育児休業・介護休業

労働時間設定改善指針と育児・介護休業指針の改正内容と、それを見て驚き呆れた話

2017年9月21日

 

今月末「労働時間設定改善指針」および「この養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(以下、育児・介護休業指針)」の2つの改正が予定されています。

労働時間等設定改善指針の一部を改正する告示案要綱(リンク先PDF 参照:厚生労働省)

子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する告示案要綱(リンク先PDF 参照:厚生労働省)

改正内容は大まかに分けると2つで、1つは、現行法では入社から6ヶ月経たないと取得することのできない「年次有給休暇」と「子の看護休暇および介護休暇」を、法定の6ヶ月よりも前に取れるようにしましょうよ、というもの。

そのように指針で示す理由は、今のように6ヶ月経たないと「年次有給休暇」と「子の看護休暇および介護休暇」が取れないことが足かせになって、本当は転職したいけどできていない労働者の転職を促すため。

そんなのより、解雇規制を緩和した方が転職しやすくなるだろう、と思わなくもないですが、それよりも驚かされたのがもう一つの改正内容。

 

公民権の行使するときや公の職務に就く際の「休暇」制度

もう一つは「労働者が公民権の行使するときや公の職務に就く際の休暇制度を設け、また、裁判員に関しては職務を行うため休暇を取得したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」というもの。

これを読んで、ん? と思った方もいるでしょう。

というのも、労働基準法では、労働者が公民権の行使するときや公の職務に就く際、労働者がそのための時間を請求した場合、会社はそれを拒んではならない、とされているからです。

ただ、労基法の規定ではあくまで権利行使及び職務執行のための時間を与えることで足り、今回追加された指針のように「休暇」を設けることまでは会社の義務とはしていません。

なので、多くの会社では、上記のような場合「休職」という扱いにしていることでしょう。

 

制度の失敗を会社に押しつけるな

しかし、今回の指針では「必要な時間」や「休職」ではなく「休暇」を与えるべきとしています。(これらの何がどう違うかは正直説明し出すと面倒なので割愛します)

指針ではこの「休暇」が「無給」なのか「有給」なのかはっきり示していませんが、わざわざ「休暇」と表記しているのは「有給」とすべきと考えているからでしょう。

それがわたしの被害妄想でない証拠が、今回の指針改正の根拠の1つである、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が平成27年に改正されたときの附帯決議に、

政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

四 地方公共団体、企業等との協力体制を強化して、特別な有給休暇制度の導入や託児・介護施設の優先的利用等、仕事や家庭を持つ国民が裁判員等として活動しやすい環境の整備について更に積極的に取り組むこと。

「労働時間等設定改善指針」及び「育児・介護休業指針」参考資料(リンク先PDF 参照:厚生労働省)

とあるから(強調は筆者による)。

2年前の附帯決議に今さら文句言うのもなんですが、なんだこれ

あっしは裁判員制度がなんぼのもんかしりやせんが、なぜ、会社がそんな負担しないといけないんですかね?

どうも、裁判員の辞退率は制度開始以降、ほぼ右肩上がりらしいですが、会社に有給休暇与えろっていうことは、その原因は「お金」って考えてることでしょ?

だったら、裁判員の報酬もっと増やせよ、会社にその負担を押しつけるんじゃねえよ、って話(ちなみに裁判員制度の日当は1万円以下と定められている)。

働き方改革、働き方改革いうなら、まずは役所の国民の働かせ方・待遇をもっと考えろって話なんですよ、まったく。

 

まあ、いずれにせよ今回の改正は、あくまで指針の改正であり、法的な拘束力はなく会社が従う義務はありませんが、間違った方法や自分たちの失敗を押しつけられる、企業側の身にもなってほしいと思わずにはいられません。

あと、指針やガイドラインに関して一言を言うと、何も知らない人たちはこれと法律の区別がつかない場合だってあるんだから、「これに従わなくても罰則はない」ってのも一言入れたら? あたかも法律の振りしていろいろなことを押しつけるのは役所の怠慢であり傲慢であり、卑怯だ。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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