Q7 賃金が固定の場合や裁量労働制の場合、会社は労働者の労働時間を把握する必要はありませんよね?

2016年7月14日

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Q7 賃金が固定の場合や裁量労働制の場合、会社は労働者の労働時間を把握する必要はありませんよね?

2016年7月14日

A7 いいえ、会社には、原則全ての労働者の労働時間を把握する義務があります

安全衛生法では特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の対象労働者以外の、すべての労働者の労働時間を把握することを義務として定めています。

 

管理監督者等、労働時間等に関する規定の適用除外者の労働時間

管理監督者に関しては労働時間、休憩、休日に関する労働基準法の条文の適用が除外されています。

管理監督者に時間外労働をさせたとしても時間外手当が不要なのはこのためです。

労働基準法では、管理監督者の他、農水産業従事者、監視・断続的労働従事者、宿日直勤務者に関しても、労働時間、休憩、休日に関する規定の適用除外としています(ただし、監視・断続的労働従事者及び宿日直勤務者については、管轄監督署長の許可が必要)。ちなみに、監視・断続的労働従事者とは、具体的には学校の用務員や役員付の運転手等がこれにあたります。

ただ、こうした適用除外者であっても、労働時間把握義務の対象外ではありません。

そのため、会社としてはその労働者の労働時間を把握する必要があります。

加えて、適用除外者であっても年次有給休暇の付与、深夜業の割増賃金に関する規定の適用は除外されません。

 

裁量労働制の場合

みなし労働制・裁量労働制の場合であっても労働時間の把握は必要であることはすでに述べたとおりです。

加えて、これに加えてみなし労働制・裁量労働制では、業務の遂行や時間配分の決定を労働者に委ねるだけであり、休憩、休日、深夜業などの規定の適用まで免除されるわけではありません。

よって、休日出勤していたり、深夜業を行っている場合、裁量労働制であっても、会社は休日手当や深夜手当を支払う必要があります。

 

完全月給制や年俸制、裁量労働制であっても労働時間の把握は必要

完全月給制や年棒制の労働者であっても、会社は労働時間を把握する義務があります。

そもそも、完全月給制や年俸制であっても、時間外手当や休日手当を支払う義務があるため、労働時間を把握していないと、法律に違反する可能性があります。

ちなみに完全月給制や年俸制の場合、時間外に関しては固定残業で対応されていることが多いと思いますが、仮に固定残業分以上の残業を行っている場合、完全月給制や年棒制の場合でも会社にはその分の残業代を支払う義務が生じます。

この固定残業以上の残業代の計算をする上で、労働時間を管理することは必須となるわけです。

このように、完全月給制や年俸制、裁量労働制であっても、日本の労働時間規制から完全に逃れられるわけではありません(それが可能なのは特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者のみ)。

 

法改正前の情報に注意

実は、働き方改革に関連する2018年の安全衛生法の改正前の、日本の労働時間把握の大きな目安となっていた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間の適用除外者やみなし労働・裁量労働制の労働者については、労働時間の把握は不要とされていました。

しかし、労働時間の適用除外者やみなし労働・裁量労働制の労働者については確かに給与の面では労働時間の把握は不要かもしれませんが、一方で「健康」の面からいえば労働時間の把握は必須です。

こうしたことから、2018年の安全衛生法の改正では特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の対象労働者以外の、すべての労働者の労働時間把握を全ての会社に義務づけました。

この「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、かなりの長い期間、日本の労働時間把握の基準となっていたこともあり、ネット上ではこちら元にした情報もまだまだ散見されるためちゅういがひつ

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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