社会保険労務士

社労士のためのベーシックインカム講座

2017年1月24日

こちらの記事がTwitterのトレンドになっていました。

なぜ働かなくてもお金がもらえる「ベーシックインカム」を導入すべきなのか

ベーシックインカムとは、政府が全国民に無条件で生活に必要な最低限の給付を行う制度です。

まだ、先進国での導入実績はないものの、近年では北欧やオランダなどでその導入が検討されていて、その行く末に世界が注目しています。

このベーシックインカムという制度に馴染みのない方からすると、おそらく以下の2つのことが気になるかと思います。

  • 「ベーシックインカムなんて制度が始まったら誰も働かなくなるのでは?」
  • 「その財源はどうするのか?」

です。

 

ベーシックインカムは労働意欲を奪うのか?

まず、「ベーシックインカムなんて制度が始まったら誰も働かなくなるのでは?」という疑問に対して、ベーシックインカム推進論者の意見は、そんなことはない、とされています。

なぜなら、ベーシックインカムで保障されるのはあくまで最低限であり、労働した方がより豊かな生活を送れるから。この点が社会主義とは異なります。

マズローの欲求5段階説で考えてみても、ベーシックインカムで満たされるのはあくまで一番下の生理的欲求に過ぎないので、その先を求める人は多いだろうと、考えられます。

また、「生活のために仕方なく」という仕事に就かなくて済むのも利点とされています。

では、「財源」はどうなのかというと、ここからがタイトルに「社労士のための」と着いている理由です(笑)。

 

ベーシックインカムの目的

ベーシックインカムの1つ目の目的は言うまでもなく、国民の最低限の生活の保障です。

そのために最低限の給付を一律に行う、ここまではいいでしょう。

もう一つ目的があって、それは社会保障の簡素化です。

どういうことかというと、年金や雇用保険、生活保護といった複雑極まりない社会保障を全部辞めて、社会保障はベーシックインカム1つに集約することで、行政のランニングコストを下げる、ということです。

今の社会保障というのは複雑だから行政コストも高いし、我々も手間な上、知識差によって有利不利も出ます。

一方、ベーシックインカムであれば、1人にいくらどうやって払うかだけ決めるだけなので、面倒な手続き申請その他はほぼほぼ不要となるし、それを処理する役所も簡素で不要となるわけです。

 

ベーシックインカムは(マイナンバーより確実に)社労士業務を奪う

さて、タイトルに「社労士のための」と着いている理由がわかりましたか(笑)?

そう、ベーシックインカムが導入されれば、雇用保険や社会保険といった手続き業務中心の社労士は不要となるわけです。

雇用保険や社会保険の手続きが複雑だから、そうした手続きを代行する社労士が必要とされているわけですが、雇用保険や社会保険自体がなくなれば、そもそも必要性皆無なわけですからね。

もちろん、日本でベーシックインカムが導入されるのは何年も先でしょうし、今はまだ実例が少ないので導入される可能性もゼロとは言い切れませんが、先行して行うであろう他国の結果を見て「この制度はない」となる可能性も否定できません。

それに、ベーシックインカムの前にマイナンバーが手続き業務をなくしているかもしれません。

 

ただ、騒いでいた割にはマイナンバーが思いのほか、不発に終わっているので、もしかしたらこのまま行くのかも、と思っている人も、実はこういうルート(ベーシックインカム)もあるんだよということを示したくて、今回の記事を書きました。

わたしは、マイナンバールートでもベーシックインカムルートでも、全国民の利便性が高まるのなら社労士の手続き業務はなくなってもいいと思っているので、こういう事を書くのに何の抵抗もありませんし。

 

今日のあとがき

今回の記事では、いいことずくめのようにベーシックインカムのことを書きましたが、実はわたし自身は意外と懐疑的です。

というのも、こういうのって実際に制度化されてみないと、その中で生きる人間がどのような行動を取るかってわからないので。

冒頭で紹介した記事には実際に導入したアフリカの村の話も紹介されていますが、母数が大きくなったときにどうなのか、また、すでに裕福な国で行うどうなのか、というところはまだまだ未知数ですし。

あの、理屈ではなく感情を優先すると、導入されると嬉しいなあ、という気持ちはあるんですが(笑)。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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