法改正

約8割の人が知らない介護休業制度を来年の法改正もふくめて解説

2016年11月9日

オリックス・リビング株式会社が行った「介護に関する意識調査」によると、介護休業制度について「よく知らない」「聞いたことはあるが、内容まではわからない」」という人が全体の82.5%を占めているそうです。

介護に関する意識調査(リンク先PDF 参照:オリックス・リビング株式会社)

つまり、介護離職が問題化する一方で、ほとんどの人は介護休業制度についてよく知らないわけですね。

なので、今回は介護休業制度について解説します。

ちょうど、来年1月より法改正もあるので、そのへんも踏まえながら解説していきたいと思います。

 

介護休業制度は大きく分けて3つ

まず、介護休業制度を大きく分けると3つの制度に分けることができます。

  1. 介護休業(育児介護休業法)
  2. 介護休業給付金(雇用保険法)
  3. 介護を行う労働者の労働時間等を配慮する制度(育児介護休業法)

この大前提を踏まえないと、介護休業は必要以上に小難しい話になります。

今回は1の介護休業について解説していきたいと思います。

 

介護休業の定義

育児介護休業法でいう介護休業とは、

 

労働者が要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業

 

とされています。要介護状態とは「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」とされており、判断基準は以下の通りとなっています。

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参照:【平成29年1月1日施行対応】育児・介護休業法のあらまし(厚生労働省)

また、対象家族は誰かというと、これも以下の通り。

  1. 配偶者(事実婚を含む)
  2. 父母、
  3. 配偶者の父母
  4. 同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫

5の「同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫」については、来年1月の法改正で「同居し、かつ、扶養している」という条件がなくなる予定です。

 

介護休業を取得できる労働者

労働者であれば、要介護状態にある対象家族を介護する場合、日々雇い入れる労働者を除き、基本的に介護休業を取得することができます。

しかし、会社と労働者のあいだで労使協定を結んでいる場合、以下のものは介護休業の対象となりません。

  • 雇用期間が1年未満
  • 93日以内に雇用期間が終了する
  • 1週間の所定労働日数が2日以下

なので、会社が法律上の範囲よりも、対象となる労働者の範囲を大きくしている場合や、労使協定が結ばれていない場合を除き、上記の人たちは介護休業を取得することはできません。

また、有期雇用労働者に関しては労使協定の有無にかかわらず、

  • 雇用契約期間が1年以上で、
  • 介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる(休業終了後(93日を経過した日)から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)

労働者でないと、介護休業は取得できません。

こちらも法改正で()内の「休業終了後から1年を経過する日まで」の部分が「休業終了後から6ヶ月を経過する日まで」になり、有期雇用労働者が介護休業を取りやすいように変わります。

 

介護休業を取得できる期間と回数

介護休業を取得できる期間は最大で93日間です。

短いと思う人もいるかもしれませんが、介護休業は家族を介護するための休業ではなく「介護に関する長期的方針を決めるための期間」であり、それが決まるまでのあいだ労働者自身が家族を介護するための休業、という制度となっています。

現行の制度では原則「対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに1回」しか、介護休業を取得できず、1回の休業で93日間取得しないと、期間が余っていてもその後、介護休業を取得することは原則できません。

これが来年1月の法改正で変更され、「対象家族1人につき、最大3回まで」介護休業を取得することができます。

ただし、介護休業を取得できる期間の最大は93日間と変わっていないので、一括だけでなく2分割や3分割で介護休業を取得できるようになったと考えることができます。

1回目、2回目、3回目をいつ取得するかは労働者の自由なので、中には1回目を取得して数年後に2回目を取得する、ということも考えられます。

期間が空くと人事労務担当者が変わっている場合もありえますので、企業としては、このあたりの管理をきちんとしておく必要があるでしょう。

 

介護休業の手続き

労働者が会社に対して介護休業を取得する際の手続きについても、育児介護休業法では細かい部分が決まっていて、法定されている介護休業の手続きは以下のとおりです。

  • 休業開始予定日の2週間前までに、書面等で事業主に申出る必要がある
  • 1回の休業につき1回だけ休業を終了する日を繰下げ変更し、介護休業の期間を延長することができる
  • 2回連続して介護休業の申出を撤回した場合には、それ以降の介護休業の申出について、事業主は拒むことができる

もちろん、会社内の手続きの話なので、ある程度、会社ごとのやり方というのは可能ですが、その場合も法定で定める要件以下の手続きはダメ、ということです・

例えば、介護休業を取得する際は「予定日の1カ月前までに」という定めは無効となります。

 

以上です。

いつ自分や家族に不幸が降りかかるか、というのは誰にもわからないことですが、もし突然ご家族で介護が必要となる、ということが遭った場合に、介護休業制度を大まかでも知っているか、全く知らないかでは、その後、対応や精神的な負担は変わってくると思うので、あまり知らない、という方は、今回の記事で太字で強調した部分だけでも覚えて帰っていただければないと思います。

次回は、介護休業中に支給される介護休業給付金について。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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