就業規則の「休日」条文の作成のポイントと規定例

2023年11月1日

 

労働者からすると、賃金や労働時間と並んで重要な労働条件といえるのが休日です。

休日は法律上守らないと行けないことがいくつかありますが、会社の裁量で決められる部分も非常に多くなっています。

そのため、法律を守りつつ、会社の実態に合った規定作成を行うためにも、この記事と併せて会社の休日規定を確認いただければと思います

 

「休日」条文の必要性

休日は就業規則の絶対的必要記載事項となります。

そのため、就業規則作成の際は必ず規定を作成する必要があります。

また、労働者にとっても非常に重要な労働条件であるため、実態とかけ離れたような規定作成は避けなければなりません。

 

法令から見た「休日」のポイント

休日と労働基準法

法定休日

労働基準法ににおいては、「1週1日もしくは4週4日」の休日を取得させることが会社に義務づけられています。

この「1週1日もしくは4週4日」の休日のことを法定休日といいます。

なお、法律上の「1日」とは暦日、つまり、午前0時から午後12時までのものをいいます。そのため、深夜0時をまたいで働く場合、次の日に勤務がなかったとしても、法定休日としては数えられない点に注意が必要です(ただし、8時間の交代制で勤務する三交代勤務制の場合、暦日ではなく継続24時間を休日1日とすることが可能です)。

 

法定休日と所定休日

所定休日とは

現在の雇用慣行では、法律で定められた「1週1日もしくは4週4日」以外にも休日があるのが普通です。

こうした法定休日とは別に設けられた休日のことを所定休日といいます。

法定休日と所定休日では、労働基準法上扱いが異なる部分がいくつかあります。

 

休日出勤と割増賃金

一つは休日労働させた場合の割増賃金の割増率です。

法定休日に労働させた場合の割増率は3割5分ですが、一方の所定休日に休日労働させた場合は、あくまで法定時間外労働という扱いとなるので、割増率は2割5分となります(なお、所定休日に労働させたものの、週の労働時間が40時間を超えない場合や、1日の労働時間が8時間を超えない場合、割増率2割5分の部分の支給義務は発生しません)。

 

休日出勤と時間外労働の上限規制

また、働き方改革によって導入された時間外労働の上限規制においても、以下のように、法定休日労働時間を含める上限と含めない上限があります。

法定休日の労働時間を含まない

法定休日の労働時間を含む

限度時間(1か月45時間、1年360時間) 2か月~6か月の平均で各80時間以内
年間上限720時間 単月で100時間未満

(所定休日労働時の労働時間については、通常の労働時間と扱いが同じになるので、基本的にはどちらにも含めることになります。)

 

振替休日と代休

休日規定については振替休日と代休の区別も重要です。

この2つについてはなかなか区別が付かない人も多いと思うので説明しておくと、振替休日とは事前に労働日と休日を入れ替えるもので、代休とは事後、つまり、休日労働をした後に休日労働をした日と他の労働日を入れ替えることをいいます。

振替休日は事前に労働日と休日を入れ替えるため、入れ替え後の労働時間が週40時間の法定労働時間の枠内に収まっていれば、時間外手当は発生しません。

一方、代休は時間外労働や休日労働をすでに行った後に、休日を新たに設けることとなるため、仮に代休を取らせたとしても、割増賃金は発生します。

このように、制度の内容も、運用上注意しないといけないことも異なる振替休日と代休ですが、いずれも就業規則に定めがない場合、利用することはできません。

上記の規定例で、振替休日のみを記載しているのは、代休を法的に問題ない形で運用できている会社が少ないためです。

 

「休日」条文作成のポイント

法定休日の特定

法令には定めなし

労働基準法では、就業規則において、どの日を法定休日と特定するかまでは定められていません。

一方で、過去の通達(【昭23.5.5 基発682 号、昭63.3.14 基発150 号】)では、休日を特定することが法の趣旨に沿うとし、就業規則においては、単に1 週間に1 日というような形ではなく、具体的に一定の日を休日と定めることが望ましいとされています。

 

法定休日を特定するメリット

法定休日を特定すること、しないことについてはメリット・デメリットあり、メリットとしては法定休日がどの日か、後から変わることがないので労務管理上の手間が少なくなります。

要するに、毎週日曜日を法定休日と定めておけば、日曜日に休日出勤したときのみ、法定休日労働扱いすればいいわけなので、給与計算や労働時間管理が簡素化されます。

 

法定休日を特定しないメリット

一方、法定休日を特定しないことのメリットとしては、人件費を下げられる可能性があることです。

というのも、法定休日を特定しない場合、4週4日の休日が確保できない場合のみ法定休日労働扱いとなります。

つまり、休日労働の日数がいくら多くても、4週4日にかかってこない限り(4週3日や2日にならない限り)、割増率が3割5分になることがないわけです。

とはいえ、これは法定休日以外の所定休日全てで休日労働をしていることと同義で有り、ここまでくると時間外労働の上限規制や長時間労働等の他の問題が発生している可能性が高いでしょう。

 

所定休日の特定

一方、所定休日の特定についてはどうでしょうか。

こちらについては、そもそも法律の定めのない部分なので、特定すべきかどうかについて法令や通達に定めはありません。

ただし、例えば、就業規則に「祝日を休みとする」とした場合で、ある祝日に出勤させようと思うと、それは休日出勤扱いとなってしまいます(割増賃金が発生するかは、その週の労働時間によります)。また、後からそうした実態に合わない休日をなくそうとすると労働条件の不利益変更となる可能性が出てきます。

そのため、会社の目線で言えば、あまり特定しない方が会社としては都合の良い部分はありますが、労働者からするといつが休日かわかっていた方が働きやすいのは確かです。

以上を踏まえると、就業規則の休日規定については、無理のない範囲内で特定する、というのが現実的な落とし所となるでしょう。

 

法定休日、所定休日の規定上の区別

法定休日か所定休日かについては、割増賃金や時間外労働の上限規制については法律上の扱いが異なるため、きちんと区別する必要があります。

逆にいうと、それ以外の場合については法定休日と所定休日を区別する必要性はほぼありません。

そのため、就業規則上で休日を区別する必要のない箇所では単に「休日」と記載するのが普通です。

 

就業規則「休日」の規定例

第○条(休日)

  1. 休日は次の通りとする。
    ①日曜日
    ②夏季休暇(   月  日 ~  月  日)
    ③年末年始休暇( 12月  日 ~ 1月  日)
    ④その他会社の年間カレンダーで定める日
  2. 法定休日は日曜日とする。
  3. 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ1項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

規定の変更例

法定休日を特定しない場合

第○条(休日)

  1. 休日は次の通りとする。
    ①日曜日
    ②夏季休暇(   月  日 ~  月  日)
    ③年末年始休暇( 12月  日 ~ 1月  日)
    ④その他会社の年間カレンダーで定める日
  2. 前項の休日のうち、法定休日を上回る休日は所定休日とする。
  3. 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ1項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

土曜日や祝日も休日である場合

第○条(休日)

  1. 休日は次の通りとする。
    ①日曜日
    ②土曜日
    ③国民の祝日・休日
    ④夏季休暇(   月  日 ~  月  日)
    ⑤年末年始休暇( 12月  日 ~ 1月  日)
    ⑥その他会社の年間カレンダーで定める日
  2. 前項の休日のうち、日曜日を法定休日とする。
  3. 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ1項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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