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働き方改革 法改正

法改正前と法改正後で何が変わる?「限度時間」と「罰則」の話

2017/11/08

(以上がお知らせ、以下から本題)

 

1日8時間1週40時間の法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合、労使間で36協定を結び時間に応じた割増賃金を支払う義務が会社にはあります。

36協定には法定労働時間を超えて延長できる時間を「1日」「1日を超え3か月以内」「1年」の3つの期間で定める必要があります。

このうち「1日を超え3か月以内」と「1年」の期間については、厚生労働省の告示である「限度基準」に延長してもいい最大の時間として「限度時間」が定められています。

しかし、この「限度時間」が法律上は結構な「穴」だらけで、現状、企業の長時間労働を抑止する力がないということで、働き方改革の法改正に合わせて、様々な変更が行われます。

今回は、「限度時間」について、なぜ今の制度はダメで、法改正後はどう変わるのか、を見ていきたいと思います。

 

現行の限度時間が機能していない理由

法改正前の限度時間は、すでに述べたように厚生労働省の告示である「限度基準(時間外労働の限度に関する基準(平成10.12.28労働省告示154号、最終改正:平成21.5.29厚生労働省告示316号))」に定められています。

告示は法令とは異なり、直接的に法的拘束力を持つものではありませんが、労働基準法36条3項ではこの限度基準の告示を「労使できちんと守りなさい」と定めており、一定の効力を持たせています。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条 (略)
2 厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。(筆者注:限度基準のこと)
3 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。
4 (略)

ただ、問題なのはこの労働基準法36条3項に罰則がない点。

このため、限度基準に定められた限度時間以上の時間を36協定の延長時間に定めても、労働基準法上は罰則がないということになっています。

(罰則がない理由は、36条3項は「労使」で限度基準を守りましょうという趣旨のため、罰則を付けると労働者側も罰則の対象となるからと考えられます。)

ただ、間違えてはいけないのは36協定で定めた「延長時間」を超えて労働させた場合は、れっきとした法違反であり罰則があること(労働基準法32条違反。ただし、特別条項がない場合に限る)。

その一方で、限度時間を超えて延長時間を定めることができるので、あらかじめ延長時間を多めに見積もっておけばこうした違反を回避できてしまうという「大きな穴」が現行の限度時間には存在しているわけです。

 

改正後は限度時間の違反は必ず罰則対象

では、来年の通常国会での改正が予定されている働き方改革に関連した労働基準法の改正で、「限度時間」はどう変わるのでしょうか?

まず、何より限度時間が法定化されます

そのため、限度時間を超える延長時間を定めることはできなくなります。

仮に定めた場合はその労使協定は無効。

労使協定が無効ということは、その状態で1分でも時間外労働させたら労働基準法32条違反ですので、延長時間は限度時間の範囲内で定めざるをえなくなります。

また、延長時間を超えて労働させた場合、特別条項がない限り法違反であることは法改正前から変更はありません。

延長時間は限度時間の範囲内で定めなければならないので、やはり限度時間を超えて労働させることはできないということになります。

 

限度時間の期間区分もすっきり化

以上のように、法改正後の「限度時間」は、法改正前とは異なり、非常に拘束力が強く、時間外労働の上限規制の1つ目の天井と考えることができます。

年間上限720時間となる時間外労働の上限規制とは?(2017年07月12日ver)

そして、こうした罰則の話以外にも限度時間には変更点があります。

法改正前は、36協定の延長時間の期間の区分は「1日」「1日を超え3か月以内」「1年」となっていました。

このうち「1日を超え3か月以内」という期間区分が法改正で「1か月」とされます。

「1日を超え3か月以内」の期間については、実務上は「1か月」とされることが多かったこともあり、実態に合わせた改正と言えるでしょう。

この結果、「1日を超え3か月以内」の区分のせいでごちゃごちゃしていた限度時間も以下の通りすっきりした形になります。

現在の限度時間

期間区分 原則 1年単位の変形
1週間 15(時間) 14
2週間 27 25
4週間 43 40
1ヶ月 45 42
2ヶ月 81 75
3ヶ月 120 110
1年 360 320

変更後の限度時間

期間区分 原則 1年単位の変形
1ヶ月 45 42
1年 360 320

 

以上の改正は、現在の予定では来年(平成30年)の通常国会で改正が行われ、平成31年4月1日より施行の予定です。

これは時間外労働の上限規制全般に言えることですが、罰則のある規定にもかかわらず、もうあまり期間がないので早めの対応が必要です。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。