プロ格闘ゲーマーに、ネモという選手がいます。
彼はエイリアンウェアというDellのゲーミングブランドにスポンサードされているプロゲーマーですが、プロゲーマー活動とは別に本業でサラリーマンをしている、いわゆる兼業プロゲーマーです。
では、働いている会社は彼のプロゲーマー活動を公認しているかというと別にそういうわけではなく、就業規則上は禁止されてないからやってもいいけど、会社は公認しませんよ、というスタンスらしいです。
なぜなら、公認してしまうと、プロゲーマー活動について万が一にも何かあったときに会社が責任を問われる可能性があるから。なので、会社は関与しませんよ、ということらしいです。
なるほどなあ、と、プライベートの時間にとあるストリームでその話を聞いてて思ったのですが、たしかに、働き方改革実現会議における政府の考えとは裏腹に企業が大手を振って副業を容認するような未来は、少なくとも現行法では難しいのかなあと思います。
会社が知ってるか知らないかは大きな違い
最大の理由はやはり管理責任の問題があって、例えば、今の時代、大きなゲームの大会というのは大抵海外で行われるので、週末仕事終わって海外に行って、週明けに帰ってきて仕事をするということが起こりえます。
で、例えば、こうした場合に、副業・兼業をしている労働者が時差ボケでなにかしらのミスをしたりした場合、会社が公認していないのであれば、プライベートで海外に行くのは勝手だけど、ミスの言い訳にはならないよね、となるでしょう。
でも、会社が公認していて、海外で副業・兼業しているのも知ってる、となると、知っていて、公認してるのであれば、会社からしてもは時差ボケは想定の範囲内で、ミスに関しても業務を調整して多少なりとも配慮してあげるべきなのでは、という話になるでしょう。
これはあくまで可能性の話で、実際にどこまで責任を問われるかはわかりませんが、十分ありうる話だと思います。
副業が別の会社でのパート・アルバイトだと
とはいえ、ネモ選手のようなスポンサードを受けてのプロ活動はフリーランス系の副業・兼業なので、会社の責任といっても正直このくらい。
しかし、副業・兼業が他の会社でのアルバイトやパートとなってくると、話はもっと複雑で、労働時間の合算や時間外手当の問題や社会保険の加入の問題などが発生します。
労働基準法第38条にもこのとおり。
第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
しかし、複数の事業所で働く場合の副業に関わるこれらの問題は、社会保険以外の労働時間の合算や時間外手当については、副業していることを知っているから、認識しているから発生するのであって、その労働者が他でパート・アルバイトしていることを知らなければ、合算しようもなければ時間外手当を支払いようもない。
また、労働基準法の違反が成立するのはそれが故意に行われた場合だけなので、発生していることも知らない時間外手当を支払わなかったからといって、会社が罪に問われることもないわけです。
面倒なので言っておきますが、別にわたしは脱法的な話をしているわけではなく、菅野労働法にも書いてあることを言ってるだけです。
下手な公認より放任?
もちろん、競業避止や守秘義務の問題、あるいは副業・兼業によって生じる過重労働による労働者の健康を考えると、管理することにまったくメリットがないとは言い切れません。
また、判例等を踏まえれば会社が労働者の副業を全面的に禁止するのも難しいのも確かなのですが、禁止することも、管理することも難しい、あるいは手間がかかりすぎるとなれば、わざわざ管理が必要な公認したりせず、「(プライベートだから)勝手にしろ」という放任的態度を取るのはある意味、合理的な選択と言えるでしょう。
放任というと、ポリティカルコレクトネスには反する気もしますが、制度に不備があるのが悪いのも確か。
働き方改革実行計画案では、副業・兼業について「会社に容認を求める」こと以外の具体的なことが一切書かれておらず、今後策定される予定のガイドラインとモデル就業規則任せとなっているので、副業・兼業を推進する政府がどのような案を出してくるのか様子見したいところです。
今日のあとがき
過去にも副業については結構記事にしてますが、調べれば調べるほど制度的な矛盾があって、政府の副業・兼業推進の考えとは裏腹に、そんなのできるわけねえ、という気持ちになってます。
詳しく解説しだすと、ブログの記事があと5つくらい必要になるので今回は結構はしょりましたが、そのうち解説する機会もあるかもしれません。
もともと、副業・兼業を原則容認するモデル就業規則の改定も、2016年度中に行われる予定だったのが、働き方改革実行計画案で、2017年度中に延期されているのですが、もしかしたら、思ってたより大変だぞ、と役人も気付いたのかもしれません。