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行動経済学

「私の履歴書」の平均回帰

2016/04/20

今回はヤフーニュースに出ていたコチラの記事について。

日経新聞「私の履歴書」登場企業の業績は悪化する!? 岡三証券が衝撃のリポート

まあ、タイトル通りなのですが、要するに日経新聞の「私の履歴書」に経営者が出ると、その企業の業績が悪化するというリポートが出たそうです。

で、その理由が、私の履歴書に経営者が出る時というのは、たいてい、会社の業績が最高かそれに近い時だが、そうした好調が常に続くわけではないので、落ちてしまうことが多いということでした。

これは平均回帰という統計学的な現象でなんら珍しいことではありません。

平均回帰

例えば、お立ち台に立つくらいに活躍したプロ野球選手が次の日もお立ち台に乗れるかというと、大抵は別の人が乗ります。絶好調の次の試合で、それよりも絶好調、もしくは現状維持でいられる確率よりも、多少なりとも調子を落とす確率のほうが高いからです。

逆に無安打続きで絶不調、もうどん底でも、一流バッターなら、そのままどん底でいる確率より、ほんの僅かでも調子が上がる可能性のほうが高い。

このように、極端な結果のあとにはより平均的な結果になりやすい、というのが平均回帰です。

シーズンを通じて3割を打つバッターでも無安打の試合はあるように、逆に2割台のバッターでも4打数4安打打つこともあるように、そうした確率の偏りみたいなことは、現実の世界ではいくらでも起こっているわけです。

もう一つ例を上げれば、男女揃ってモデルのように背の高い夫婦がいたとします。その夫婦のあいだに生まれた子供は両親(男の子なら父、女の子なら母)よりも背が高くなるかといえば、必ずしもそうではありません。逆に、男女揃って背が低い場合も、子供が両親よりも背が低くなるということもあまりありません。(ナインティナインの岡村さんは4人家族の中で一番背が高いそうですし)

どちらの場合も、平均よりも背の高い人も低い人も、人類という大きな枠で見れば、確率の偏りの産物であり、その間に生まれる子供は、人類の平均的な身長に回帰することのほうが多いわけです。

回帰の誤謬

ただ、人間の直感は困ったことにこうした確率の偏りが平均に戻る、という平均回帰の現象をなかなか理解できません。頭ではわかっていても、です。

仕事で大失敗した部下を上司が怒鳴りつけた場合、ほとんどの場合、その部下は次の仕事ではそんな失敗はしません。反省したとか、やり方を見なおしたとかという本人の努力の賜物のかの迂生もありますが、そもそも大失敗なんてそうそうしません。となると、失敗しなかったのは単に平均回帰によるものかもしれません。

しかし、困ったことに怒鳴りつけた方の上司はそうは思いません。怒鳴りつけたことに効果があったのだと思ってしまうのです。これが回帰の誤謬です。

人間の直感は物事をすぐに因果関係で考えようとしまうため、怒鳴りつけたこととその後仕事ぶりが良くなったことを簡単に因果で結んでしまうのです。

しかし、平均回帰という現象が存在する限り、効果があったかどうかはその部下の平均的な仕事ぶりを見ないといけませんが、もちろん、平均的な仕事ぶりなんて短期間でわかるわけもありません。中長期的に見ないと効果の有無なんてわからないのです。もしかしたら、怒鳴りつけたりなんかせず、励ましてあげたほうが、その後の平均的な仕事ぶりは良かったのかもしれないのですから。

なので、物事の変化を正確に捉えるなら、どこに平均があるのか、中長期的に見てその平均は上がっているのか下がっているのか、というように、短期的な変化にとらわれず、常に平均を意識しないと難しいでしょう。

もちろん、世の中のすべて現象が平均回帰で説明できるわけではないのですが、少なくとも「私の履歴書」をジンクス扱いしているようでは全然ダメですね。

 

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。