ケータハムF1チームは、身売りによってオーナーが変わった際、数十人の従業員を解雇しました。
ケータハムF1チームはもともと資金難であり、ドライバーにペイドライバー(資金持ち込みドライバー)を使用していたことからも、それはF1に関係するものなら誰もが知っていることでした。
なので、ケータハムの新オーナーであるコリン・コレスが、就任早々に従業員のリストラを開始したことには誰も驚きはしなかったのですが、コリン・コレスにとって誤算だったのは、解雇された従業員が法的な手段に打って出たことでした。
両者の争いがどのような形で決着するかはわかりません。これについては司法の判断が出るのを待つしかないでしょう。
ただ、この件を受けて、ちょっと興味があったのでイギリスの解雇ルールを少し調べてみましたので、そのついでに、イギリスの解雇ルールと日本の解雇ルールを比較してみよう、というのが今回の記事の趣旨です。
イギリスでは金銭解決が主流
日本でもここ数年話題となる、解雇の金銭解決。これはお金を払えば解雇できるよ、という意味では、広義ではともかく、厳密には必ずしもそうではありません。
労働契約に関する法律実務の外国との比較 解雇に係る紛争処理の実情
日本では復職が主流?
しかし、実際の解雇紛争の現場では、労働者は必ずしも復職しないばかりか(ちなみに、復職したいと言わないと、裁判を起こせないので、口では復職したいといいます)、イギリス以上の多額の金銭まで手にする場合が往々にしてあります。
解雇とは労働契約を会社から打ち切ることですが、その解雇が不当と裁判で認められると、その解雇は無効となり、当然、解雇されてから解雇無効の判断が出るまでの間、解雇された労働者はその会社の従業員であったという判断がされます。
会社の従業員であった、労働契約があったということはつまり、その間の給与を会社は支払わなければなりません。つまり、裁判の期間が伸びれば伸びるほど、不当に解雇された労働者への会社の支払額は増えることになります。これに賃金支払の仮処分まで重なると、解雇にかかるコストは2000万円に達することもあります。
金銭解決なら、お金を支払えばそれで雇用関係も終了ですが、日本の場合は、解雇したはずの労働者が会社に戻ってきて、その後もコストが発生し続けます。
日英での解雇ルールの決定的な違い
つまり、解雇紛争の解決方法が、イギリスは「復職OR金銭」なのに比べて、日本では「復職AND金銭」となっている、これが両者の決定的な違いです。そして、欧米などの先進国で主流なのはイギリスのような方式です。
日本の解雇にかかるハードルが非常に高いと言われるのはこのためです。とはいえ、裁判に訴えることが文化的に少ない日本では、労働者が泣き寝入ることも多く、どこの企業もこれだけのコストを解雇でかけているかといえばそうではなく、無料で解雇していることも少なくありません。そうでなければ、ワンマン社長が取り仕切る中小零細企業はより多く解雇倒産を起こしているはずです。ただし、解雇には時効がないので訴訟リスクは永久に残り続けますが。