今月の初めは働き方改革に関連して裁量労働制のことが国会で紛糾してたはずですが、今や働き方改革の「は」の字も聞こえてきませんね。
この働き方改革法案に関しては、今国会で通るにしても裁量労働制(企画業務型裁量労働制、専門業務型裁量労働制)に関する部分の削除はほぼ間違いなしと言われています。
一方、高度プロフェッショナル制度やホワイトカラー・エグゼンプションと呼ばれていた「特定高度専門業務・成果型労働制」についてはどうなるか微妙なところ。
今回はこの特定高度専門業務・成果型労働制に関係する話。
この記事の目次
健康管理時間とは
特定高度専門業務・成果型労働性には労働時間という考え方がない
特定高度専門業務・成果型労働制の最大の特徴は、この制度の対象労働者には「労働時間」という概念がないという点です。
日本の労働法の基本は「労働時間によって賃金を決める」ことであり、その証拠に最低賃金は時給で決まっています。
また、似たような制度である企画業務型裁量労働制、専門業務型裁量労働制でもあくまで「労働時間をみなす」に留まっています。
よって、「労働時間」という概念がないという本制度は異例中の異例といえます。
労働時間ではなく健康管理時間
ただし、「特定高度専門業務・成果型労働制」の対象労働者にも労働時間「のようなもの」は存在します。
それが「健康管理時間」です。
健康管理時間とはその名の通り、特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者の健康管理を目的に、その時間数を把握することが会社に義務づけられるものです。
特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者の健康管理時間とは具体的には、以下の時間を言います。
※ 労使委員会で「労働時間以外の時間を除く」ことを決議することも可能
健康管理時間と労働時間の違い
では、健康管理時間と労働時間の違いとは何でしょうか。
一言で言うと「健康管理時間は労働時間ではない」ということに尽きます。
繰り返しになりますが、労働基準法では、法定労働時間や時間外・休日・深夜労働など、労働時間を基に定められている制度が多くあります。
しかし、健康管理時間は労働時間ではないので、こうした「労働時間」を基準とした制度の適用はすべて受けません。
健康管理時間は、「健康管理」という言葉が付いているとおり、あくまで特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者の健康管理に対して使われるものとなります。
そもそも会社が労働者の労働時間を把握しなければならない理由は、1つは労働者の賃金を決定するため、もう1つは労働者の健康を管理するためです。
よって、健康管理時間とは、この2つの労働時間の役割のうち、健康を管理する部分を引き継いだようなものと考えることができます。
健康管理時間が重要となる場合
会社は特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者の健康管理時間を把握する義務がありますが、健康管理時間に関する義務は把握することだけではありません。
具体的には以下の2つの措置を行う必要があります。
健康確保措置
1つ目は、特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者に対して会社が行わないといけないとされている健康確保措置。
健康確保措置は以下の4つの中から最低でも1つを選んで行う必要があります。
- 勤務間インターバル制度の導入、かつ、省令で定める回数以下とする1か月の深夜業回数の制限
- 健康管理時間を1ヶ月又は3ヶ月についてそれぞれ、省令で定める時間を超えない範囲内にする(健康管理時間の上限規制)
- 1年に1回以上、継続した2週間以上の休日の確保(労働者が請求する場合は、年2回以上の継続した1週間の休日)
- 健康管理時間の状況その他の要件が省令に定めるものに該当する者に対する健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)の実施
このように、上記4つのうち、1,2,4の3つが健康管理時間にかかわる措置となっています。
労働基準法では健康確保措置とは別に「健康管理時間に応じた健康及び福祉を確保するための措置」というものも行う必要があるとしていますが、これに関連する省令が未確定なので、健康確保措置との違いはまだ明確とはなっていません。
医師の面接指導
2つ目は医師の面接指導です。
先日も記事にしましたが、労働安全衛生法では「健康管理時間が1週間当たり40時間を超えた場合のその超えた時間が1月当たり100時間を超えた」場合、「医師の面接指導」を行う義務が発生します。
「医師の面接指導」ってどんなときに必要? 働き方改革で変わることって?
この医師の面接指導は、会社が実施する義務があるほか、特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者にも、これを受ける義務があります。
以上です。
そもそも特定高度専門業務・成果型労働制の導入のハードルが高いので、多くの会社にとってはあまり関係のないものかもしれませんが、今後、特定高度専門業務・成果型労働制が始まるとこうした言葉を聞くことも増えるかもしれないので、最低限、混乱しないくらいの知識はあった方がいいかと思われます。