いつもわたしが購読している城繁幸氏の有料メルマガで知りましたが、興味深い記事が出てました。
城さんはこの記事に対して、メルマガ内で「値上げよりも実質値上げを好むのはなぜなのか」と問題提議し、その根っこに日本の雇用問題があると結論づけています(有料メルマガ内のことなので、詳しくは引用しませんが)。
有料メルマガを購読しているくらいなので、基本的にわたしは城さんの考えに共感するというか好きなのですが、これはちょっとと思ったのでブログに書いてみようかと思います。
まあ、ちょっと、と言っても、悪い意味ではなく、わざわざ日本の雇用問題を絡めなくても、行動経済学で説明がつくよ、という話なのですが。
プロスペクト理論で実質値上げを考える
このブログでも何度も取り上げているプロスペクト理論の要は人間は利益よりも損失に敏感で、損失は可能な限り回避したいという嗜好が無意識の中にあるという点です。
値上げというのは、言ってしまえば消費者が損することなので、これを行うと売上が減るのは明確で、歴史の長い大きな企業ほどそれを経験的にわかっているので、企業がこれを避けるのは当然です。
では、内容量を減らすといった実質値上げはどうでしょう。今まで100円出せば60グラムのポテトチップスが買えたのに、実質値上げで50グラムが買えなくなったとしたら、当然、消費者にとっては損です。しかし、100円が120円になるよりは受け入れる人が多いのも確か。
なぜか。
わたしたち人間の心理や感じ方というのは、お金とモノとでは全く違う感じ方、考え方をするからです。
例えば、ある実験では、学校の寮の休憩室の冷蔵庫の上に誰のものかわからない100円玉が5枚置いておいたら1週間たってもずっとそこにあったのに、冷蔵庫中に誰のものかわからないコーラを5本置いておいたら3日と持たずなくなっていたそうです。
要するに、お金とモノとでは人間のメンタル面での様々なハードルが変わってしまうのです。よって、単純な値上げよりも実質値上げの方が好まれるわけです。これは別に日本だけに限った話ではないでしょう。
ただ、これまで日本はずっとデフレで、モノの値段は下がり続けるとまでは言わないまでも上がらないというのが日本人の物価に対する「参照点」となっていたので、値上げのダメージはかなりのレベルで大きい、それなら実質値上げで、と多くの企業が考えたのは確かでしょうが。