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働き方改革 労働法

改正労働基準法における年次有給休暇改革に関する省令案(基準日の扱い)の解説

2018/08/28

働き方改革に関連する法改正で最も対応が急がれるのが年次有給休暇の改正です。

働き方改革の目玉である時間外労働の上限規制の施行は2019年4月1日からですが、時間外労働の上限規制に関しては中小企業は施行が1年猶予されます。

一方、年次有給休暇の改正は企業規模に関わらず2019年4月1日から施行される上、罰則もあります。

意外と難解な働き方改革で義務化される会社による年次有給休暇の時季指定を解説(追記あり)

 

基準日の扱い

この年次有給休暇の改正に当たり、労働政策審議会では省令の改正案が出ています。

この年次有給休暇の省令案で特に念入りに解説されているのが、基準日の扱いです。

年休を前倒しで付与した場合の年休時季指定義務の特例について(案)(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

今回の改正では、対象労働者に基準日から1年以内に5日間の年次有給休暇を取得させないと違法となり罰則の対象となるため、この基準日の考え方が重要となります。

基準日とは簡単に言うと年次有給休暇の付与日です。

例えば、4月1日入社の場合、最初の年次有給休暇の付与日は6か月後の10月1日。以降は1年ごとに10月1日に年次有給休暇が付与されるため、この10月1日が基準日となります。

しかし、会社によっては一斉付与という形で、6か月経過よりも前に年次有給休暇が付与されることがあります。

こうしたイレギュラーな場合にどうしたらいいか、というのが今回の労働政策審議会では案として出ています(以下での解説は全て案であり、実際に省令として成立するものとは異なる可能性があります)。

 

①付与日を前倒しする場合

有給の付与を6か月より前に前倒しする場合、前倒しで付与された日を基準日とし、そこから1年以内に5日以上の取得をする必要があります。

前倒ししない場合の基準日(下図の例では10月1日)から1年のあいだに5日取得させても、取得させたことにはなりません。

出典:年休を前倒しで付与した場合の年休時季指定義務の特例について(案)(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

②付与日と付与日の1年未満となり期間の重複がある場合

会社規則の変更により付与日の間隔が短くなった場合はどうでしょうか。

例えば、4月1日入社の労働者に対し1年目は法定通り10月1日に年次有給休暇を付与したものの、次年度からは規則変更により労働者全員を対象に、年次有給休暇を翌4月1日に一斉付与することになったとします。

この場合、付与日と付与日のあいだが1年未満となります。

そして、10月1日からの1年間と翌4月1日からの1年間の2つの年次有給休暇を5日取得期間が混在し、翌4月1日から9月30日までは期間が重なってしまいます。

期間の重複「ダブルトラック」が発生している状態です。

こうした場合、10月1日からの1年間と翌4月1日からの1年間のそれぞれで5日取得(つまり1年半の期間で10日取得)させてももちろん問題はありません。

一方で現在の省令案では「ダブルトラックの期間の月数を12で割った数に5をかけた日数」の取得でも足りるとしています。

つまり、上の例の場合、10月1日から翌々年の3月31日までの1年6か月のあいだに「18÷12×5=7.5日」取得させれば足りることになります。

0.5日は半日取得でも問題ないのか、それとも8日に切り上げるのかは今出ている資料だけでは判断できません。

出典:年休を前倒しで付与した場合の年休時季指定義務の特例について(案)(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

③特例後の基準日

①や②の期間後の基準日については、①の場合は前倒しで与えた日(例では4月1日)から1年後を「みなし基準日」とするとしてます。

②についてもダブルトラックの後半の基準日(つまり、②の例では10月1日ではなく翌4月1日)から1年後を「みなし基準日」とします。

①の場合

出典:年休を前倒しで付与した場合の年休時季指定義務の特例について(案)(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

②の場合

出典:年休を前倒しで付与した場合の年休時季指定義務の特例について(案)(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

④年休を前倒しで分割付与する場合

入社間もない社員でも年次有給休暇が使えるよう、会社によっては、年次有給休暇の一部を前倒しで付与する場合があります。

例えば4月1日入社した労働者に対し、入社と同時に5日を付与、さらにその3か月後の7月1日に残りの5日を付与するといった方法です。

この場合、基準日は合計10日の付与が行われた日となります。

今回の例では7月1日が基準日となるので、法的義務を果たす上では、7月1日から1年間のあいだに5日以上の取得があれば問題ないことになります。

ただ、この場合、入社日に5日分を付与されているため、基準日の7月1日より前となる4月1日から6月30日のあいだに労働者がすでに何日か年次有給休暇を取得している可能性があります。

このように前倒しで分割付与する場合で基準日よりも前に年次有給休暇を何日か紹介している場合、その分も法定の5日分の一部を消化していると考えます。

例えば、今回の例でみると、7月1日より前にすでに3日年次有給休暇を取得しているという場合、7月1日からの1年間については、5日から3日を引いた2日を取得させれば、法的義務は果たすことになります。

出典:年休を前倒しで付与した場合の年休時季指定義務の特例について(案)(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

以上です。

複雑なところもありますが、基本的には1回乗り越えれば後はスムーズに運用できるものばかりかと思います。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。