今日でひとまず介護休業制度については一段落です。
過去2回に渡り解説してきた介護休業と介護休業給付金は、家族の介護のための休業が取得でき、その休業中は給付金が出る、という関係があり、まあ、言ってみればセットみたいなものでした。
で、今日解説するのは、(最大93日の)介護休業とは別に、介護と仕事を両立させるため、育児介護休業法で定められているいくつかの制度です。
この記事の目次
① 所定外労働の制限
要介護状態にある家族を介護する労働者は、会社に申し出ることにより、会社はその労働者に対し所定労働時間を超えて労動させることができなくなります。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合や、以下のどちらかに当てはまるもので、労使協定の締結により除外されているものはこの限りではありません。
- 入社1年未満
- 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
(労使間で労使協定が結ばれていない場合、会社は上記のものからの申し出を拒むことはできない)
請求できる期間は、1回につき、1か月以上1年以内。
また、労働者は制限の開始予定日と終了予定日を会社に伝える必要があります。
「所定外」労働の制限のため、法定の労動時間を超える残業はもちろんのこと、所定労働時間が法定労働時間より短い場合に生まれる「所定外法定内時間(※)」についても労働させることはできません。
※ 例えば、所定労働時間が7時間の事業所の場合、所定内労働7時間を終えた後から法定労働時間の8時間に達するまでの1時間に労働した場合は所定外法定内時間となる。所定外法定内時間は時間外割増率の対象とならない。
② 時間外労働の制限
要介護状態にある家族を介護する労働者は、会社に申し出ることにより、1カ月の時間外労働を24時間まで、1年の時間外労働を150時間までと制限をかけることができます。
ここでいう時間外労働とは法定の時間外労働を言います。
https://www.sharoushi-nagoya-hk.com/roudoujikan/q10
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合と上の赤枠の人たち(労使協定は不要)は対象外。
「所定外労働の制限」は法定時間外も含めて残業は一切しない(会社からすると「させられない」)という制限ですが、こちらは上で述べた時間までなら残業させることもできる、という制度です。
こちらについても、請求できる期間は、1回につき、1か月以上1年以内で、制限の開始予定日と終了予定日を会社に伝える必要があります。
③ 深夜業の制限
要介護状態にある家族を介護する労働者は、会社に申し出ることにより、午後10時から午前5時までの労働を制限してもらうことができます。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は除きます(今日3回目)。
また、労使協定の有無にかかわらず、以下の条件に当てはまる人についてはこの申し出を行うことはできません。
- 日雇の従業員(ちなみに、基本的に育児介護休業のどの制度でも、日雇労働者は対象外)
- 入社1年未満の従業員
- 16歳以上の同居の家族がいるもの(深夜に就業しておらず、介護可能な心身状況で、産前産後の休暇中でないことが条件)
- 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
- 所定労働時間の全部が深夜にある従業員
請求できる期間は1カ月以上6カ月以内の期間に限られます。また、制限の開始予定日と終了予定日を会社に伝える必要があります。
④ 所定労働時間の短縮(短時間勤務)
現行(~平成28年12月)の介護短時間勤務
来年1月の法改正で大きく変わるのがこの所定労働時間の短縮措置です。
短時間勤務制度とは以下のいずれかを言い、どの制度を導入するかは会社次第です。
- 短時間勤務の制度【1日の所定労働時間を短縮する制度/週又は月の所定労働時間を短縮する制度/週又は月の所定労働日数を短縮する制度/労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認める制度】
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
- 労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度
問題は、現行では所定労働時間の短縮措置を会社に申し出ると、申し出た期間分、介護休業の日数が減ることになっている点。
つまり、介護休業の日数は最大93日ですが、例えば、短時間勤務を40日間した場合、介護休業できる日数は53日に減ってしまうわけです。
現行法では、例え、日数が残っていても介護休業を途中でやめてしまうと、基本的にはもう一度取得する、ということができませんから、その分を短時間勤務に、というふうにしか正直、使いようのない制度でした。
法改正後(平成29年1月~)の介護短時間勤務
来年の法改正では短時間勤務の内容はそのままに、介護休業と介護短時間勤務は切り離されます。
よって、介護休業で93日間すべての休業を使い切ったとしても、短時間勤務制度の利用は可能です。
利用できる期間や回数は会社によって異なるものの「連続する◯年間に○回」という定めたかをする必要があり、◯の中の数字は「3年間~無制限」の期間で「2回~無制限」の回数まで利用できるように定める必要があります。
なので、最低でも「3年間に2回」はこの制度を利用できることになります。
1回あたりの期間の上限や下限については、特に法の定めはありません。
労使協定がある場合、上の赤枠の方たちはこの制度の対象外となりますが、こちらは「事業の正常な運営を妨げる場合」に拒否できる、という法の定めはありません。
⑤ 介護休暇
要介護状態にある家族を介護する労働者は、当該家族が1人の場合は1年間に5日、2人以上の場合は1年間に10日を限度に、介護休暇を取得することができます。
介護休暇は1日単位だけでなく、来年1月からは半日単位の取得も可能となります。
ただし、労使協定で除外されている場合、以下の方々は介護休暇を取得できません(勤続年数だけ、上のとほんの少しだけ違います)。
- 入社6カ月未満
- 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
(労使間で労使協定が結ばれていない場合、会社は上記のものからの申し出を拒むことはできない)
介護休暇についても「事業の正常な運営を妨げる場合」であっても、会社は拒否できません。
また、所定労働時間が4時間以下のものや、半日単位で取得することが困難と認められる業務につくもの(交代制勤務や客室乗務員のように長時間の移動を要する業務)については、来年1月以降、半日単位の取得が可能になったとしても、半日単位の取得はできず、1日単位でしか取得はできません。
以上です。
どれも、一般的な知名度は介護休業以上に低いのが現状ですが、家族の介護と仕事を両立させるのに役立つ制度ばかりなので、ご家族の万が一のときは利用を検討すべきでしょう。
また、会社としても、こうした制度を規則等で整えるだけでなく、利用者が出た際にきちんとフォローできるような体制を整えるべきでしょう。