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労務管理と行動経済学

朝日新聞の件を組織と個人の不正の観点から考える

2016/04/20

慰安婦捏造や吉田調書の内容改ざんなどで散々な批判にあっている朝日新聞ですが、その件について少しだけ。

といっても、今の世間の嵐のような批判の尻馬に乗った記事を書くつもりはありませんで、今回触れたいのは個々の案件に絞ったものではない、問題社員対策専門の社労士らしく(って、そんな記事はこのブログ内にほとんどありませんが)、より一般的な組織の不正の問題として、朝日の件を考えていきたいと思っています。

個人の不正と組織の不正のあいだに相関性はない

まず基本的な話として、不正には個人の不正と、組織の不正の2種類があります。

個人の不正というのは、会社のお金を横領したり、タイムカードを改ざんしたりといったもので、不正を行った個人にとっては利益になるものの、その被害を受けた会社や組織にとっては不利益になります。最近で言えばベネッセの個人情報流出事件はこの典型といえるでしょう。

一方の組織の不正というのは、賞味期限切れの食材の使用や、リコール隠し、あるいはサービス残業のような労基法違反を言い、上記の個人の不正と違い、短期的には会社にとって利益となります。ただし、雪印やゼンショーの件でもわかるとおり、それが社会的に明るみになった際のダメージは不正で得た利益など簡単に吹き飛ばします。

なんにせよ、個人の不正と組織の不正とでは、得られる利益が全く異なるわけです。

言い換えれば、個人の不正と組織の不正のあいだには相関性がほとんどないと考えられるわけです。

事実、個人の不正が起こりやすい雰囲気のある職場で組織的な不正が行われるかといえばそんなことはなく、逆に組織的な不正が起こりやすい雰囲気のある職場で個人の不正が行われるかといえばこちらもそうではない、という研究結果も出ています(岡本浩一・今野裕之著 組織健全化のための社会心理学 新曜社

個人と組織の不正の利害が一致する職場

さて、朝日新聞の件に話を戻すと、新聞記者にとっての最も誘惑に駆られる個人の不正はおそらく自分の記事に関する不正でしょう。

話題の植村隆の場合は義母の活動を助けるためでしたが、普通の新聞記者の場合でも、自分の記事をなんとか誌上に載せてほしくて、そういった行為に及んでしまうことは十分考えられます。知り合いの新聞記者の方に聞きましたが、朝日新聞のような大きな新聞社は記者の数も多く、とにかく記事を載せてもらえないそうですからね。

一方、新聞社という業種にとって最も誘惑に駆られる組織的な不正もまた新聞の記事についての不正です。会社にとって直接・間接を問わず利益になる記事を載せたい、というのは新聞社といえど商業組織である以上は当然に持っている感情だからです。

つまり、新聞社という職場は、一般的な職場と異なり、その動機こそ違えど個人の不正と組織の不正のあいだで利害が一致しているというわけです。

ちなみに、このような構図を持つのは、朝日新聞のような新聞社に限りません。STAP細胞の捏造で話題になった理研のような研究所や、厚生労働省元局長・村木厚子氏を有罪に仕立てあげようと証拠改ざんを行った検察組織なども同様に個人の不正と組織の不正の利害が一致しているからです。(研究成果を上げたい、犯人を有罪にしたい)

個人の不正がそのまま組織の不正へ

では、こうした個人と組織の不正の利害が一致する職場では、不正が起こりやすいのでしょうか。

個人と組織の不正の利害が一致して起こる不正の場合、個人が不正を行わなければ組織としての不正に発展することはありえません。また、たとえ個人が不正を行ったとしても組織にチェック機構が備わっていれば同様に不正に発展することもありません。つまり、個人と組織の不正の利害が一致して起こる不正の場合、不正の構造そのものに二重のチェック機能が備わっているというわけです。

なので、個人と組織の不正の利害が一致して起こる不正が、より一般的な個人な不正や組織の不正より起こりやすいとは必ずしもいえないでしょう。

しかし、このような組織の場合、組織によるチェックが全く効かなくなると、個人の不正がそのまま組織の不正となるわけですから、現在の朝日新聞のように次から次へと不祥事が飛び出てくることは当然の至。言い換えれば、朝日新聞という組織では上記の二重のチェックが働かない状況が存在していると推察できるわけです。

なので、わたしたちのようなマスメディアから情報を受け取って生活している一般人は、とりあえず、朝日新聞に限らず新聞という存在そのものがこうした構造を持っているということをきちんと認識しておいたほうがいいでしょう。

個々人のメディアリテラシーの強化に繋がりますし、新聞社と似たような構図を持つ業種からすると反面教師にもなりますしね。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。