育児休業・介護休業

約8割の人が知らない介護休業制度のうちの「介護休業給付金」を法改正も含めて解説

2016年11月10日

昨日に引き続き介護休業の解説。

介護休業というと育児介護休業法が根拠法となるわけですが、今日解説する介護休業給付金は雇用保険の制度となります。

介護休業給付金については過去に中日新聞の連載でも解説してますが、こちらは文字数の制限があったので、今日はもうちょっと詳しく解説していきたいと思います。

 

介護休業給付金とは

介護休業給付金とは、

雇用保険の被保険者が、対象家族を介護するための休業をした場合に支給される給付金

のことです。

基本的には、昨日解説した介護休業をしている人がもらえる給付金と解釈していただければよいのですが、注意しないといけないのは、支給を受けるには雇用保険の被保険者(※)である必要があること。

なので、例えば、雇用期間が1年以上あって、週の所定労働日数が3日以上ある場合で、週の所定労働時間が20時間未満という人がいる場合、介護休業を取得する要件は満たしても、雇用保険の被保険者とはなれないので、介護休業給付金はもらえないということになります。

また、昨日の介護休業と異なり、法律上は「要介護状態の家族」の介護が要件となっていませんが、実務上は「要介護状態の家族」の介護が支給の要件としているようです。(厚生労働省の業務取扱要項より参照)

※ 高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く。ただし、平成29年1月より、高年齢継続被保険者は廃止され高年齢被保険者なるが、高年齢被保険者は支給対象。(つまり、平成29年1月以降は65歳以上の雇用保険の被保険者でも、介護休業給付金の支給を受けられる)

 

介護休業給付金の支給要件

介護休業給付金の支給を受けるには、「雇用保険の被保険者」で「家族の介護のために休業する」他にも条件があります。

それは、休業前に「雇用保険の被保険者であった期間」「介護休業をした日前2年間に通算で12カ月以上」あること。

ただし、1カ月とカウントされるには「賃金支払基礎日数(労働日数)が11日以上」必要となります。

また、休業開始前2年間に疾病、負傷、出産、事業場の休業等により30日以上賃金支払が受けられなかった場合は、その日数を2年に加算できます(加算できる上限は2年)。

 

介護給付金の支給額

介護休業給付金の支給額は、

「休業開始時賃金日額」×「支給日数」×「給付率」

で決まります。

それぞれの語句の解説は以下の通り。

 

休業開始時賃金日額

「休業開始時賃金日額」とは、介護休業開始前6カ月(※)の賃金総額(賞与は除く)を180で割ったもの。つまり、過去6カ月の労働者の賃金を日割りしたものです。

ただし、上限があり、年齢にかかわらず45歳以上60歳未満の賃金日額の上限が適用されます(平成28年8月から平成29年7月までは15550円)。

※ 賃金支払基礎日数が11日未満の月がある場合は、その月を除いて、直近で11日以上ある月で計算する。例えば、4月~9月の6ヶ月間で、5月と6月が11日未満の場合で、2月と3月が11日以上の場合はそちらを基にする。

 

支給日数

「支給日数」とは休業した日数のことですが、必ずしも暦日で数えない点に注意。

というのも、休業が1カ月を超える場合は、1カ月の部分は30日と数えます。

例えば、Aという月の10日から、翌月のBという月の9日まで、というのは月単位で見ると何月と何月であっても「1カ月」ですが、日数で見ると、31日のときもあれば28日のときもありますよね。

しかし、介護休業給付金の支給の際は、歴日数に関係なくこれを「30日」と見るわけです。

ただし、端数の部分は歴日数で数えます。

例えば「7月11日から9月20日までの72日間」介護休業した場合、

  • 7月11日~8月10日 = 1カ月(歴日数31日) → 30日
  • 8月11日~9月10日 = 1カ月(歴日数31日) → 30日
  • 9月11日~9月20日 = 10日 = 10日

となり、支給日数は「30日+30日+10日=70日」となります。

なんだか損な気がしないでもないですが、そもそも介護休業給付金は休日であってももらえるものなので、それだけで十分得をしているのではと思います。

 

給付率

今年の8月より、当面の間介護休業給付金の給付率は67%に引き上げられました。

この給付率は、一応「当分の間」ということになっていて、本来の給付率は40%ということになっていますが、下がることはないでしょう。

 

分割取得時の介護休業給付金

来年1月の法改正より、介護休業が最大で3回に分けて取得が可能になりますが、介護休業給付金も同様に3回に分けての給付が可能となります。

分割で取得する際、2回目以降の「雇用保険の被保険者であった期間」は初回の期間で見るため、初回で支給を受けられ場合、基本的には2回目と3回目のこの要件を基本満たしていることになり、支給を受けられます。

 

以上です。

昨日の記事のまとめと同じですが、知ってると知ってないとでは、突然の不幸に対する心構えが変わってくると思うので、太字の部分だけでも覚えて帰っていただければなと思います。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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