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働き方改革 有給

意外と難解な働き方改革で義務化される会社による年次有給休暇の時季指定を解説(追記あり)

2018/09/10

今回の働き方改革法案のうち、労働基準法については数年前から改正予定だった内容と、働き方改革実現会議以降に追加されたものがくっついたものとなっています。

前者についてはかなり前にこのブログでも記事にしています。何度も追記しているのが、この法案が振りに振り回された証拠。

有給の強制取得や残業割増率5割など、2017年以降に改正されるはずの改正労働基準法を解説

今話題の裁量労働制は前者の中に含まれていたものですが、当時はここまで騒がれておらず、どちらかというと特定高度専門業務・成果型労働制と年次有給休暇の強制取得の方が話題になっていたように感じます。

で、企画業務型裁量労働制や特定高度専門業務・成果型労働制については過去に記事しているものの、意外にも年次有給休暇の強制取得については単独記事がなかったので今日はそのお話。

 

会社による年次有給休暇の時季指定の概要

今回の年次有給休暇の改正は、年次有給休暇を会社が5日間強制的に労働者に取得させる制度と、一般的には説明されます。

上記の説明でほとんどあっていますが、より厳密に言うと、本来、年次有給休暇とは労働者が時季指定するものですが、この制度では会社が時季指定することになります。

そして、この会社の時季指定の対象となる労働者は年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に限られ、5日の指定は、年次有給休暇の基準日から1年以内の期間に行う必要があります。

使用者による年次有給休暇の時季指定の概要

  • 対象労働者:年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者
  • 使用者が時季指定する日数:5日
  • 取得期間:年次有給休暇の基準日から1年以内

ただし、労働者が時季指定権を行使して自分の意思ですでに5日間以上有休を取得している場合および、年次有給休暇の計画的付与により5日間以上すでに付与が決定している場合はこの制度の対象となりません。

一方で、労働者が自分の意思で取得した日数や計画的付与の日数が5日未満の場合、5日間に達するまで会社は強制取得させる必要があります。

例えば、労働者が年間で4日、自分の意思で有休を取得した場合、残り1日を会社が強制取得させるわけです。

要するに、基準日から1年以内の間にどのような形でもいいから、対象となる労働者が5日の年次有給休暇を取得する必要がある、というのが今回の制度なわけです。

会社の時季指定はそのうちの1つ、それも最後の手段に過ぎないわけです。

会社は労働者の年次有給休暇の時季指定する際、取得時期について労働者の意思を尊重するよう努力するとともに、年次有給休暇の管理簿を作成する義務も新たに設けられます。

 

労働者の時季指定権と会社の時季指定の優先順位

また、気になるのは労働者の時季指定権と会社の時季指定のどちらが優先されるかという点ですが、これは基本的に労働者の時季指定権が優先されると考えられます。

詳しい説明は法律の条文の詳しい解説が必要なので省きますが、これにより、例えば会社が年間計画で強制取得日を決める一方で、労働者が自分の時季指定権を行使して、強制取得日と関係なく有休を取ることができ、会社の計画が破綻する可能性がでてきます。

よって、会社が年間計画により年次有給休暇の強制取得義務を果たすのであれば年次有給休暇の計画的付与を行うしかありません。

 

強制取得の不明点

以上が、改正労働基準法による年次有給休暇の時季指定の内容ですが、現状では不明点もあります。

基準日から1年以内と翌年からの持ち越し分

一番の疑問は強制取得に関して取得期間は基準日から1年以内とあるのもどのように考えればいいかという点。

基準日というのは、雇い入れの日の6ヶ月経過日を指します。

年次有給休暇では最初の1回だけ6ヶ月で付与されますが、その後は1年ごととなるため、雇い入れ後の6ヶ月経過日を基準日とし、年次有給休暇の付与が行われます。

繰り越しと取得期間にはなしを戻すと、年次有給休暇の場合時効が2年のため、1年目に取得しなかった分が翌年に持ち越されます。

通常、年次有給休暇の消化は持ち越された分から行われます。

しかし、持ち越された年次有給休暇は基準日から1年を超えたものであるため、そこから5日間消化しても強制取得の義務を果たしたことになるのかわからないというわけです。

仮に持ち越し分では義務を果たしたことにならないとすると、持ち越しがある場合も強制取得の5日分だけは新しく付与されたものから消化する必要が出てきます。

 

以上です。

まだ法案が通る前なので不明点も多いですが、法案が通れば省令や通達、Q&Aなどを通して上記の不明点は明らかになっていくと思われます。

施行日は2019年4月1日予定となっていますが、働き方改革関連法案の2018年度の通常国会中の成立は不透明となっており予断を許しません。

(以下、追記)

働き方改革法案は無事可決されましたが、7月19日の報道で以下のような記事が出ていたので少しだけ追記。

年休指定日に従業員が働いたら…厚労省「企業に罰則」

タイトルだけ読むと「会社はきちんと有給日を指定したのに、労働者が従わなかったら、会社は罰則かよ」と勘違いしかねない感じですが、罰則対象となるのはあくまで「基準日から1年以内に5日有休を取得させなかった場合」です。

なので、最初に指定した日に労働者が従わなかった場合、他の日を指定して取得させればOKだし、すでに5日以上取得している場合は上記のような場合も罰則の対象とはなりません(そもそも、5日以上取得している労働者に対して、会社は時季指定できない)。

 

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。