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書評

【書評】賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ。:村上龍、を読んで

2016/04/20

わたしは村上龍の熱心なファンだった時期があって、今も家には60冊以上の彼の本があります。しかも紙の本のままで。

なぜ、紙の本であることを強調したかというと、今年はわたしにとっての電子書籍元年で、今後も読む可能性の有りそうなめぼしい本の殆どは電子化してしまっているから。

ようするに、熱心なファンであったにも関わらず、もうわたしは村上龍の本を読むことはないな、と思っていたわけです。が、やはり新刊が本屋で平積みしてあると気になり、パラパラと立ち読みしたりはして、でも買わない、みたいなのがここ数年でした。

過去のエッセイで、村上龍本人が繰り返し述べているように、彼の書籍小説・エッセイとを問わず暇を潰すためのエンターテイメントではありません。読者が自分自身のことを真剣に考え直さざるを得なくなるような刺激とエネルギーに満ちています。それは小説のモチーフが暴力的かどうかを問いません。

彼の本を読まなくなったのは、社労士になるための受験勉強を始めたころからです。

そのころの自分の置かれていた立場、社労士であった叔父の余命が幾許も無く、事務所の先行きも真っ暗な中、とにかく自分が社労士の資格を取らなければいけない、という状況で受験勉強を始めた時でした。当たり前ですが、そういった状況で自分の心を揺り動かすような外部的なエネルギーはまったく不要です。勉強で疲れてさらに本を読んで疲れるような真似はしたくありませんからね。

それから3年ほどたち、事務所の立ち上げからも1年がたった今になって彼の本を読んでもいいかな、と思えたのはその頃に比べれば多少なりとも心に余裕が有ることの証拠かもしれません。

なんだか前置きが長くなってしまいましたが、表題の「賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ。」は村上龍のエッセイシリーズ「すべての男は消耗品である」の新刊です。

内容は残念というかなんというか「すべての男は消耗品である」のシリーズを愛読している方には、どこかで一度聞いたことのあるような話ばかり。目新しい話はほとんどありません。

それを村上龍の老いというのは違うでしょう。(老いを感じさせるエピソードはエッセイの中でもいくらでも出てきますが)

単にここ15年以上のあいだ、日本の社会情勢の根本的な部分がほとんど変わらず、日本の社会問題のほとんど解決されていない、それを鏡のように村上龍のエッセイは映し出しているに過ぎないのだと思います。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。