副業・兼業

高まる副業・兼業の機運の中で気をつけたい「情報商材」とリスクとコストの労務管理

2017年8月22日

先日、VALUの件を(無理矢理)労務管理に絡めて記事を書きましたが、今日も結構無理矢理気味です。

VALU騒動の中心である「ヒカル」という人、もともと「情報商材屋」だったらしいですね。

YouTubeのチャンネル登録、再生回数も買える!! 悪徳情報商材スパマーに騙されるな!!

わたし自身がこの人物のことを知ったのが、騒動が起こる本当にちょっと前だったので知りませんでした。

というわけで、今日は情報商材の話。

 

いかにも怪しい情報商材

情報商材というのは定義が難しいですが、今回扱うのはいわゆる「稼ぎ系」の詐欺的なものを指します。

札束を見せびらかす身なりの派手な男が「ネットで△△するだけで月収□□万円」とかいってる、いかにも怪しいやつです。

情報商材について詳しく解説すると本題に入れない可能性があるので、情報商材の怪しさがよくわからない方は、以下の2つの記事を読んでもらえればとよくわかると思います(わたしも情報商材についてふわふわしてるところがあったのですが、以下の記事のおかげでかなり考えがまとまりました)。

情報商材とは?”稼ぎ系”の9割以上は詐欺まがいのモノである

ネオヒルズ族はなぜ詐欺でつかまらないのか

ちなみに、「情報商材」というワードでGoogleの画像検索をかけると、こんな地獄絵図が。

 

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

自社の労働者が副業・兼業に「情報商材屋」を選ぶ可能性

で、仮にこのブログを読んでる経営者の方で会社として「情報商材」を選ぶという方がいたら

「弊所とは縁はありませんでしたね。うちに迷惑かける前に消えてくれ。迷惑かけるようだったらそれ相応の対応をする」

という話になりますが、そうではない場合でも、自社の労働者が副業・兼業の一環として「情報商材屋」を選ぶ可能性はゼロではありません。

特に現在は政府が副業・兼業の容認を企業の求めるなど、副業・兼業の気運が高まっているので、それに乗っかった労働者がよくわからないまま「情報商材」に飛びつくことも考えられます。

 

情報商材屋は自営・フリーランス型の副業

仮に、情報商材屋を副業・兼業(業、とも本当は言いたくないが)とする場合、どこかの会社にダブルワーク的に働くというよりは、自営・フリーランスで、という形になるでしょう。

自営・フリーランスであれば、「情報商材」でその人がいくら悪評を立てようがその人の自己責任、というのが一般的な感覚かもしれませんが、そうはいかない場合も考えられます。

例えば、「情報商材屋」は自分を信者たちにより良く魅せるために、プロフィールをドラマティックに盛りに盛るのが定番です。

その一環で「こんな中小企業で働く俺だけど、今は・・・」とか「みんなの知ってる大企業で働いてた俺がこうして・・・」みたいな形で、企業名を実名で宣伝したりすると、悪評は会社に飛び火しかねません。

仮に会社名が匿名の場合でも、悪評が高まれば「特定班」と呼ばれる有名人の個人情報をネットの情報から洗い出すことを趣味とする人たちの手で、企業名がバレるという可能性もあります。

 

自営・フリーランス型副業の会社側からの利点

会社から見て、自営・フリーランス型の副業の良い点は、副業をしているときの公的保険や労働時間の管理が不要な点です(ダブルワーク型だと、副業先のものであっても労働時間の把握する必要があり、実務上は不可能に近い)。

そのため、副業・兼業を容認している会社の中でも、ダブルワークの場合には会社への許可等を必要としていても、自営・フリーランスの場合は会社への届出不要としていたり、手続きを簡素化している場合があります。

一見、無責任に見えるかもしれませんが、実際には完全に放置するのも手は手で、その方がまずコストがかかりません。

また、下手に会社が労働者の副業の実態を知っていると、知っていることを理由に責任が発生する可能性があります。

 

その制度はリスクとコスト、釣り合ってる?

しかし、いくら「放置」に利点があるとはいえ、上記のように、自社の社員が情報商材をやらかして、会社に悪評が来る可能性を考えてしまうと完全放置はしづらい、と思うかもしれません。

こうした場合、どうしたらよいのでしょうか。

考えないといけないのは「リスク」と「コスト」です。

上の例では、「自社の社員が情報商材をやらかして、会社に悪評が来る可能性」というのを、あたかも高確率で起こりうる未来のように言ってますが、実際にはどれほどの確率なのでしょうか。

実際のところはわかりませんが、おそらくほとんどないでしょう。

また、実際に起こったとして、その悪評による被害額はどれくらいになるかというと、会社の規模にもよりますが、やはり限られるのではないでしょうか。

で、その程度の「リスク」に「放置」の利点を捨てて、「管理」するコストをかける必要があるか、を考えないといけません。

つまり、かけたコストに見合うだけのリスクヘッジの効果があるかということです。

まあ、ここまで書いて、対策しようと思った経営者の方はいないかもしれませんが(笑)、対策の一環で「情報商材」に関する社員教育等は行ってもいいかもしれません。

 

やるリスク、やらないリスク、やったときのコスト、やらなかったときのコスト

なんだか、自分で不安を煽っておいて、自分でその不安はたいしたことないとまとめるという、なんともマッチポンプみたいな記事になってしまいましたね。

ただ、「労務管理について何でもかんでもやろうとする必要はないけど、やらなかった場合のリスクと、やったときのコストはきちんと考える」というのは大事なことだと思います。

特に現代は労務管理にうるさい世の中になってきて、世間も社労士も監督署も、会社にあれやれこれやれと言ってきますが、全部できるわけではありません。

その際の優先順位の付け方や取捨選択の決断において、リスクとコストを考えるというのは有効な方法と言えるでしょう。

今日のあとがき

このブログを書くために「情報商材」についてネットでいろいろ調べていると、「情報商材は悪くない」みたいに書いてあるサイトが結構あって、でもでも、よくよく読んでみると、てめえのサイトも「情報商材」やってんじゃねえか、というブログに何度も飛ばされてイライラ。

あと、この記事自体も本当はマッチポンプするつもりはなくて、「こういう事が考えられるからこういう対策した方がいいよ」みたいにまとめようと思ったんだけど、こんなレアケースの対策をする必要があるのかなあ、と思ってるうちに、上記の内容&まとめになりました。

労務管理に関しては監督署がコスト度外視の監督をしてくることもあって、リスクやコストといったビジネスでは当たり前の視点が欠けている気がするので、機会があればその辺のことをまとめた記事をいつか書きたいですね。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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