時事のよもやま話

反安保デモ参加者には常識の(?)集団的自衛権と集団安全保障の違い

2015年9月5日

反安保デモが華やかしいですね。村上龍の69の主人公に多大な影響を受けたわたしなので、今度はぜひともレディ・ジェーンの気を引くため下心120%で参加してみたいと思ったのですが、どうも、デモの写真を見る限り、対象外の性別の方と対象外の年齢ばかりで、おまけに今年の夏は天気が不安定。暑さにも雨にもやられたくないので、残念ですが断念したいと思います。

他にも面白い村上龍の小説はあるけど、何度も読み返したくなるのは本作だけ。名作です。

そんなわけで(どんなわけだ)、安全保障関連でちょっと興味がわいたので小川和久氏の「日本人が知らない集団的自衛権」という本を読みました。集団的自衛権反対のデモに参加されているような方々にはきっと常識的なことしか書かれていないのだろうなあ、と、そんなことも知らない己の無知を恥じつつね。

 

個別的自衛権と集団的自衛権の違い

本書を読んで、わたしにとって目からウロコだったのは、集団的自衛権と集団安全保障は全く別のものであるという点です。正直、同じものの言い換えだとばかり思っていました。

そうした勘違いをしているのはどうやらわたしだけでなく、日本のメディアはおろか、政府や官僚まで両者を同一視したり混同したりしていることを筆者は問題視しており、両者の違いについて、混同している例やメディアの誤報記事などを上げて、本書の半分くらいをこの両者の違いを明確にすることに費やしています。

繰り返しますが、反安保デモに参加しているような方々にとって両者の違いなんて常識的な話なので、ドヤ顔で門外漢の人間が説明するのもおこがましいのですが、それ以外の方や、なにより私自身の備忘録として両者の違いを記しておくのが今回の記事の趣旨なのでご理解を。

両者の違いを理解するにはまず個別的自衛権と集団的自衛権の違いを知る必要があります。本書内で両者を説明するために上げられている「6年1組」の例えが秀逸なので、ところどころアレンジしながら、この記事でも使わせてもらいます。

この6年1組には学年きっての問題児チャ◯ナ君がいます。ところ構わず暴れるチャ◯ナ君に対して、被害にあった子が個別に反撃する、というのが個別的自衛です。当然、正当防衛として誰もが個別的自衛を行使する権利を持っています、これが個別的自衛権です。

一方、身体が弱かったり気が小さかったりで、1人ではチャ◯ナ君にはとてもじゃないけど敵わない、けれど、このままじゃ嫌だ、と思った子どもたちは10人ほどで結託することにしました。どういうことかというと、この10人のグループのうち、誰かがチャ◯ナ君の被害にあったら10人みんなが被害にあったとみなし、みんなでチャ◯ナ君をボコボコにしてやろうと決めたわけです。

結託しているグループのうちの誰かが被害にあった時にみんなで反撃する、というのが集団的自衛です。このグループに入っていればその権利を誰もが持てる、というのが集団的自衛権です。実際にみんなでチャ◯ナ君をボコボコにするとこれは集団的自衛権の行使になります。もちろん、集団的自衛権はあくまでも権利であり義務ではないので、権利を行使しない、チャ◯ナ君ボコボコ祭りに参加しないこともできます。

さて、あなたが6年1組の生徒だとしたら、個別的自衛権のみでチャ◯ナ君の相手をするのと、集団的自衛権のグループに入るのと、どちらの方が自分の身が安全だと思いますか? 1対1なら強気に暴れられても、さすがに1対10相手では分が悪いと、いくらなんでもチャイナ君は思うはずですが、それでも1人でがんばりますか?

 

集団的自衛権と集団安全保障の違い

さて本題ですが、集団的自衛権とは、上でも少し触れましたが「権利」です。一方の集団安全保障とは、国連が中心となって創ろうとしている、加盟するすべての国に適用する安全保障体制を達成するための組織やシステム、体制の事を言います。体制と権利なので、ジャンルが異なるわけです。

自衛隊も参加する国連のPKOなんかは集団安全保障の枠組みに当てはまります。また、正式には一度も組織されたことはありませんが国連軍もまた集団安全保障にあてはまります。一方、NATOやかつてのワルシャワ条約機構は集団的自衛権です。

先の6年1組の例で言えば、クラスが国連で、集団安全保障とは例えば問題を起こしたチャ◯ナ君を吊るし上げるための学級会のようにクラス内で揉め事が起きた時に対応するためのクラスの決め事やルールのことを言うわけですね。集団的自衛権はクラス内の仲良しグループみたいなものであり、クラスのグループ同士のにらみ合いが冷戦だったわけです。

実は、誤報でお馴染み朝日新聞は、集団的自衛権と集団安全保障を混同し、その結果、誤報を垂れ流していて、集団的自衛権反対のために集団安全保障による人的被害を集団的自衛権によるものと言っていたりします。人的被害がでているのだからどっちでも一緒だろう、と思う方は、車に引かれて死んだ人間と包丁に刺されて死んだ人間を一緒だと言うのでしょうかね。

とりあえず、両者の違いをきちんと把握しないと集団的自衛権に対して、正確に賛成することも反対することもできないのではないでしょうか。

正確に賛成したり反対したりすることの何が大事かわからないって方は、そもそも色々足りてないので、また来世(で会おうとは言ってない)。

集団的自衛権と集団安全保障の違いの他にも、日本とアメリカの軍事的に正確な関係や、自衛隊の兵力の性質などがQ&A形式でよくわかるのでお勧めです。

 

今回の法案について

ちなみに今回の法案についてですが、さすがに全部読む気にはなれなかったのですが、こちらに条文を全部読んだ方が丁寧に要約、解説したものがあるのでご参考までに。

全文読んだ俺が安保法制をわかりやすく解説するよ。

ちなみに以下の動画では、そもそも今回の安保法案に集団的自衛権のことなんて書いてないとか。

・・・。いったいみんな、なにがしたいの?

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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