電通についに強制捜査が入りました。
調査によって法違反を指摘し、企業の自浄を促すのが第一目的の労働行政ではかなり異例なことです。
とはいえ、大きな会社なので規則の制定などの書類面での漏れがそれほどあるとは思えません。問題となるのは規則や契約と、実態との乖離でしょう。
どうなるのか注目したいところですが、どれほどの情報を我々が得られるかは、メディアがどれくらい報道してくれるのかにもよりますね。
さて、電通の過労死事件というのは、新入社員に長時間労働をさせたことや、上司によるパワハラまがいの発言等が問題になっているわけですが、そもそも社員に長時間労働させる、ということについて、会社はどのようなリスクがあるのでしょうか。
この記事の目次
労働時間に上限はないがリスクはある
ご存じの方も多いかもしれませんが、日本の労動時間には実質的な上限がありません。
上限がないため「長時間労働させていること」を理由に監督署は会社を違法とすることはできません。
では、実質的な上限がないからといって、会社は労働者をいくらでも長時間労働させていいのかといえばそういうわけでもありません。
労働者を長時間労働させることには、以下のようなリスクがあります。
① 36協定違反
日本の労働時間に上限がない理由
労働者を長時間労働させることについて実質的な上限がないと言ったことと矛盾するようですが、長時間労働させると監督署に取り締まられる可能性が高まります。
まず、労働者に法定の労働時間を超えて労働させる場合、36協定を結んだ上で、その上限を会社で決める必要があります。
その上限を限度時間といい、以下のように決まっているのですが、
期間区分 | 限度時間(原則) | 限度時間(3ヶ月超えの1年単位変形労働時間制) |
1週間 | 15時間 | 14時間 |
2週間 | 27時間 | 25時間 |
4週間 | 43時間 | 40時間 |
1カ月 | 45時間 | 42時間 |
2カ月 | 81時間 | 75時間 |
3カ月 | 120時間 | 110時間 |
1年 | 360時間 | 320時間 |
上記の限度時間内でも仕事が終わらないほどの業務量がある場合で、36協定に「特別条項」がある場合、1年のうちの通算6カ月まで、限度時間を超えて働かせてもいいことになっています。
この「特別条項」を利用する際の労働時間の上限は会社で決めることができ、法律や国が定める上限はありません。
つまり、この「特別条項」を利用すれば1年のうちの半分は、労働時間の上限なく労働者を働かせることができるわけです。
日本の労働時間に上限がない、というのはこのためです。
特別条項をも超える可能性
とはいえ、36協定は監督署に提出する書類ですので、特別条項の労働時間をあまりに長時間にすると、監督署に目をつけられてしまいます。
なので、一般に月80時間の残業が過労死ラインと呼ばれていることもあり、このあたりを上限とすることが多いのですが、普段から長時間労働が常態化していると、特別条項で定めた時間も超えてしまいます。
特別条項で定めた時間を超えて労働させるのは立派な労働基準法違反、過去にABCマートやドンキホーテなどの大手企業が長時間労働で書類送検されているのは、この36協定の特別条項で定めた時間を超えて労働させたのが原因でした。
逆に言うと、36協定の特別条項に定めた時間を現実に即した時間だったら送検されなかった可能性があるわけです。日本の労動時間規制の問題点が透けて見えますね。
いずれにしろ、いくら36協定を結んでいたとしても、長時間労働をさせればさせるほど、36協定で定めた時間を超える可能性が高まり、送検等のリスクが高まるわけです。
そもそも、普段から100時間を超えるような残業をしている会社が、1年のうち半分の時間を月45時間で抑えられるわけもないですし。
② 労災による損害賠償
労災が起こると、医療費や生活費は労災保険から出ますが、慰謝料等は出ません。
労災は無過失責任主義であり、事故の原因が会社にあろうとなかろうと、事故の責任は会社に発生します。
つまり、慰謝料や損害賠償は会社が負担することになりますが、被災した労働者の方でそこまでする場合は稀なので、通常はあまり問題になりません。
しかし、事故によって障害を負ったり、死亡してしまった場合は別で、何百万から何千万、中には1億を超える損害賠償の支払いが、裁判所から命じられる場合があります。
労災保険では、過労死については以前から、メンタルヘルスについては数年前より「長時間労働そのもの」を労災事故とみなすようになりましたから、長時間労働を理由に過労死やメンタルヘルスを発症して労災認定されれば、会社は多額の損害賠償の支払いをしないといけない可能性があります。
ちなみに、以前の電通事件では和解金として、電通は遺族に1億6800万円を支払っています。
電通だから払えるものの、中小企業では致命的な額ではないでしょうか。
③ 「恨み」から労使トラブルへ
最後は「恨み」です。
この「恨み」は、会社が法律を破ったり、社員を大事にしないことで「恨まれる」場合と、すでに何らかの理由で「恨まれている」場合の両方を含みます。
結局、労使間でトラブルになる場合、というのは、労働者側に不満だったり恨みがあったりすることが多いわけです。
逆に言えば、社員が満足している会社では、多少の法違反は社員の方が見逃すこともある。
しかし、労働者側に会社に対して不満があるなかで、長時間労働などの過酷な労働環境を与えると、労働者の中には監督署に行ったり、ユニオンに行ったりする格好の口実を与えることになります。
長時間労働で会社に不満を抱かせると将来的な労使トラブルになる可能性を高めるし、すでに恨みを抱えている人間に対しては導火線に火をつける行為となるわけです。
何度も述べているとおり、長時間労働自体は法違反ではないにしても、会社内に第三者が介入すれば、それ以外の痛くもない腹を探られる可能性は否定できません。
以上です。
結局、長時間労働というのは肥満と一緒で会社の万病の素なので、他にも挙げたらキリがないとは思いますが、このへんで。
常態化していると、なかなか減らすのは難しいのはわたしも重々承知ですが、減らす努力をしないと絶対減っていかないので、何が、長時間労働の原因となっているのか、どうすればそれを解消できるのかを地道にトライ・アンド・エラーしていくしかないでしょう。
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