みなし労働時間制・裁量労働制

裁量労働制が改正されると労働者の健康確保措置が強化される話

2018年2月28日

昨日の続き。

法改正で企画業務型裁量労働制の業務拡大されるらしいけどそれってどんな業務?

働き方改革関連法案によって、裁量労働制が変わるのは業務の追加だけではありません。

裁量労働制の対象労働者への健康確保措置の強化も盛り込まれています。

この健康確保措置野花かは、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制のどちらも対象です。

 

これまでの「健康および福祉のを確保するための措置」

専門業務型裁量労働制および企画業務型裁量労働制では、それぞれ労使協定、労使委員会の決議で対象労働者の「健康および福祉のを確保するための措置」を定め、使用者はそれを講ずる必要がありました。

では、「健康および福祉のを確保するための措置」とは具体的にはどのようなものを指すかというと、労働省告示第149号(平11.12.27)「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」で以下のように示されています。

 健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にするためには、対象労働者の勤務状況を把握することが必要です。使用者が対象労働者の労働時間の状況等の勤務状況を把握する方法としては、対象労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかにし得る出退勤時刻又は入退室時刻の記録等によるものであることが望ましいことに留意することが必要です。
健康・福祉確保措置としては、次のものが考えられます。

  • 把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること
  • 把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること
  • 働き過ぎの防止の観点から、年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること
  • 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること
  • 把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
  • 働き過ぎによる健康障害防止の観点から、必要に応じて、産業医等による助言、指導を受け、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

※ また、使用者は、把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、 対象労働者への専門業務型裁量労働制の適用について必要な見直しを行うことを協定に含めることが望ましいことに留意することが必要です。

しかし、上記の「健康および福祉のを確保するための措置」は、あくまで「告示(指針)」に過ぎません。

また、相談窓口の設置のように会社側がほとんど負担なく実施できるもの含まれています。

 

法定化された健康確保措置の内容

そこで、裁量労働制で働く労働者の健康を確保すべく、今回の働き方改革法案ではこうした健康確保措置を法定化されます。

法定化される健康確保措置は以下の通りで、以下の項目のうちから実施する必要があります。

  • 勤務間インターバル制度
  • 労働時間が一定の時間を超えないようする措置(上限規制)
  • 年次有給休暇とは異なる有給休暇の付与
  • 健康診断の実施
  • その他厚生労働省令で定める措置

 

省令で定める措置に関しては法案が通らないとどのようなものになるかわかりませんが、指針で示されているものよりも会社が実施するのに負担が大きいものが定められているため、裁量労働制を採用する会社では法改正を前に上記のような健康書く措置が実施できる体制を整えておく必要があるでしょう。

ちなみに、上記の健康確保措置は、法改正で新設予定の特定高度専門業務・成果型労働制の健康管理措置とほぼ同内容となっています。

今日のあとがき

まあ、法定化されるっていっても罰則、ないんですけどね・・・。

これには一応理由があって、労使協定や労使委員会の決議って、労使の話し合いで決めるというのが法律の大前提なので、罰則を作っちゃうと労働者側も罰則の対象となるから。

なので、労使協定を必要とする条文の規定って、案外罰則がなかったりします。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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