マイナンバー

マイナンバーだけで行政から他人の個人情報を抜き取ることなんてできないよという結論

2015年8月10日

前回までのあらすじ

マイナンバーさえあれば他人の個人情報を盗み見るなんて簡単だろ? と軽い気持ちで田代ま◯しの情報を盗もうとした志村くん(仮)はマイナポータルへアクセスできず涙目、でも涙を流すくらいなら、直接役所に聞いてやる、と外へ飛び出したのだった!

必殺・委任状!!

マイナポータルへの怒りを胸に区役所にやってきた志村くん(仮) 。もうこうなったらわずかでも田代ま◯しの個人情報を手に入れないと気がすまないというわけで、取り敢えず住民票を取ってみようと思い申請書を記入。

本人申請で行うか代理人申請で行うか迷ったが、本物の田代ま◯しより30歳も若い志村くん(仮)が田代ま◯し本人と言い切ると、さすがに窓口のおばさんに怪しまれるだろう、そう思った志村くん(仮)は代理人として申請することにしました。

さて、5年間引きこもっていて住民票を一度も取ったことがない志村くん(仮)の知らない世界を読者のみなさんにお伝えしておくと、代理人申請で住民票を取得する場合というのは委任状が必要となります。よって、案の定、委任状を要求された志村くん(仮)はしどろもどろになりながら「やっぱいいです」と言って、敗走してしまいました。

とはいえ、転んでもただでは起きない志村くん(仮)。ならばと、一度家に帰り、委任状を偽造し、さっきとは別の区役所に乗り込み、申請書を提出すると、無事、田代ま◯しの住民票を手にすることができ、フッフッフッ、ハッハッハッ、と有頂天で家に帰る志村くんでしたとさ、めでたしめでたし(日本昔ばなし風)。

 

それはマイナンバーのせいじゃない

さて、マイナンバーが漏れると自分の個人情報が駄々漏れになるとご心配の皆さんにはハッピーエンドな結末でしたね。でも、言ってしまうと、委任状を偽造すれば他人の住民票を取れるのは今だって同じなんですよ

だから、この結末はマイナンバーの危険性を指摘しているのではなく、現在の手続の問題点を指摘しているに過ぎません。

また、マイナポータルから自分自身のすべての行政情報が手に入ったように、役所に行けば住民票以外にも、納税額や年金記録がわかったりするのかといえばそういうわけでもありません。役所で手に入る情報はあくまでその役所が管理している情報に過ぎません。つまり、税務署なら税金の情報しかわからないし、年金機構なら年金のことしかわかりません。これも今と変わりません。

なので、それらの情報が知りたければ、その役所まで行ってそれぞれに委任状を作るなどのなりすまし行為をしないといけないわけです。繰り返しますが、それは今だって同じで、マイナンバーの導入でリスクが高まるという問題ではありません。

今後、マイナンバーの普及が進むと、個人番号カード一枚で住民票が取れるようになったり、納税証明書が取れるようなったりするはずですが、いかんせん個人番号カードには顔写真が付いていますから、本人以外の人がそれを持っていくとなりすましだとすぐにバレます。また、マイナポータルによる手続が普及すると、そもそも委任状による他人申請の手続はなくなるかもしれません。

 

わたしの結論

よって、本シリーズ冒頭の「マイナンバーが他人に漏れると自分の個人情報がすべて筒抜けになってしまう」という不安にお答えするなら、

・マイナンバーだけでは、行政が管理する自分の個人情報を確認できる政府サイト、マイナポータルにはアクセスすらできない
・委任状を偽造すれば個人情報を盗むことは可能だがそれは今も同じ。むしろ、マイナンバーの普及でそういうことができなくなる

というのが、わたしの結論です。

なんだか、政府の回し者みたいなことばかり書いてしまいましたが事実だからしょうがない。

「マイナンバーが他人に漏れると自分の個人情報がすべて筒抜けになってしまう」と騒いでいる人たちには、とりあえず、今回のシリーズで指摘した事実はきちんと踏まえてもらいたいですね。

(今回のシリーズは平成29年以降を舞台に書きましたが、根拠となる法律は平成27年8月現在のマイナンバー法に基づいています)

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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