労働時間

「過重労働解消キャンペーン」にかかる毎日新聞の酷いタイトルセンスに閉口

2015年1月28日

以前、このブログ記事でも触れた「過重労働解消キャンペーン」の結果が出たようです。

平成26年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表

でも、それよりも、このことを報じる新聞記事のタイトルが酷い。しかも、いつもの朝日新聞かと思ったら毎日新聞です。

違法残業:「過労死労災請求」半数の2304事業所で

上記の記事のタイトルだけ見たら、まるで、「過労死による労災請求が2304件もあった」ように読めません? 日本で労働災害で亡くなる人の数が年間でだいたい1000人ちょっとなのに、こんな数字ありえないんですよ?

記事の中身を見ればわかるし、厚労省のデータも見ればわかりますが、そんなことは実はひとことも書いてありません。

実は、この過重労働解消キャンペーンでは、過去に過労死による労災請求のあった事業所を中心に行われた(もちろん、それ以外の理由で調査対象になった事業所もある)ようで、つまり「過労死労災請求」というのは言ってしまえば過去の話。

そして、この2304事業所というのは、11月の過重労働解消キャンペーンで監督署が調査した約4600事業所のうち半分のことで、この2304事業所は、違法な時間外労働、つまり「36協定を出さずに時間外労働をさせていた」わけです。つまり、こちらは今現在の話。

要するに、過去の話と今の話を意図的にゴチャゴチャにくっつけたのが今回の記事タイトルというわけです。

ちなみに、違法な時間外労働をさせていた2304事業所のうち約31%にあたる715事業所で、過労死基準を超える超長時間の時間外労働が行われていたと調査の結果では出ていますが、この数字の出し方も結構悪質で、

過労死の危険性が指摘される月100時間超の残業をさせていた事業所は715、150時間超が153、200時間超が35あった。

と記事内にはあり、パッと読むと「715+153+35」の事業所が過労死ラインを超えて時間外労働させていたように読めますが、月100時間超えの715事業所の中には150時間超えの153事業所も、200時間超えの35事業所も含まれています。

言っておきますが、わたしは使用者側の社労士だからといって超長時間労働させることも36協定を出さずに時間外労働させることも肯定する気はさらさらありません。

ただ、記事のタイトルだけで釣る気まんまん、週刊誌や2chまとめサイトみたいな真似をするメディア、それも影響力大きい大手メディアがそんなことをすることにほとほと呆れ返ってるだけです。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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