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労務問題(時事)

公開処刑や見せしめでブラック企業はなくならないよ、という話

2016/04/20

先週末、ブラック企業大賞なるものが発表されました。ちなみにその授賞式の模様はニコニコ生放送の方で生中継されていたそうです。

多くの人がご察ししているかと思いますが、このブラック企業大賞、「賞」なんて名前がついていますが、その本質はブラック企業の疑いのある企業の悪行とその名前を晒すための公開処刑です。ここでいう公開処刑とはネットスラング的な比喩的な意味ももちろん含まれますが、どちらかというと、本来的な意味合いが強いですね。

歴史的に見られる公開処刑というのは、犯罪者や権力者の意に沿わないものを見せしめのために行われてきました。

そこには犯罪の抑止力効果を狙ったものであると同時に権力者の権力誇示という意味もあったと想像できます。また、古代ローマのコロッセオにしろ、フランスのギロチンにしろ、歴史上の公開処刑の多くは民衆に非常に好まれ、娯楽的な意味合いもありました。

その点、ブラック企業大賞は、企業のブラック化の抑止を目的とし、ネットで観覧する一般人にブラック企業叩きにより参加者の溜飲を下げるという娯楽を提供する点でまさしく公開処刑と呼ぶにふさわしい。さすがに権力者でないものが「権力誇示」はできませんが、「権力者の権力誇示」を「主催者団体の営業」に読み替えると上手く意味が通ると思います。

また、ついでに付け加えておくと、民間人が公開処刑を行っているという点で、このブラック企業大賞は私刑と言えます。

ブラック企業は構造的問題

さて、個人的に疑問なのは、こうした公開処刑がブラック企業の抑止にどれだけつながるのかという話です。

というのも、日本のブラック企業問題というのは、非常に構造的な問題だからです。

この構造的問題の本丸は終身雇用と、それを後押しする解雇を厳しく制限する労働裁判の判例ですが、終身雇用の問題点については、人事コンサルタントの城繁幸氏のこちらの記事に詳しいのでここではあえて解説しません。ただ、パワハラや社内いじめの問題も、実は終身雇用が深く関係していることについては、少し触れておきましょう。

終身雇用が前提となると、社内には同じ人がいつまでも居続けることになります。つまり、ほとんどの会社というのは、非常に関係流動性が低下している状況にあると言えます。関係流動性とは「いやな人間関係、社会関係があったらそれを離脱して他の集団へ加入する容易さ、そのような関係変化の起こりやすさを示す概念」で、それが低いコミュニティでは、いじめやパワハラが起こりやすいと言われています。そのため、終身雇用と、ブラック企業の条件の一つであるパワハラは決して無関係とは言えないのです。

主催者団体の営業イベント

公開処刑による抑止力に話を戻せば、公開処刑による抑止力とは、簡単に言ってしまえば「ああはなりたくないから、〇〇するのは止めよう」という人の気持ちに訴えるということです。しかし、企業がブラック化せざるを得ない雇用慣習と法規範が蔓延する現在の日本で、気持ちだけでブラック化が避けられるのなら最初から問題はないわけです。

それに公開処刑、公開処刑とここまで連呼してきましたが、比喩的な意味でない企業を潰すという意味での処刑はできない(間接的にはわかりませんが)ブラック企業大賞には、見せしめ効果はあっても処刑による抑止力は欠けています。

なので、ブラック企業大賞によって日本企業が変わるというのはあまり考えられなくて、このイベントがブラック企業問題の解決につながると思っている人がいたとしたら、それは大間違いだと思った方がいいというわけです。

むしろ、主催者団体のメインの顧客である労働者に訴えかけることが目的なのは明白であり、ベストジーニストなどのように有名芸能人を集めることなく上手い娯楽を提供してその目的を達成するあたり、主催者の営業能力はなかなか素晴らしい物があると認めざるを得ません。

 

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。