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年次有給休暇の買い取り
春は別れの季節と言いますが、この時期に会社を退職する人も多いかと思います。
会社としては退職時の扱いで困るものの1つに年次有給休暇があります。
いくら労働者の権利とはいえ、退職が決まっているのに籍だけ置いて有休消化で長々と休まれくらいなら、いっそのこと有給分の給与は払うから、つまり、有給を買い取るから、さっさと辞めてもらいたいと思う会社もあるかもしれません。
逆に、引継ぎの関係から有休消化等をしないでほしいと思う会社もあります。
今日はそんな有給の買い取りについて。
原則は年次有給休暇の買い取り禁止
まず、大前提として、会社は労働者の年次有給休暇を買い取ることはできません。
年次有給休暇とは、休暇を取ることが第一の目的であり、給与が支払われるのは休暇を取ることによる経済的なデメリットを回避しているに過ぎないからです。
なので、休む代わりに働け、と会社が言うのは論外だし、休む代わりにお金が欲しい、といくら労働者が言っても認められないのです。
ただし、例外的に買い取りが認められる場合が3つあります。
① 法律以上に有給日数を与えている場合その日数分
まずは、会社が法律以上の年次有給休暇を労働者に付与している場合で、法律以上の年次有給休暇が剰った場合。
例えば、出勤率が8割を超えている場合、入社日から半年経った時点で10日の年次有給休暇を付与する義務が会社にはあります。
この10日分については法定の付与日数なので、会社は有給を買い取ることはできません。
しかし、この10日に加えて会社独自でさらに有給を、例えば3日プラスしている場合、この3日分については有給を買い上げするかどうかは会社の自由となります。
② 2年の時効で消滅した分
有給の買い取りが可能となる2つ目は時効で消滅した分についてです。
労働者が年次有給休暇を取得する権利は時効により、有給を付与された日から2年で消滅します。
この消滅時効にかかる有給に関しては、労働基準法の規制の範囲外となるため有給の買い上げが可能です。
ちなみに、消滅時効にかかる分の有給は、会社が有給を与えないといけないという義務はないものの、一方で、与えてはいけないと禁止されているわけでもありません。
よって、消滅した分を買い上げるだけでなく、有給として与えることも可能です。
ただ、個人的にはこうした規定を作ると、消滅買い上げを狙って2年間有休を取得しない人が出てきそうなので規定として入れる必要性はない、もしくは薄いと考えています。
③ 退職時に未消化だった有給分
有給の買い取りが可能となる3つ目が、記事の冒頭で出てきた退職時の未消化分の有給です。
例えば、残りの出勤日が5日で、未消化の有給が10日もある場合、退職日までに有給を全て消化することはできません。
有給は労働日にしか取れませんが、退職日以降に労働日などありませんから、有休を取ることができないわけです。
このどうしても取れない分の有給の取り扱いに関しては、法の範囲外であり、禁止されてることもも義務付けされてることもありません。
よって、有給の買い取りは可能となります。
買い取り額や買い取り日数は会社の裁量次第
買い取り時の条件に関して法律上の規制はない
年次有給休暇の買い取りについては、その額や日数に関して法律上の規制はありません。
原則禁止なので、買い取り時のルールもない、といったところでしょうか。
なので、1日当たりの有給の金額を給与にかかわらず3000円や5000円とすることもできますし、買い取る日数を「10日まで」といったように制限することもできます。
とはいえ、買い取りを行う場合も、基本的には年次有給休暇の消化率を高めるため、在職中の年次有給休暇の消化を妨げないような制度が望ましいと言えます。
年次有給休暇の買い取りの規定例
以下は、特に買い取りされることの多い、退職時の年次有給休暇の買い取りについて定めた規定例です。
上で述べたとおり、1日当たりの額と日数に制限を設けています。
1 退職時に未消化であった年次有給休暇は1日につき3千円で会社が買い上げる。ただし、買い上げる日数は最大で10日までとする。
2 年次有給休暇を買い上げた分の支払いは最後の賃金と合わせて行う。
まとめ
以上です。
上記の3つはあくまで「可能」なだけで、義務ではないので、会社で採用するかは会社の利益や労働者の利益を考えた上で、慎重に判断すべきでしょう。
今日のあとがき
長いことブログを書いてると既視感みたいなものがいつもあって、これってもう書いたんじゃなかったっけ、みたいなことを思うことがよくあります。
で、有給の買い取りについても昔書いたような、と思って自分のサイトを探して見つかったのがこちらの記事。
有給の買い取りを解禁しろとどこぞの大学教授の提案を徹底批判した記事ですが、まあ、数年経っても誰もその提案に乗ってないところからも、いかにこの大学教授の提案がばかげてたかわかるというものですね(笑)。