最低賃金について考えさせられる文章をたてつづけに読む機会がありました。
1つは以前にも記事にした冨山和彦氏の著書「なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略」。
もう1つは匿名ブロガーの「最低賃金上げたら景気回復するんだよ。」(釣り狙い・アクセス数アップに貢献するのも嫌なのでリンクは張りません)という記事。こちらはちょっと前にアプリのNewsPicsで話題になっていたので読むハメになってしまいました。
結論から言うと、どちらも最低賃金を2000円くらいまで上げようよ、というのがその提案なのですが、ただやはりといいますか、そこに至るまでの論説には天と地ほど差があります。
比べるのも忍びない
先に、匿名ブロガーの言う最低賃金を上げるべき理由を言ってしまうと、これがかなり幼稚。最低賃金で働いてる人でも給与が増えて消費が増えるし、社会保険料も取れるしねみたいなことが延々書いてあって、結果景気も上がるよみたいな、言うなればお花畑全開な論理に涙がポロポロ。
一方の、冨山氏がなぜ最低賃金を2000円まで上げるべきだと言っているかというと、Lの世界の労働生産性を高めるためです。Lの世界ではその労働生産性を高めない限り、日本が甦ることはないというのが彼の本書での主張であり、そのためにも時給2000円の賃金も払えない労働生産性の低い企業には退出してもらうしかないとの考えからです。
最低賃金を上げることの意味、そして、痛みをきちんと理解した上でそれでも上げる必要があると言っているわけです。
最低賃金の上昇で最も影響を受ける人
さて、最低賃金の上昇によるデメリットしてよく言われているのは、企業の雇用抑制です。最低賃金の上昇とは、企業からするとこれまで400円で買えていたマンガが突然値上がりするようなものなので、買い控えが発生してしまうというわけです。よって、雇用対策をするのなら最低賃金という制度そのものをなくしてしまう方がいいという話もあります。
冨山氏の著書の中では一貫して今後Lの世界では構造的な人手不足となるだろうとしているので、その点についてはさほど問題にしていないようです。
ただ、そうは言っても、最低賃金の上昇で最も影響をうけるのは、言うまでもなく最低賃金付近の賃金で働いている労働者、つまり学生や主婦、低学歴層です。
そうした層でも問題なく高い最低賃金で雇われるような人手不足の時代が来るならそれで何の問題もありませんが、そうではない場合、「最低賃金でもいいから働きたいが、最低賃金が高すぎて雇ってもらえない」という状況が発生してしまうのではないでしょうか。個人的には最低賃金を上げることにはまだまだ懐疑的です。