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労務管理と行動経済学

エア・ドゥの記録改ざんから考えるヒューマンエラーと不正

2016/04/20

今回はエア・ドゥの点検記録の改ざんのお話。

記録改ざん、未点検隠す=エア・ドゥを厳重注意―国交省

飛行機の機体点検記録の改ざんという、一歩間違えば多数の人名にかかわる記録の改ざんということで非難が上がっていますが、「ミスを犯しそれを隠蔽しようとした」という観点から言えば、比較的ありふれた人事・労務の問題です。

ヒューマンエラーと不正

今回、記録の改ざんを行っていた担当者は、過去にも、整備記録の未提出や機体の飛行時間の計算ミスなど、同様のミスを行っていたそうです。

ミスというのはいわゆるヒューマンエラーであり、能力不足や不注意などが原因で起こりますが、ヒューマンエラーを犯した人間の意図に反した結果を引き起こすという意味で不正とは異なります。不正というのは、不正を犯した本人が悪意の意志を持って、ある一定の結果を引き起こすことを言うからです。

本人が犯したくて犯しているわけではないという意味で、ヒューマンエラーは社会的にもある程度許容されています。「人間だからミスぐらいするよ」ってなわけです。しかし、それも度を過ぎれば、ミスを犯した人間が責を負うのは避けられません。

記録の改ざんを行った担当者が「言い出しにくかった」と言っているので、すでに過去に訓戒や減給ぐらいの懲戒処分を受けていたのかもしれません。そうなると、次の処分は諭旨解雇や懲戒解雇が現実的になってきますから、言い出しにくかったのも頷けます。

しかし、ミスの隠蔽はヒューマンエラーではなく「不正」です。つまり、ミスが不正を呼んだわけです。

社労士が推奨する問題社員対策は有効か

先にも述べたとおり、社員がミスを隠ぺいする、というのは残念ながらよくあることです。

また、われわれのような社労士は、そうしたミスばかりする問題社員の対策として、労働者にその都度、書面で注意を与えたり、始末書の提出を求めたりする一方、人事異動や社員の再教育を行い、それでも直らない場合は「訓戒→減給→出勤停止→降格→諭旨解雇・懲戒解雇」といったように徐々に罰を重くしていくという形で懲戒処分を行うようにと会社に対して推奨します。

ただし、これらは問題社員を解雇した際に、その問題社員から不当解雇であると訴えられた場合の「裁判対策」という側面が強いのが実情で、上記のような方法でミスが無くなるかどうかは実はわからない。それどころか、度重なるミスによって何度も処分をくらえば、このままだとクビになる可能性があると労働者側も察するようになるので、今回のような不正が起こりうる要因にすらなってしまう。

裁判対策は大切だし、いざというときに裁判の代理人になれない社労士が裁判を恐れるのはわかりますが、そればかりに気を取られていると、それ自体が不正の温床になってしまうわけです。

ミスによる損失を最小限にする方法

では、どうすればよかったのでしょうか。

まず、ありきたりながら非常に大切なものとして組織風土の問題があります。労働者のミスを上司が責める風土、労働者のミスを全く許さない雰囲気のある会社では、個人の労働者がミスを隠ぺいするインセンティブが働きます。

組織風土を作っているのはそこにいる「人」ですから、ミスを隠ぺいする風土のある企業の問題点とは結局「人」の問題。それを社員教育や社内のシステムとして、いかにミスを隠ぺいすることのインセンティブをなくしていくかが重要なわけです。

また、今回の記事で気になったエア・ドゥ特有の問題として、改ざんを行った担当者が「別の担当者が扱う作業との混同」したという点。つまり、作業を混同してしまうくらい、エア・ドゥ内では業務が複雑化・煩雑化していたと想像できるわけです。

まずはそうした業務を効率化しなければなりません。複雑で煩雑だから間違えるわけです。それに、1人あたりにかかる労働者の負担を減らすこともヒューマンエラーの削減につながります。

また、東海村JCO臨界事故のように、現場作業員が勝手に工程を減らしたりステンレス製のバケツを使うなど、作業工程を勝手に改悪してしまうリスクを考えても、企業にとっては、生産性の向上以外の目的でも業務の効率化が必須であることは間違いないでしょう。

最後に、労働市場の流動化もまたこうしたミスの削減には欠かせないことも付け加えておきましょう。労働者がミスを隠ぺいするのは会社を首にされることを恐れるからです。けれども、労働市場の流動性が高くて、労働条件が極端に変動することなく転職できれば、ミスを隠蔽するという社内的にも社会的にもリスクの高い方法をとってまで会社に残りたいとは思わないでしょう。また、社会全体としても、こうした個人の勝手な不正によって社会的なリスクが上昇することも避けられます。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。