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労務問題(時事) 労務管理と行動経済学

東大合格100万円のインセンティブを経済学する(労務管理と行動経済学)

2016/04/20

最近、ずっとインセンティブのことばかり書いていますが、ヤフーニュースに面白い記事が出ていましたね。

東大合格に100万円 あの高校はどうなった?〈週刊朝日〉

どういうわけか教育者と呼ばれる人たちほどお金で勉強させることに抵抗があるみたいですが(勉強する気にさせるのも教育者の仕事だ、みたいなプライドの問題でしょうか)、金銭的インセンティブに学力を向上させる力があることは経済学的には明白です。

もちろん、使い方にもよります。

例えば、いくら東大に合格したら100万円上げるよ、と言っても、こういう言い方は失礼かもしれませんが公立の工業高校や商業高校で効果があるとは思えません。そういった高校の生徒にとってはそもそも東大合格が非現実的すぎるからで、結果、合格によってもらえる100万円もまた非現実的に見えます。

同じように、普通科の高校でいつも200位くらいをうろちょろしてる生徒に1位になったら10万円というインセンティブを与えても無駄になる公算が高い。それなら、100位になったら1万円とした方が生徒の方も目標を立てやすいので効果が出やすい。

こういう話をすると、目標を高く持て、みたいな感じで、「100位になったら1万円」を否定し、1位を狙わせろとかいう人がいますが、そういう人はそもそも自己啓発とインセンティブをごっちゃにしています。

自己啓発として目標を高く持って1位を狙っていくのは本人の心持ち次第ですが、インセンティブはいわば外圧であり、自分ではなく他者を動かすものだからです。(いわゆる意識高い系が嫌われる原因も実はこの辺りにある気がしてなりません)

他者をより効果的に、こちらの意図通りに、そして低コストで動かすことがインセンティブの目的なのです。

話がずれました。

というか、そもそもを言うと、上記のインセンティブ論はリンク先の記事の趣旨からはとっくにそれています。

なぜなら、東大合格100万円を打ち出した高校は、その100万円を奨学金として支払うと言っているだけで、生徒に支払うとはひとことも言っていないからです。事実、記事内の100万円には手が届かなかったけれど30万円の奨学金をもらった生徒はそれを学費に当てています。

要するに、100万円(or30万円)の奨学金を得ることで一番喜ぶのは生徒の親御さんたちなわけです。なので、本来このインセンティブの効果を測るには、生徒の学力よりも親御さんたちへの影響を測るほうが正しい訳です。

そして、結果として、この制度によって、高校側の目的だった進学希望者増加も果たせたということは、高校に進学する生徒に強い影響力を持つ親御さんの推薦を得られた可能性が高く、十分効果があったと考えられるわけです。

もちろん、今後の動向を見てみないと、ほんとうに効果があったかはわかりませんし、効果があったとしても、周りの高校も同様のことをはじめるといった、外的要因で上手くいかなくなる可能性もありますけどね。


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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。