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労務問題(時事)

推定無罪が成立しない日本では、労働者のプライベートな不祥事で負う会社のリスクが大きすぎる件

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なんとも言い難いニュースが有りました。

「停職6カ月は重すぎる」 コンビニ店員への〝わいせつな行為〟で加古川市職員処分、神戸地裁が取り消し判決

加古川市の職員が、プライベートでコンビニ店員に猥褻な行為を繰り返していたの受け、当該職員に対して市が停職6カ月の処分を下したものの、地裁は「重すぎる」としてその処分を取消した、というのが事件の概要。

労働者のプライベートなことは本来、会社が預かり知るところではなく、例え、何かしらの不祥事を起こしたとしても、会社が懲戒処分するというのは、よっぽど会社が損害を被らない限り難しい、というのが過去の判例でした。

今回の神戸地裁の判決もそれを踏まえれば妥当と言えなくもありません。

気になるのは、今回の処分が市民からの批判をかわすためであり、そうしたことは「本来考慮すべきでないことが処分の際に考慮されたのではないかという疑問がある」とされている点。

 

炎上で労働者のプライベートなことでも会社が損害を受ける可能性がある

今回は役所がその役所の公務員を処分する、という構図なのでわかりづらいですが、例えば、民間企業の労働者が不祥事を起こして、それにより企業に悪い噂が立ったら、消費者や取引先が離れて経営が苦しくなる可能性があります。

特に、現代はSNSやネットの発達により、情報があっという間に伝搬し、最悪、炎上に至る可能性もある。

そうした時代において、まわりからの「批判」というのは損害をもたらすものであり、考慮しないほうが無理といえるのではないでしょうか。

 

会社だけ「推定無罪の原則」を守るリスク

そもそも、今回の処分は「新聞が報道してから一転して処分した」らしいです。

新聞の報道がどういった報道だったのかはわかりませんが、ただ、言えるのは、傾向として、大手マスメディアは刑事事件に関して「判決」よりも「逮捕時」を大きく取り上げる事が多いということ。

「逮捕時」というのは当然、判決が出る前ですから当該労働者は「推定無罪の原則」により、倫理上は無罪の人間として扱うことが求められます。

なので、犯罪行為を理由に懲戒処分をする場合、本来は判決がでてから、というのが妥当ということになります。

しかし、「推定無罪の原則」を平然と無視し「逮捕時」に熱狂するマスメディアの性質上、企業として損害を受けやすいのは「逮捕時」。

必然、企業からすると「逮捕時」に何らかの対応を取らないと傷口を広げることになりかねない、という状況にあるわけです。

メディアも世間も「推定無罪の原則」なんて気にもかけてないのに、会社だけ気にしてたら大損、となれば多少リスクがあっても懲戒処分せざる得ないのが現実でしょう。

 

得をするのは犯罪者だけ

実務上、逮捕された労働者はその会社に居づらくなることもあって辞めていくことがほとんです。

ただ、今回のように居直られると、会社としては労働者のプライベートなことに対して、会社が損害を受けた上で処分もできない、ということが起きます。

こうした構造は会社にとって不幸なのはもちろんのこと、「推定無罪の原則」が有名無実化していると労働者側からしても「誤認逮捕」された場合に、その真偽にかかわらず懲戒処分される可能性が高まります。

その一方で、今回のように猥褻な行為を繰り返していたにも関わらず、処分を取り消された犯罪者が得をする、というのはなんともアンフェアではないでしょうか。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。