労士事務所の繁忙期」(社労士のすべてがわかる?四コマ 第七話) 労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届の提出の締切がなぜか同じ日なので社労士事務所はその時期忙しい

厚生労働省からの嫌がらせ?

というわけで第7話。

何の嫌がらせから知りませんが、労働保険で一番面倒な手続きと、社会保険で一番面倒な手続きの締切が同じ日です。

ここでは社労士業務の繁忙期と閑散期について解説していきたいと思います

 

社労士業務の繁忙期と閑散期

社労士業界は基本的に4月から7月と年末が繁忙期となります。

上記以外だと、年度更新の後片付け的作業のある1月や年度末である3月も比較的忙しいですかね。

逆に、比較的時間が空くのは2月と8月です。

もちろん、その社労士事務所がどのような業務をメインに行っているかとか、お客さんの業種なんかによっても違います。

 

繁忙期が繁忙期たる理由

4月から7月が忙しい理由は、まず、4月は新社会人が多く生まれる季節ということで、入社手続きが多いこと。これに加えて、3月は退社する人も多いので、退職手続きも同時に行わなければなりません。

そうした忙しさはGW前くらいまで続き、それが終わった後に、四コマでも出てきた労働保険の年度更新が始まり、社会保険の算定基礎届と合わせて忙しさが7月上旬まで続きます。

ご存じない方に、労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届についてちょっと説明しておきましょう。

 

労働保険の年度更新

労働保険の年度更新とは、労働保険版の確定申告みたいなものです。

過去1年に会社が労働者に対して支払った給料の総額に、保険料率をかけて、労働保険料を計算します。

「会社が労働者に対して支払った給料の総額」がわからないと保険料率の計算ができないのと、保険料に含める給与・含めない給与があったりするので、その当たりのチェックに時間がかかります。

また、労働保険の年度更新は通常、6月から始まるのですが、うちの事務所の場合、愛知中央SRという労働保険事務組合に加入している関係で、事務組合に特別加入している事業所は他よりも早く5月から労働保険の年度更新を行います。

 

社会保険の算定基礎届の提出

社会保険の保険料は標準報酬月額を基に計算されます。

そして、この標準報酬月額は4月、5月、6月の給与が基になるのですが、この3ヵ月の賃金から次の年度の標準報酬月額を算出し、年金事務所に報告するための書類が「算定基礎届」となります。

こちらは労働者1人1人の4月、5月、6月の給与を確認する必要があり、この点がとても時間のかかる要因となっています。

 

一応、給与という共通項はあるが・・・

このように、労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届の提出の締切が同日となった経緯としては、平成13年の中央省庁再編の際、それまで厚生省が担当してた社会保険と、労働省が担当していた労働保険を同じ厚生労働省が行うことになったのがきっかけらしいですんが、んー、ただの迷惑。

一応、どちらも給与に関わることではあるんですが、給与を使って全然違う計算をするので正直、シナジーはないです。

とはいえ、電子申請導入以降はかなり負担は減っているので、昔ほど大変ということはないですかね。

 

ちなみに、労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届の提出が終わったとしても、7月は夏季賞与を払う会社が多いこともあり、賞与届の手続きが待っていたりします。

 

閑散期について

一方、2月と8月が空く理由というのは、まずは年度更新や算定といった社労士特有の仕事がないこと。

入退社もそれほど活発ではありません。

また、世間的に見ても、2月と8月って比較的閑散期だからというのもあるでしょう。

ただ、2月は業務的には少し余裕があっても(同業者も同様だからか)研修が多かったり、8月はお盆休みがある関係で日程がタイトだったりはします。

 

 

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

2019年7月8日