ニュースピックスで話題になっていたネタですが、
「SNSのいじめを無くしたい」14歳の少女が開発した新システムに世界が注目
ネットいじめとなるような文章をネット上に投稿しようとすると、
「待って、本当にそんな侮辱的なコメントをするの?」
と、ユーザーへの考えなおしを迫るコマンドが表示される。
非常にシンプルな仕組みですが、これにより実に93%(サンプル1500件)もの若者がそうしたネットいじめ的な投稿を取りやめたそうです。
モーゼの十戒を思い出すだけで不正が減る?
実はこれと非常によく似た面白い実験がダン・アリエリーの「ずる 嘘とごまかしの行動経済学」に載っています。
大学の学生に数字探し課題と呼ばれる課題を行い、結果の優劣によって報酬が変わるのですが、その採点は、課題を行う本人が行います。つまり、報酬目当てにごまかそうと思えばいくらでもごまかせてしまう。
(ただし、本書の他の実験でも証明されているが、良心の呵責が働くため、報酬目当てに目一杯ごまかす人は少ない)
そして、数字探し課題を行うグループの半数には、課題を行う直前に最近読んだ本を10冊ほど思い出してもらい、もう半数にはモーゼの十戒(アメリカの大学らしいですね)の内容を思い出してもらうようにしてもらったそうです。
すると、課題の直前に本を10冊思い出したグループよりもモーゼの十戒を思い出したグループのほうが不正は少なかったそうです。
(不正の多少の判断は、同じ課題を自己採点ではなく他者採点したものの平均値から。通常、自己採点の場合、どのような条件をつけても被験者がごまかしをするので、他者採点より平均値が低くなることはない)
日頃の教育よりも不正を行うまさにそのときが大事
興味深いのは、上記の実験を道徳や倫理教育に厳しい学校(定期的に倫理教育の授業があるような学校)でも行ってみたのですが、実験結果に差は見られなかったそうです。
つまり、日頃から倫理教育を徹底するよりも、不正を行う直前にモーゼの十戒のような倫理的な規範を思い出すほうが、不正の抑制になるわけです。
(今回は深く突っ込みませんが、実は、倫理的な規範や倫理教育を、就業規則や社員教育という言葉に置き換えると、この実験結果は結構、社労士としては突き刺さるものがあります)
14歳の少女がこの実験を参考にしたかは定かではありませんが、ネットいじめという、スマホやPCを介さねばならないネットいじめという行為に対する非常に有効な手段であることは、こうした他の実験結果からも間違いないでしょう。
今後はグーグルクロームの拡張機能や携帯端末のアドオンとして開発が進んでいくそうですが、グーグルのバックアップによるビーグデータの活用があれば、どのようなワードがネットいじめに当たり、どのような言葉でそれを投稿するのを考えなおさせるのか、また、こうした装置に慣れさせない言葉選びといった精度がどんどん上がっていきそうですね。
追記:記事投稿初期のタイトルがブログ内容の誤解を招きかねないものだったため変更しました。