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労務問題(時事)

ケータハムF1チームの不当解雇から見る、イギリスと日本の解雇ルール比較

2016/04/20

ケータハムF1チームは、身売りによってオーナーが変わった際、数十人の従業員を解雇しました。

ケータハムF1チームはもともと資金難であり、ドライバーにペイドライバー(資金持ち込みドライバー)を使用していたことからも、それはF1に関係するものなら誰もが知っていることでした。

なので、ケータハムの新オーナーであるコリン・コレスが、就任早々に従業員のリストラを開始したことには誰も驚きはしなかったのですが、コリン・コレスにとって誤算だったのは、解雇された従業員が法的な手段に打って出たことでした。

ケータハムの元従業員ら、チームへの法的手続き開始と発表

両者の争いがどのような形で決着するかはわかりません。これについては司法の判断が出るのを待つしかないでしょう。

ただ、この件を受けて、ちょっと興味があったのでイギリスの解雇ルールを少し調べてみましたので、そのついでに、イギリスの解雇ルールと日本の解雇ルールを比較してみよう、というのが今回の記事の趣旨です。

イギリスでは金銭解決が主流

日本でもここ数年話題となる、解雇の金銭解決。これはお金を払えば解雇できるよ、という意味では、広義ではともかく、厳密には必ずしもそうではありません。

労働契約に関する法律実務の外国との比較 解雇に係る紛争処理の実情

上記の資料にもある通り、解雇の際の紛争で金銭解決を行うことが主流の欧州ですが、金銭解決を行うのはあくまで不当な解雇があった場合です。つまり、解雇の金銭解決とは不当な解雇による紛争の解決方法というわけです。
イギリスの場合、不当な解雇があった場合、元の会社に復職させるのが原則とされていますが、実際には金銭解決されることがほとんどのようです。復職には労働者の希望が必要なのですが、自分をクビにした会社に戻りたいなんて普通は思わないので当然といえば当然でしょう。ケータハムの件も元従業員側の主張が認められればおそらく金銭解決となるでしょう(そんなお金があるかは別にして)。
ちなみに金銭解決の際の額は、その労働者の給与(イギリスなので週給が基準)と勤続年数を元に決められ、上限は13500ポンド、日本円で約200万円ほど。ただし、不当解雇によって被った損害賠償はこれと別にかかり、こちらの上限は最大で日本円換算で約1300万円もしくは52週分の給与のどちらか低い額。

日本では復職が主流?

現状、日本では不当解雇についての紛争で金銭解決は認められていません。なので、不当解雇であると認められると労働者は必ず元の会社に復職することになります。

しかし、実際の解雇紛争の現場では、労働者は必ずしも復職しないばかりか(ちなみに、復職したいと言わないと、裁判を起こせないので、口では復職したいといいます)、イギリス以上の多額の金銭まで手にする場合が往々にしてあります。

解雇とは労働契約を会社から打ち切ることですが、その解雇が不当と裁判で認められると、その解雇は無効となり、当然、解雇されてから解雇無効の判断が出るまでの間、解雇された労働者はその会社の従業員であったという判断がされます。

会社の従業員であった、労働契約があったということはつまり、その間の給与を会社は支払わなければなりません。つまり、裁判の期間が伸びれば伸びるほど、不当に解雇された労働者への会社の支払額は増えることになります。これに賃金支払の仮処分まで重なると、解雇にかかるコストは2000万円に達することもあります。

金銭解決なら、お金を支払えばそれで雇用関係も終了ですが、日本の場合は、解雇したはずの労働者が会社に戻ってきて、その後もコストが発生し続けます。

日英での解雇ルールの決定的な違い

つまり、解雇紛争の解決方法が、イギリスは「復職OR金銭」なのに比べて、日本では「復職AND金銭」となっている、これが両者の決定的な違いです。そして、欧米などの先進国で主流なのはイギリスのような方式です。

労働紛争解決システムについて

日本の解雇にかかるハードルが非常に高いと言われるのはこのためです。とはいえ、裁判に訴えることが文化的に少ない日本では、労働者が泣き寝入ることも多く、どこの企業もこれだけのコストを解雇でかけているかといえばそうではなく、無料で解雇していることも少なくありません。そうでなければ、ワンマン社長が取り仕切る中小零細企業はより多く解雇倒産を起こしているはずです。ただし、解雇には時効がないので訴訟リスクは永久に残り続けますが。

次回に続きます。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。