名古屋で就業規則作成するなら社会保険労務士川嶋事務所

名古屋市営地下鉄名城線、西高蔵駅から北へ徒歩3分、国道19号線沿いの社労士事務所

残業

年間残業上限720時間時代には、残業したがる労働者に対する残業管理の徹底が必須

今週はずっと残業上限年720時間の話をしていますが、金曜日でちょうど切りもいいですし、不明な点も多い中でああだこうだ言うのはとりあえず今日で最後にしたいと思います。

残業上限が720時間になることで、今現在、残業の多い会社が困る、これから大変だというのは誰でも想像のつくことですが、おそらく他にも困る人たちが多いのでは、というのが私見です。

というのも、こちらの調査でもあるように、

残業する理由、最も多いのは?

生活費のために残業したがる人たちが、世の中には一定程度いるから。

こうした人たちからすると、今回の方針決定で残業によって増やせる生活費に上限が付いたことになります。

もちろん、そうした「生活残業勢」がみんな年間720時間以上の残業をしているとは限りませんが、中には困る人も出てくるかもしれません。

 

上限違反で裁かれるのは「残業をした側」ではなく「残業をさせた側」

上記のような「生活残業勢」以外にも、世の中には仕事が好きだったり責任感が強かったりで、率先して残業したがる人たちもいます。

そういう人のことをブラック社員と名付けた人もいましたが、全然、定着しませんでしたね。

まあ、それはいいにしても、この人たちは今回の規制で「生活残業勢」ほどは困らないにしても(ストレスたまるかもしれないけど)、それ以上に困るのはその上司たちかもしれません。

なぜなら、労働者の残業時間が方の上限を超えた場合、部下の労働時間を管理する側の彼らは刑事罰を受ける恐れがあるからです。

労働基準法の刑罰の考え方は、「違反行為をした者」に対して罰則を与える、というもの。

時間外労働に関して言えば、「違反行為をした者」というのは「残業をした側」ではなく「残業をさせた側」になります。

 

労働時間とは

「いやいや、あの残業はあいつが勝手にやったんだよ」と言いたくなるような部下の残業もあるかもしれません。

確かに、労働基準法上の「労働時間」というのは「労働者が使用者の指揮命令下にある時間」をいいます。

つまり、会社からの業務命令がない残業というのは、厳密には残業とは言えません。

なので、労働者が勝手にやった労働というのは、労働時間に含める必要はないわけです。

 

指揮命令下になかったことを証明するのは大変

ただ、じゃあ、何の準備もなしに、労働者が勝手にやった残業を、会社は「指揮命令下になかった」と証明できるかといえば、なかなか難しいでしょう。

タイムカードに労働時間が刻まれていれば、労働者側にとってはそれだけで「指揮命令下にあった」と言いやすいですが、会社側は「指揮命令下になかった」ことを証明するため、タイムカードの時間すら覆せるようななんらかの証拠を用意しなければならないからです。

当然、そうした証拠は後付けでは用意できないので、残業を許可制にしてそれを書面に残したり、会社を一定の時刻でロックアウトしてその記録を残しておくなど、あらかじめ準備しておく必要があります。

 

労働者が会社を「はめる」ことも不可能ではない

逆に言うと、そうした残業管理が徹底できないと、悪い言い方ですが労働者にはめられる可能性だって考えられます。

上司のことが嫌いな部下がいて、その部下が上司を逮捕させたいために、わざと上限規制以上の残業をして労働基準監督署に乗り込む、みたいなことだってできるわけですからね。

それでいきなり逮捕・送検ということはそうそうないとは思いますが、罰則による強制力が付いた後の労働基準監督署および労働基準監督官の動きがこれまでと同様とは考えにくいので注意が必要です。

いずれにせよ、来る年間残業上限720時間時代に備え、会社は時間外労働を含めた労働時間管理体制を整えていく必要があるでしょう。

 

今日のあとがき

今日の記事は労働者側の人からみたらあまり気分が良いものではないと思います。

労働者はことを疑ってばかりで、初めから労働者を悪いものとみているようにも読めるからです。

ただ、個人的には人間というのは「人は生まれながらに弱いものである」という「性弱説」で考えていて、どんな人でも心が弱ると悪いことをしてしまいがち、だと思うのです。

性弱説で企業内セキュリティを考える

人はいつ心が弱るかもわからないし、人間関係もどうなるかもわかりません。

本記事にあるようなことも、労働者が悪いからするというよりは、何かしらの理由で弱っていて、悪い考えを自分の中で肯定してしまって起きるのだと考えています。

ただ、それによって起こるトラブルは、会社にとっても労働者にとっても不幸です。

なので、万が一の時に不幸がないよう、例えその規則やルールが労働者を疑うようなものであっても、そうした規則やルールでで避けられる不幸であるなら、きちんと整えていくべきだと考えています。

 

The following two tabs change content below.
名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。