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みなし労働時間制・裁量労働制 働き方改革

全国で1人!?高プロ(高度プロフェッショナル制度)がいきなり躓いた理由

国会審議の時は非常に問題視された特定高度専門業務・成果型労働性、いわゆる高プロ制度ですが、制度開始から約1ヶ月半経ってどうなったかというと、以下の記事のとおり。

進まぬ「高度プロフェッショナル制度」=開始1カ月も全国で1人

はっきり言って、スタートダッシュ失敗、F1でいうなら1コーナーでのアクシデントに巻き込まれていきなりピットインといった感じです。

なぜ、本制度はこのように出だしで失敗してしまったのでしょうか。

今回はその失敗理由を考察していこうかと思います。

 

1.詳細が決まるのが遅すぎた

法律の制度というのは、大枠は法律で、細かいことは省令で決められるのが通例です。

働き方改革関連法もその例外ではなく、昨年6月末の成立以降、何度か働き方改革に関連する省令が改正されています。

ただ、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の5日取得等、働き方改革の主要な制度に関連する省令の改正のほとんどは昨年9月に行われたものの、高プロに関する省令の改正は今年の3月末までずれ込んでいました。

この省令改正の内容には、高プロの対象とできる業務や労働者の年収要件、健康管理に関する措置等が含まれていたので、制度の導入を検討する上で重要となる情報の多くが、改正法施行の直前まで決まっていなかったことになります。

もちろん、省令で改正されるであろう内容は厚労省の審議会等で議論されているので、大枠はあらかじめ資料等で知ることはできたものの、きちんと決まるまでは動けないのが普通の企業。

そういった意味で、詳細が施行の直前まで決まらなかったことは、企業の制度導入に対して大いに二の足を踏ませたことでしょう。

現時点で適用対象者が1人しかいないことのほとんどの原因はここにあると思います。

 

2.制度導入へのハードル

では、時間が経てば導入する会社が増えてくるのか、というと私はちょっと懐疑的です。

この高プロ、まず導入するのにそれなりに手間がかかります。つまり、手続き的な部分でハードルがある。

さらに、かなり対象が限られるので、そもそも対象者が少ないというのも数が増えない大きな要因となるはずです。

1つずつ見ていきましょう。

 

① 導入にかかる手間(労使委員会の設置、対象労働者の同意等)

まず、導入の手順についてですが、高プロを導入するには「労使委員会」を設置しなければなりません。

この労使委員会は、使用者側の委員と労働者側の委員がそれぞれ同数になるよう選出し設置するのですが、使用者と労働者の代表者1人ずつという委員会は認められないため、最低でも使用者2人、労働者代表2人で構成する必要があります。当然、使用者側が労働者側の委員を指定することはできません。

なぜ労使委員会を設置するかというと、次の法定項目を決議する必要があるからです。

  1. 対象業務
  2. 対象労働者
  3. 健康管理時間の把握措置
  4. 休日
  5. 健康確保措置
  6. 健康管理時間の状況に応じた健康確保措置
  7. 同意の撤回に関する手続き
  8. 苦情の処理
  9. 不利益取扱いの禁止
  10. その他省令で定める事項

加えて、決議には労使委員会の5分の4以上の賛成が必要となるので、使用者側だけでなく労働者側の委員のほとんどが賛成する必要があります。

この決議の内容を行政官庁に届出することで高プロは導入できます。

しかし、実際に高プロで働かせたい労働者に対してそれを適用するとなると、その労働者の同意が必要となる上、その同意はいつでも撤回が可能とされています。

このように「労使委員会の設置、決議、届出」+「労働者の同意(いつでも撤回可能)」の2つのハードルを越えないと、高プロを労働者に適用できないわけです。

ちなみに、この労使委員会が必要となる労働基準法の制度は、高プロの他には「企画業務型裁量労働制」だけで、こちらの普及率も全企業で1%程度、大企業に絞っても5%ほどと芳しくありません。

 

② 適用対象となる業務・労働者の範囲

適用対象となる業務

次に、適用対象となる業務・労働者の範囲についてです。

現行の法令では、高プロの対象とできる業務は以下の5つしかありません。

  • 金融商品の開発業務
  • 金融ディーラー
  • アナリスト
  • コンサルタント
  • 研究開発職

ざっとみてわかるとおり、「その業務を(ある程度)専門としている会社」にしか存在しないものが多いです。

金融関係の業務は金融関連の会社にしかないし、コンサルタント業務だって、そのほとんどはコンサルタント会社にしかありません。

なので、これらはそれを主とする会社に勤めていない限り、適用とは縁がないわけです。

どのような会社かに関わらず、その業務がある(ありそう)、というのは研究開発職くらいじゃないでしょうか。

 

適用対象となる労働者

また、適用する労働者側には上記の業務に就いていることはもちろんのこと、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていること(同意の際、①業務の内容、②責任の程度、③求められる成果、を明確にする必要がある)
  2. 年収1075万円以上

どうなるか注目されていた年収要件は結局「1075万円」で落ち着いていますが、この要件をサラリーマンで満たせる人、というのも日本では少数でしょう。

つまり、高プロは「対象となる業務に就いてる人が少ない」「年収要件を満たしてる人が少ない」というわけです。

 

以上となります。

ただでさえ、面倒で、対象範囲も狭いのに、その詳細が決まるのも遅い、というトリプルパンチの結果が「開始1か月で全国1人」だったわけです。

 

高プロについてもっと詳しく知りたい方は、厚労省のリーフレットをどうぞ。

高度プロフェッショナル制度のわかりやすい解説(出典:厚生労働省)

 

今日のあとがき

昨日に引き続きのブログ更新です。

ブログを毎日更新してるとネタをどうしようかというのが悩みの種ですが、更新期間が空いたら空いたで、どこからネタにすればいいのかわかりませんね。

なので、わかりやすく時事ネタから今日は行ってみました。

こうした普通の記事の更新は今後も不定期になりそうな雰囲気がありますが、幸いしばらくは四コマの更新が定期にあるので、そちらを楽しみしていただければと思います。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 著書に「「働き方改革法」の実務(日本法令)」の他、「ビジネスガイド」「SR」への寄稿、中日新聞での「働く人を守る労働保険」を連載など執筆活動もしてます。