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労務問題(時事)

日本で解雇の金銭解決が導入されないのは大企業正社員の既得権益を守るため

2016/04/20

不当な解雇で労使間で紛争(当事者同士の話し合いが決裂した場合)になった際、その解決方法が欧米等の先進国では「金銭OR復職」(もしくは「金銭のみ」)となっている一方、日本の解雇裁判では「金銭AND復職」という形でしか解決できないことを前回述べました

金銭と復職の価値がつりあわなければ欧米のような解決方法はありえないので、単純計算で日本での解雇コストは欧米の2倍になります。つまり、それだけ日本での解雇のハードルは高く、良い言い方をすれば、それだけ日本の労働者は解雇のリスクから守られている言えます。

ただし、それはあくまで大企業の正社員の話です。

よく政府べったりの学者なんかは、日本での解雇は諸外国と比較して決して難しくない、なんて大嘘をつきますが、実際には非正規雇用の解雇が容易なのと、同族の中小企業ではそのへんのことをお構いなしに労働者をタダ同然で解雇しているからで、それらの平均を取ると、確かに諸外国と大差ないとなるだけです。こうした正規と非正規の格差についてはOECD(経済協力開発機構)からも是正勧告が出ています。

とある大学教授のお話

実は、先月、とある勉強会で、労働法改正などにも携わっている労働法を専門とする大学教授がいらして、労働法改正の要点や、労働法改正にまつわる様々な裏話を聞く機会があり、その中で解雇の金銭解決の話も出ました。

その大学教授の話をまとめると

「日本では、大企業と中小企業で給与格差が大きい上、退職金があるかどうかも企業によって異なる。よって、金銭解決を行うにも統一的な額を決定することは困難であり、現在は解雇の金銭解決ではなく、解雇紛争の新たな解決を方法を模索している」

といった感じでした。

要するに、大企業と中小企業の給与格差が大きいため、金銭解決のための基準額を大きくし過ぎると、今までタダ同然で労働者を解雇していた中小企業には辛いし、だからといって、基準額を小さくし過ぎると、今度は大企業の労働者が不満を持つ、だから金銭解決の基準額を決めることは困難であり、基準額を決められないんだから金銭解決の導入もできないという話です。

金銭解決が導入されないのは既得権益を守るため

つまり、解雇の金銭解決が導入されないのは、大企業の労働者の既得権益を守るため、というわけです。

現実的に考えれば解雇の金銭解決が導入されれば、一般的な大企業の給与や退職金より額が下がるのは間違いないわけですから。

いやいや、お前はなにを聞いていたんだ、お前の主な顧客である中小企業の話はどこにいった、と、言われそうですが、タダ同然で解雇しているとはいえ、中小企業の不当解雇には今でも潜在的に訴訟リスクがあり、「金銭AND復職」の可能性はいつでもあります。

それにお金を払ってでもクビにしたいどうしようもない労働者がいるが、訴訟リスクやユニオンが怒鳴りこんでくることを恐れて、労働者を解雇できない中小企業というのは少なくありません。というか、まともな社労士が顧問にいる会社なら解雇がいかに恐ろしいかわかっている場合が普通で、わたしも何度も自分の顧問先の解雇を止めては恨まれてきました。

そうした会社からすれば、法律である程度、解決の基準となる額がある程度予見できて、解雇した労働者が復職してくることもない金銭解決は、額によって変動するとはいえ一定の魅力のある解決法と言えます。

そもそも、労働者の保護の観点から言えば、金銭解決を導入しないというのは、中小企業の労働者がタダ同然で解雇することを放置するということですが、それはいいんですかね? その一方で、大企業の労働者は解雇コストに守られているのに。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。