法律上の義務だから、会社のルールを明文化したいから、助成金申請で必要だからなど、就業規則を作成する目的は会社によって様々です。
そうした会社が求める役割や目的とは別に、就業規則自体が持つ目的や役割というものがあります。
こちらについては、知らなくても就業規則の作成に大きな支障があるわけではないのですが、よりレベルの高い就業規則作成を目指す際に知っておくと役に立つ考え方となるので、興味のある方は、是非お読みいただければと思います。
- 就業規則を作成する本来の目的が「法令遵守」と「リスク回避」にある理由
- 就業規則が果たす3つの役割(労働条件の決定・服務規律・業務命令権)
- レベルの高い就業規則を作成するために押さえておきたい基本的視点
就業規則を作成する目的
就業規則を作成する目的は大きく2つ、それは「法令遵守」と「リスク回避」です。それぞれ見ていきましょう。
法令遵守
会社には法令によって様々な義務が課せられています。労働時間や休日、年次有給休暇などがそれです。
就業規則を作成する理由の1つは、こうした法令を遵守するためです。
一方、就業規則がなくても守れているのであれば就業規則はいらないと思う人もいるかもしれません。しかし、就業規則は法律上、一定の規模以上の会社の会社に作成・提出義務があります。また、単に作成・提出するだけでは足りず、法律上、必ず記載しなければならない事項というものも決まっています。
そのため、就業規則と法令遵守は切っても切り離せないといえるでしょう。
リスク回避
労務管理には様々なリスクがあります。
例えば、法令に違反していると監督署の指導対象になったり、司法上の罰則を受けるリスクが出てきたりします。
また、労働者同士でもめ事になることもあれば、労使間でもめ事になることもあります。
私傷病などで労働者が長期間働けなくなったり、労働者が会社のお金を横領してしまったり、ということもあり得ます。
こうした、リスクを回避したり、発生してしまった事由に対してできる限りリスクなく対応したりすることもまた、就業規則を作成する大きな目的となります。
労務管理とリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。

就業規則が持つ3つの役割
就業規則は、「法令遵守」と「リスク回避」という2つの目的を果たすために作成されます。
そして、この2つ目的は就業規則が持つ役割によって達成されるわけですが、この就業規則が持つ役割は、大きく分けて、以下の3つとなります。
労働条件の決定
始業・終業時刻や休憩時間、休日、賃金など、就業規則には労働者の労働条件を定める規定が数多くあります。
そして、これらのいずれもが、法律上、何らかの定めや制限のあるものばかりです。始業・終業時刻については、法定労働時間の範囲内で決める必要がありますし、賃金についても最低賃金や時間外手当の割増率などの決まり事があります。
就業規則の絶対的必要記載事項及び相対的必要記載事項のほとんどが、この労働条件に関するものであることから、法的に見た就業規則というのは、労働者の労働条件を定めることを第一としていると考えることができるでしょう。
服務規律の規定
服務規律とは、会社で働く上でのルールやマナーであり、会社の秩序維持や労働者のコンプライアンスを促すことを目的に、各条文を定めることになります。
一方で、会社の秩序維持や労働者のコンプライアンスに必要となる規定は会社によって異なることが多く、労働条件を定めた条文に比べると、会社の裁量が大きいのが特徴です。
ただし、近年ではセクハラなどのハラスメント対策が会社に義務づけられるなど、服務に関することであっても、法律上、定めることが義務づけられている規定が増えています。
業務命令権の確保
会社は労働者に対して業務命令権を持っています。
この業務命令権は労働契約に基づき当然に発生するものもあれば、就業規則や個々の労働契約にその根拠がないとその効力を持たないものもあります。
例えば、日々の業務に関する指揮命令に関する権限は、労働契約があれば当然に発生する業務命令権の範囲で行えます。異動や昇進人事なども同様です。
一方で、残業命令や出向命令などは、労働契約または就業規則にその根拠がない限り、当該労働者の同意がないと、会社はそれを行わせることができません。また、いくら労働契約や就業規則に定めたとしても、業務命令の範囲を超えるような行き過ぎた命令については、効力はありません。
固有の目的と役割を意識して就業規則を作成する
就業規則が持つ固有の目的は「法令遵守」と「リスク回避」なわけですが、言い換えると、これらの目的をきちんと達成できていない就業規則には問題があるといえます。
特に、労働者数が10人以上になく仕方なく作った、助成金目的など、とにかく就業規則があればいいという気持ちで作られた就業規則は、リスクを回避するどころか就業規則が新たなリスク要因となっていることが少なくありません。
例えば、休職規定の休職期間が長すぎる、退職金規程が実態に合ってない、といった具合です。
そのため、就業規則の作成に迷ったら、ここでみた目的や、目的を達成するための役割のことを意識すると良いでしょう。
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