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書評

【書評】ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方

「最近、世の中が物騒になってきている」とイメージでモノをいう人に、過去数十年にわたる年間の殺人事件の被害者数の推移のグラフを見せると、たいてい何も言えなくなるはずです。なぜなら、殺人事件の被害者数は1955年をピークに右肩下がりで減っているから。

このように、数字というのは自分のイメージや印象だけで物事を語る相手に対して非常に効果があります。数字を見ればわかることをイメージや印象で物事を語る、というのは結局、現実が見えていないことに他なりません。

そうした中で現代は「ビッグデータ」という言葉に代表されるように、様々な事象がデータ化され数字で表される時代になってきました。しかし、それらの数字に意味や解釈を与えるのは人間であり、国や企業から大本営発表される数字の解釈が正しいとも限りません他の数字を使ったり、あるいは使わないことによって、元のデータを改ざんすることなく数値を変えることやその意味や解釈を変えることは可能だからです。

例えば、一月の統計データが必要な場合、特に指定がなく、しかも提出する側にとって少ない数字が好ましい場合、例えば一月の失業者数のデータがほしいなら、2月のデータを参照すればいい。なぜなら、2月は28日もしくは29日しかないから、季節性(季節による人間行動の傾向)を考えなければ他よりも失業者数は少なくなるはずです。これは言わなければ誰にもわからないし、わかったところで一月のデータであることに間違いはない。

数字の多い少ないではなく、割合、パーセンテージが必要となる統計ではこの手は使えませんが、やりようはいくらでもある。例えば、失業率は労働人口に対する完全失業者の占める割合ですが、働くことが困難な人や、端から働く意思のない人は非労働力人口として、労働人口からは外れる。働く意思がないのでニートは完全失業者には含めないので失業率には影響がないというわけです。

本書はビッグデータやその他、大本営的に発表される身近なデータをを正しく理解するには「ナンバーセンス」が必要だと説き、現実にあった様々な出来事を元に、大本営的発表的なデータ解釈の嘘と真実を明らかにすることで、わたしたちが「ナンバーセンス」を得るヒントを与えてくれます。

ただ、「ナンバーセンス」の根幹は結局「統計学」的な知識が必要なこと、出てくる例がアメリカのものなのでやや実感に欠けることもあり、よりナンバーセンスを身につけたいのであれば、日本の統計学のベストセラーである「統計学が最強の学問である」や筆者の前著に当たる「ヤバい統計学」も合わせて読むことをオススメします。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。