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労務問題(時事)

会社が時季を指定すると、休日が有給に置き換わるのか

2016/04/20

従業員がいつ有給休暇を取得するかについて、会社がその時季を指定することを義務付ける方向の労働基準法の改正案が今国会で提出されるようです。

これについて、現在の会社の休業日、例えばお盆やお正月が有給扱いにされてしまうのではとの不安の声も上がっていますが、どうでしょうか。ブラック企業のように法律を最初から無視するのならともかく、わたしのように社会保険労務士として中小企業の労務管理に携わる人間からすると、法律を守りながらそのようないわば脱法行為を行うのは、かなりハードルが高そうな気がします。

有給を休業日と置き換えるには

まず大前提として有給は労働日にしか取得できません。逆に、会社の休業日というのはもともと労働が免除されている日なので、その日に有給を与えることはできないわけです。会社の休業日がいつなのかは基本的には就業規則の定めによりますが、会社で年間カレンダーを作成し会社の休業日を指定する場合もあります。

会社の本来の休業日を有給扱いするよう就業規則を変更するというのは、すなわち休業日が減少することにほかなりません。これは当然、労働者にとっては労働条件の不利益変更となるため、労働者の合意なしには変更できません。また、労働者の意向を無視して無理やり変更しようとすれば労働者から訴訟を起こされる可能性があり、裁判になればまず会社は勝てないでしょう。

一方、会社に年間カレンダーがある場合というのは、多くは1年単位の変形労働時間制が採用されている場合です。1年単位の変形労働時間制とは、繁忙期に労働時間を長くする代わりに、閑散期には短くすることで、1年という期間全体で法定労働時間である1日8時間1週40時間という労働時間の規制を守り、労働者を保護しつつ会社の業務を滞り無く運営していくための制度なのですが、この制度を導入するには年間カレンダーで、1年の労働日と休業日を定めるのが必須となります。

年間カレンダーそのものの変更を1年単位の期間の途中に行うことはできませんから、お盆やお正月を有給に置き換えるためには、年間カレンダーのお盆やお正月の期間を会社の休業日にすることができなくなります。でも、そんな年間カレンダーを面接の時に見たら、面接にやってきた求職者はみんな逃げ出してしまうのではないでしょうか。

それに、有給は勤続年数によって半年の人には年間で10日、6年半の人には20日といったように付与日数が異なるので、本気でお盆やお正月、その他会社の休業日と有給を置き換えるとなると、個々の労働者の有給付与日数に合わせた年間カレンダーを何枚も作成して届け出を出さないといけなくなります。言うまでもなく手続き上非常に手間ですし、また、同じ会社でカレンダーだけが微妙に違う届け出が何枚も出されれば、監督署だって馬鹿じゃないでしょうから、目をつけてくるのは確実でしょう。

実質的な有給の買い上げ

そもそもを言えば、現在の休業日を有給に置き換えるというのは、労働者からすると有給休暇を取らずに有給分の賃金を得ているのと変わらず、実質的に有給を買い上げているようなものです。これはつまり、会社からすると有給買い上げ分の人件費が余計にかかることになります。

以上のように考えると、有給の時季指定を会社が行うことがイコールで現在の休業日と有給の置き換えにつながるかというと必ずしもそうとは言えないだろうというのがわたしの考えです。もちろん、法令順守の意識の低い会社や法令に対して無知な会社が、なんの考えもなく行うことはあるかもしれませんけどね。

(2015.1.20追記)
どうも、労政審では会社が時季を指定する日数の具体案として「3日」というものが出ているそうです。3日だと、お盆と正月をちょっと削ればいいだけなので、休日と有給は置き換わってしまうかもしれませんね

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。