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副業

本業先が副業・兼業を許可しても、副業先の会社はその労働者の就労を拒否することができる

神戸大学の大内教授のブログを見てたら、えっ、と思ったことがありました。

順を追って説明していくと、労働基準法で唯一と言って良い副業・兼業に関する条項である第38条1項では労働時間について、

(時間計算)
第三十八条  労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

と定められています。

この「事業場を異にする場合」について、行政通達では使用者が異なる場合、つまり、まったく別会社であっても「通算する」としています。

一方、昨日紹介したSRの記事でも引用させてもらっているのですが、従来の「菅野労働法」では、使用者が異なる場合は通算しないとされていて、わたしもそれをそのまま引用させていただきました。

しかし、大内先生のこちらの記事によると、最新の「菅野労働法」では菅野先生自身は使用者が異なる場合は通算しなくていい、とお考えながら、論文自体は「両論ありうる条文」とマイルドに訂正されていたようです。

わたしが引用させてもらったのが「労働法」の第11版で、上記のように訂正されたのが第11版の「補正版」なのですが、「補正版」だからたいして変わってないと高をくくっていたところに落とし穴があったようです。

一応、補正板の内容であったとしても「SR」で書かせていただいた記事の論旨自体は変わらないのですが、こういう詰めの甘さがもっと大きな惨事になることもあるので、凹みつつ反省しております。

使用者が異なる場合の労働時間管理は非現実的

ついでなので、労働基準法第38条1項についてもう少し掘り下げたいと思います。

(といっても、以下の内容はSRに寄稿した内容の簡易版なので、詳しくはSR46号を読んでいただければと思います。)

「事業場を異にする場合」に使用者が異なる場合も含めることについては、大内先生は否定説を唱えていらっしゃって、その理由は「実効性」がないから、というもの。

確かに、Aという会社が自分の所で働くXの労働者が、他のBという会社で何時間働いているか、ということを把握することは、不可能ではないにしても、その手間は大きい。

その上、実りはないどころか、AとBの労働時間が法定労働時間を超えている場合、AかBのどちらかは時間外手当を支払う必要があるので実質マイナスです。

つまり、実務上は把握することが困難な上、仮に把握していなかったとしても法違反というわけでもないので、把握することにほとんどメリットがないわけです。

さて、これが仮に、今後出てくるであろう働き方改革実行計画案に基づいたガイドラインやモデル就業規則、あるいは法改正で、使用者が異なる場合も通算して、法定時間を超えたら時間外手当を支払わないといけないことが徹底された場合はどうなるでしょうか。

 

パート・アルバイトとは36協定を結ばないという選択

異なる使用者、つまり、別々の会社に同時期に雇われて働く場合というのは、多くの場合、本業は正社員、副業はパート・アルバイトということになるでしょう。

そして、本業と副業とで労働時間を通算した際に、法定労働時間を超えた場合、時間外手当を支払うことになるのは多くの場合、副業先となる会社です。

となると、異なる使用者でも労働時間の通算が徹底された場合、時間外手当の分、人件費が上がるため、他で本業を持つ労働者をパート・アルバイトとして雇うことをためらう会社が出てくるはずです。

さらに言えば、そもそも、そうした労働者の就労を拒否することも可能と考えられます。

なぜなら、法定労働時間を超えて働かせる場合、36協定の締結が必要だから。

これは労働時間を通算して法定労働時間を超える場合も同様で、提出する義務は法定労働時間を超えて働かせる側の会社にあるとされています。

パート・アルバイトの場合、もともと労働時間が短く時間外労働することもほぼないと考えれば、パート・アルバイトに関しては36協定の対象外とすることは十分可能なので、他に本業を持つ労働者を法定労働時間以上働かせないことは全然あり得るというわけです。

また、正社員とパート・アルバイトの副業・兼業規定や制度は別物として分けて構築することでより、副業先となる会社は上記のようなリスクを避けることができます。

 

本当にそれは労働者の利益となるのか

異なる使用者でも労働時間を通算する、というのは労働者の利益を保護するための解釈と考えられますが、こうなってくると、本当に利益が保護されているか疑わしいと思いませんか。

副業・兼業したくても、副業・兼業させてくれるところがないかもしれないわけですから。

また、働き方改革実現会議では、副業・兼業について、主に「本業に副業・兼業を許可させる」ことに重点を置いている印象を受けます。

副業・兼業がフリーランスや自営業ばかりならそれでもいいのですが、働き方改革実行計画案では、副業・兼業を通じた人手不足の解消、つまり、ダブルワークにも触れられています。

そうしたダブルワークも含めるとなると、副業をする労働者を受け入れる側の負担というのは無視できないし、無視すべきものでもないし、異なる使用者間での労働時間の通算というのは、副業目的の労働者を受け入れいたくない、という悪いインセンティブにしかならないのではないでしょうか。

今日のあとがき

あの、言い訳するわけじゃないと言いつつ、言い訳なんですが、菅野労働法の最新版をなぜチェックしてなかったかというと、菅野労働法、高いんですよ・・・。

ちょっと、その値段にビビったのと、ほとんど変更がないという噂を聞き、補正版はいいか、と思ってしまっていまして・・・。

なんか、書けば書くほど自分のプロ意識を疑われそうなので、平謝りしつつ、この後、猛反省するため、今日のあとがきはここまでです。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。