昨日に引き続き、時間外の上限規制について。
年間上限720時間となる時間外労働の上限規制とは?(2017年07月12日ver)
現行の限度時間制度では適用除外とされている業種があります。それが以下の4つ。
- 自動車の運転業務
- 建設事業
- 新技術、新商品等の研究開発の業務
- 厚生労働省労働基準局長が指定する業務
遠くない将来、時間外労働の上限規制が始まっていくわけですが、では、これらの業種の限度時間や上限規制の扱いはどうなっていくのでしょうか。
こちらについて、昨日ご紹介した7月12日の労働政策審議会労働条件分科会の資料で言及されているので、今日はこれを基に解説。
時間外労働の上限規制等について(報告)(リンク先PDF)
この記事の目次
限度時間の適用除外業務の、上限規制後の扱い
1.自動車の運転業務
自動車の運転業務とはトラックやバス、タクシーの運転業務のことです。
報告では、これらの業種に関しては罰則付きの時間外労働規制の適用除外とはしない、としています。
ただし、改正法の一般則(いわゆる年間上限720時間)の施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用するとしています。
この年960時間に関しては将来的には年間上限720時間の適用を目指すとしています。
つまり、一般的な業務に比べて長く猶予が設けられた上で、初めは他よりも緩めの規制から始まるというわけです。
2.建設事業
建設業に関しても罰則付きの時間外労働規制の適用除外とはしないとしています。
ただし、こちらの場合も、一般の業種より猶予は長めで、施行期日の5年後から年間上限720時間を適用するのが適当と報告されています。
裏返せば、施行から5年間は上限規制の適用はない、もしくは努力義務になるのではと予想されます。
また、震災等の復旧・復興の際は、単月で100 時間未満、2か月ないし6か月の平均で80 時間以内の条件は適用しないとされています。
3.新技術、新商品等の研究開発の業務
こちらについては業務の特殊性から現行通り適用除外とするのが適当と報告されています。
こうした判断には、もともと裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の対象となりうる業種であり、労働時間による管理と合わないことが関係あるのかもしれません。
ただし、適用除外の対象を明確した上で現状以上に職種の拡大をすべきではない、とも報告されています。
また、こうした業務に就く労働者に対しては健康確保措置として、医師の面接指導を義務づけることが適当とされており、限度時間の適用除外以外にも他と異なる労務管理が必要となることが予想されます。
4.厚生労働省労働基準局長が指定する業務
厚生労働省労働基準局長が指定する業務とは以下の通りです。
(1)季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業又は業務
- 鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業(砂糖精製業を除く。)
- 造船事業における船舶の改造又は修繕に関する業務
- 郵政事業の年末・年始における業務
- 都道府県労働局長が厚生労働省労働基準局長の承認を得て地域を限って指定する事業または業務
(2) 公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として指定するもの
- 電気事業における発電用原子炉及びその付属施設設備の定期検査並びにそれに伴う電気工作物の工事に関する業務
- ガス事業におけるガス製造設備の工事に関する業務
(平成11年1月29日基発44号 平成19年10月1日基発1001013号)
これらに関しては、原則、年間上限720時間等の規制を適用するのが適当ではあるが、業務の特殊性から直ちに適用することが難しいものについては、その猶予についてさらに検討するとされています。
5.医師
現行制度では医師は限度時間の適用除外とはされていません。
しかし、働き方改革にあたって、日本病院会をはじめとする医師団体は政府に対して、今回の上限規制に関して医師を適用除外にするよう要望を出していました。
結果、今回の報告では「医師法第19 条第1項に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である」とした上で、5年後を目処に規制を適用することとしています。
また、2年後を目途に規制の具体的な在り方や、労働時間の短縮等について検討し、結論を得ることが適当ともしています。
以上です。
猶予を設け、最終的には一般と同様に規制する、というのが多い流れですね。
今日のあとがき
風の噂によると、子どもたちは今日から夏休みのところが多いみたいですね。
悪いことはいわないので、宿題だけはさっさと終わらせておいた方がいいですよ。
【行動経済学】夏休みの宿題から仕事まで、“先送り”の心理を探ってみよう
ちなみにわたしは中学までは光の速さで終わらせる子で自他共に認める優等生でしたが、高校ではどの教科も1ページもやらずに、おまけに先生からの提出要求も退けたという快挙(?)を果たしたことがあります。当然その頃は劣等生も劣等生で、結局高校も1年で辞めました。