年次有給休暇

施行日前に最終確認! 年次有給休暇の年5日取得の義務の概要

2019年3月20日

法律の施行が近づいてきて、世間の注目度も高まってきている働き方改革法ですが、やや情報が錯綜気味にも思えます。

特に注目度の高い「年次有給休暇の年5日の取得義務」の情報については、根拠の怪しいものや明らかに間違ったものもあります。

今回は「年次有給休暇の年5日の取得義務」について、正しいのは当たり前として、どこよりも簡潔に、を目指して解説したいと思います。

 

年次有給休暇の年5日取得の基本

年次有給休暇の年5日取得が義務化

2019年4月1日より、対象となる労働者に対して、年次有給休暇を年5日、必ず取得させることが義務化されます。

年次有給休暇の年5日取得が義務化

会社は対象となる労働者に対して、年次有給休暇を年5日、必ず取得させなければなりません。

この義務は会社(使用者)に課せられるものです。

 

取得させる必要のある対象労働者

年5日取得させる必要があるのは、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者です。

なので、今年度の有給の付与日数は10日未満だけど、前年度の繰り越し分と合わせて10日を超える、という場合は対象となりません。

 

取得の期間

年次有給休暇が付与された日(基準日)から1年以内に取得させる必要があります。

早期付与や斉一的付与などにより、付与日が早まる場合や複数ある場合(ダブルトラック)については、こちらの記事をどうぞ。

年5日の年次有給休暇の取得義務で注意したい基準日とダブルトラック

 

罰則

本制度の対象となる労働者に年5日の取得をさせていない場合、会社には罰則があります。

罰則の内容は「30万円以下の罰金」です。

 

年5日取得の方法

労働者による時季指定

法改正後も、法改正前同様に、労働者が自分の取りたい時季に年次有給休暇を取得することは可能です。

 

計画的付与

計画的付与についても、法改正前同様に、労使協定を締結することで行うことができます。

年次有給休暇の年5日の取得義務と計画的付与の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。

年5日の年次有給休暇の取得義務で注意したい基準日とダブルトラック

 

会社による時季指定

会社による時季指定が今回の改正で新しく可能になりました。

ただし、会社が時季指定する場合、労働者に取得時季について意見聴取を行う努力義務及び、その意見を尊重する義務が発生します。

また、就業規則に時季指定の根拠となる定めも必要です。

 

会社による時季指定の限界

会社による時季指定は、本制度の対象労働者に対して年5日までしかできません。

5日を超えて、6日や7日も時季指定することはできないということです。

また、「労働者による時季指定」「計画的付与」により、すでに5日以上の取得が行われている労働者に対して、会社による時季指定を行うことはできません。

一方、「労働者による時季指定」「計画的付与」で取得された日数が5日未満の場合、年間の取得日数が5日になるまで、会社が時季指定することが可能です。

(「労働者による時季指定」が3日しか行われなかった場合、残り2日を会社が時季指定可能ということ)

 

年5日に含めるもの・含めないもの

繰り越し分の扱い

前年度からの繰り越しがある場合、繰り越し分から取得したとしても「年5日」に数えることができます。

 

半日年休の扱い

半日年休については、意見聴取の際に労働者が希望する場合、付与することができます。

逆に、使用者の方から「半日単位取得で取得しろ」と言うことはできません。

この場合、年5日のうちの「0.5日」と数えることができます。

 

時間単位年休

時間単位年休については、取得時間が1日の所定労働時間に達したとしても「年5日」の中には数えません。

1日の所定労働時間が8時間の会社で、1時間の時間単位年休を8回取ったとしても「1日」という扱いにはならないわけです。

 

その他

年次有給休暇管理簿

今回の改正で年次有給休暇管理簿の作成・保存義務が新たに課せられます。

年次有給休暇管理簿には「取得時季、日数及び基準日」を明らかにしておく必要があります。

年次有給休暇管理簿は個別の帳簿として作成する必要はなく、賃金台帳や労働者名簿と合わせて調整することも可能です。

管理簿には3年間の保存義務があります。

 

施行日と経過措置

本制度の施行日は企業の規模等にかかわらず2019年4月1日からです。

ただし、「年5日」の1年は施行日からではなく「付与日(基準日)」から数えて1年となります。

そのため、制度の開始は施行日以降最初の付与日(基準日)からとなります。

斉一的付与等を行っていない場合、労働者によって付与日(基準日)が異なる可能性が高いので注意が必要です。

 

以上です。

小難しい部分をなるべく省略し、要点をまとめたタイトルと短いセンテンスによる解説を心がけてみました。

まずは本記事で制度の全容を掴んでもらい、細かな疑問点が生まれたら、より詳しい解説が載っている厚生労働省のパンフを参照してみるとよいでしょう。

今日のあとがき

今回、どうしてこのような記事を書いたかというと、こんなトンデモ記事があったから。

有給休暇の義務化は4月から 時間単位で取得できればどう変わる?

時間単位年休分を年5日の中に含めることを前提にしていますが、本記事で述べたとおり、時間単位年休は年5日の中には含めません。

ただ、人の揚げ足取ってギャーギャー騒ぐのも面倒なので、今回はこのような形で記事にしてみました。

ちなみに時間単位年休は計画的付与で与えることもできず、扱いがちょっと特殊になってるので、導入を考えてる企業は注意が必要です。

わたしの著書でも、年次有給休暇の年5日の取得義務については当然解説しています。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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