副業・兼業

自社の社員がUberEATS配達員をやりたいと言ってきたら? 就業規則の副業・兼業規定との関係は?

2019年7月3日

UberEATSって?

今、話題になっているUberEATS

「出前」と似ていますが、出前として料理を運ぶのが各飲食店の店舗の人ではなく「店舗とその店舗に注文した人のいる近隣のエリアで、今時間が空いている人」というのが最大の特徴。

注文する側からすると、ちょっと値段は張るものの、出前サービスをしてない店舗の料理でも家に運んできてもらえるという利点があります。

また、運ぶ側からすると時間が空いてるときに手軽にお小遣い稼ぎ(働き方によってはその域を大分超える人もいるようですが)ができるということで、かなり流行っているようです。

 

UberEATSの配達員は副業・兼業に最適!?

さて、このUberEATSなんですが、実は副業・兼業ととても相性がいい。

なにせ、自分の都合に合わせて、1日1時間だけ、あるいは週末だけUberEATSの配達員をやる、ということができるからです。

なので、平日は本業でどこか会社の社員をしつつ、休みの日にUberEATSの配達員をやる、という人は今後、いくらでも出てくるでしょう。

そうしたなかで、会社として何か対応は必要なのか? というのが今回の記事。

 

UberEATSの配達員は個人事業主(フリーランス)

ずいぶん前置きが長くなったわりには、結論をさっさと言ってしまうと、会社としてはあまり気にする必要はないのかなあ、というのが筆者の考えです。

副業・兼業で問題となりやすいのは複数の会社で雇用されて働く場合です。

複数の会社で雇用されて働くとなると、以下のように労働時間の通算をはじめ、労働保険や社会保険に関しても問題が出てくるため、会社としても対応が必要となります。

労働時間の通算 する
労災保険 労災が起こった先の会社で適用(給付額は、労災が起こった先の賃金を参照)
雇用保険 主たる雇用先(本業先)で加入(給付も本業先での給与が基準。副業先のものは考慮されない)
社会保険 条件を満たす限り複数の事業所で加入可(ただし、労働時間の条件の関係で、通常の労働者が複数の会社で社会保険に加入することは現実的ではない)

一方、UberEATSの配達員は個人事業主という扱いなので、上記のような労働保険や社会保険、労働時間の通算といった問題は発生しません。

 

対応はモデル就業規則の副業・兼業規定で十分だが・・・

なので、基本的には厚生労働省が公表しているモデル就業規則のような副業・兼業規定を定めておけば、大きな問題はないと考えられます。

モデル就業規則での副業・兼業規定

第  条(副業・兼業)

1 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務が次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止 又は制限することができる。
①   労務提供上の支障がある場合
②   企業秘密が漏洩する場合
③   会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④   競業に当たる場合

ただ、自転車や原付を使う関係上、どうしても交通事故のリスクがあるので、念のため「副業・兼業中に起きた事故に関しては会社は責任を負わない」という一文を加えてもいいかもしれません(入れなくても、会社の責任となることはまずないと思いますが)。UberEATSの配達員のやり過ぎ本業に支障が出る場合も、上記の「労務提供上の支障がある場合」という一文で十分対応可能でしょう。

また、UberEATSの配達員をしたいとの届出があったときは、UberEATSの配達員をしているときに事故に遭っても労災は使えない、どうしても使いたい場合は労災保険の特別加入(自転車での配達の場合はそれも負荷)などの注意喚起はしておいたほうがよいでしょう

 

以上です。

UberEATSは、最近では東京・大阪だけでなく名古屋や福岡、東京以外の関東近隣のエリアや京都・神戸でも利用できるようになっていますので、利用可能エリアで事業を行っている会社は対応を進めておく必要があるでしょう。

今日のあとがき

UberEATS、まだ使ったことないんですよね・・・。

一応名古屋でも使えるんですが、利用エリアが事務所なら大丈夫だけど、自宅だと範囲外なんで・・・。

今度、休日出勤で事務所に来るときにでも使いたいとは思ってます。

 

今日のお知らせ

弊所代表の川嶋の新しい本が出ます。その名も、

「条文の役割から考える ベーシック就業規則作成の実務」(日本法令)

本書は、その条文はどうして必要なのか、どうしても必要なのか、いらなかったら削除していいのか、と、個々の条文の必要性にフォーカスを当てた就業規則本となります。

なぜ、本書で就業規則の個々の条文の必要性に焦点を当てたかというと、日々の就業規則作成業務で「この条文はどういう意味か」「この条文は変えられないのか」「この条文は削除できないのか」といった質問、要望をお客様から受けることが多かったので、ならば、本でそれらをまとめてしまおうと思ったわけです。

本書には良くも悪くも魔法のような条文も奇策のような条文もありませんが、ベーシックな就業規則を作成するのにお力になれる就業規則本だと思っています。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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