冨山和彦氏が提唱したG型大学とL型大学の分類が話題になっていますね。
このG型大学とL型大学の構想というのは、現在の経済はG(グローバル)の世界とL(ローカル)の世界とに分かれている、つまり、グローバルを舞台に戦うごく一部の企業・人材と、地域密着的な企業・産業とがあり、良くも悪くも2つの世界に連動性がない、という冨山氏の考えが元になっています。
GとLで経済圏が分かれているのだからグローバル人材を育てるG型大学と、地域で働く人達が社会に出て役立つスキルを育てるL型大学とで分けるべきだし、その上で、特に生産性の低いL型産業の生産性を高めることがこの構想の狙いのようです。
GとL
このGとLをより理解するためには冨山和彦氏の著書「なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略」を読む必要があるでしょう。特にG型産業とL型産業の違いは重要です。
G型産業というのは自動車や電機、ITのように世界のトップを狙う、狙う必要のある産業のことです(例えるならオリンピック)。G型産業は世界の名だたる企業同士の闘いとなるGの世界を活きるため、多くの会社で効率化は進んでおり生産性も高い。
一方、L型産業というのは交通(バス・タクシー)や物流、飲食や店舗型の小売業のように、地域密着型産業のことを言います(たとえるならプロ野球)。L型産業の特徴としては、病院や飲食のように、その場所にあることが消費者にとって重要な業種が多く、同業の事業所数も非常に多い一方、生産性については各社でばらつきはあるものの低いことが多い。
そのため、同著で冨山市は、Gの世界の規制をできるかぎり外して世界で自由に戦ってもらう一方、Lの世界ではまだまだ不十分なIT化を進め生産性を高める一方、法規制や金融機関の監視により、ゾンビのように生きながらえている企業の淘汰、市場からの退出を促し産業を集約化していく必要があるとしています。
典型的なL型産業である社会保険労務士
さてGとLの詳しいことは冨山氏の本を読んでもらうとして、わたしの職業である社会保険労務士についても少し考えてみようと思います。
社会保険労務士というのは冨山氏の分類で言えば、典型的なL型産業です。L型産業の特徴である公共性の高い規制業種という意味で国家資格が必要である社労士はドンピシャリですし、相談業務は相談業務で対面型のサービス業でもあります。また、社労士を選ぶ会社は、自社のある地域と同じ地域の社労士を選ぶのが普通で、つまり、顧客の商品選択も限定的です。
ただ、GだろうとLだろうと結局、生き残っていかなければならないのには変わりはないことを考えると、正直、こうした分類を社労士に対して行うこと自体に意味は無いでしょう。Lとわかったからってなにを変えると言うわけでもない(生産性の向上を常に行えているのなら)。
一方で、社労士の顧客の大半を占める中小企業に目を移すとまず、相手がGの世界で主に戦っているのか、それともLの世界で戦っているかでコンサルティングの仕方が変わってくるでしょう(必ずしも中小企業=Lではないことに注意)。
また、そのなかでも大半を占めるL型産業の生き残りを考えると、労働者の生産性の向上というのは、社労士がこれまで以上に考えていかなければいけないテーマとなるはずです。